第25話 おしおきするなら本気で
リューちゃんたちに囲まれているのは、冒険者風の男が4人、少々派手な男が1人、耳と尻尾をはぎ取られココ(狐)の口に咥えられた女が1人だ。
「お主たち、妾の名を騙って好き放題していたようじゃが……、覚悟あってのことじゃろうな」
ココの口にくわえられっぱなしの女がじたばたと暴れ出した。
「離してっ、いやっ、おねがいっ、食べないでっ!」
「食べるわけなかろう。妾はそのような悪食ではないわ。まったく……」
「反省の意思が感じられないっス。今度はリューちゃんにお仕置きしてもらうっス!」
女を受け取ったリューちゃんは、空中でとぐろを巻いてその身の中に女を取り込むと、内部で女をぐるんぐるん回転させだした。
「人間洗濯機っス! これでちょっとは綺麗になるっス!」
ちゃんと空気は供給してるので安全っス、と言いながら、女をぐるぐるぐるぐる。
悲鳴を上げているようだが、水に阻まれて薄っすらとしか聞こえてこない。存分に反省してほしい。
「そこの男たちはどうじゃ。反省しておるのか」
これにいち早く反応したのは、少し派手な恰好をした男だった。
「もちろん反省してる! 俺はそこの女に騙されたんだ! 本物の玉藻の前だからインタビューしてくれって! だから俺は悪くねぇ!」
「ほう、騙されたとな。キムンカムイよ。あの映像を見せてくれ」
「はい。生放送を見ている皆さんにも、小窓で差し込んでおきます」
彩華ちゃんの指示で、ドローンの1機が空中へ映像を投影する。彩華ちゃん特製の〈錬金術〉ドローンはこういうこともできるのだ。
映像では、森の中で談笑する男たちプラス偽物女の姿が映っていた。
『ほんと楽な仕事だよな』
『それな。ちょっと生放送するだけでがっぽりだぜ。チャンネル登録者もすげー増えてるし。玉藻の前のおかげってやつ?』
『ほんと「妾は玉藻の前じゃ」ってやるだけで儲かるんだから笑いが止まらないわ。あははは!』
『耳と尻尾も本物そっくりだぜ。どうやって動いてるんだ?』
『ああこれ? なんか○○社からの借り物。ちょっとあんたも付けてみなさいよ。きゃははは、似合ってない、うけるw』
『妾が玉藻の前じゃ。うふーん』
『きもっw』
「もう良いぞ、キムンカムイよ」
「はい。見てもらった通り、女が偽物であると認識していましたね」
「どう言い訳するのじゃ? 女に騙された? 違う、お主たちは知っておったな」
「ぐっ、うぐぐっ……」
「ほれ、さっさと申して見よ。全世界が見ておるぞ。お主の言い訳が通じるか試してみよ」
「うるさい、うるさいっ! 俺は悪くねぇんだ! お前が悪いんだ! 死ねぇ! 〈ダークアロー〉!」
あーあ。少し追い詰めただけでこちらに向けて〈ダークアロー〉撃っちゃった。素直にごめんなさいすれば良かったのにね。
「ファイアモード、シュート」
あんなよわよわな〈ダークアロー〉の1発や2発くらっても、まったくダメージにはならないんだけど、彩華ちゃんがしっかりと迎撃してくれた。
〈回転式魔力クロスボウ〉による矢(ビーム)だ。属性は火。真っ赤できれい。
直径20センチほどの矢(ビーム)は、〈ダークアロー〉を軽々と消し飛ばし、そのまま直進して派手な男のすぐ横に着弾した。
幸いなことに、爆発!とかにはならず、有り余る熱量によって、地面が少々ぐつぐつと煮えたぎる溶岩になっただけで済んだ。だから属性を火にしたんだね。撃った後のことも考えれて偉いね。
「なっ、なっ……」
一方、矢(ビーム)を撃ち込まれた派手な男は、その威力におののき、粗相までしている始末。
「なんじゃ。これくらいで呆けておるのか? 妾たちを容易く相手取れるとでも思うたか。『マヨヒガ』は、そのような甘い存在では、ないぞ」
「ひ、ひぃっ!」
「ふっ。真神よ、片付けてくれんか」
「了解っス! ばっちいっスからね!」
リューちゃんの中に取り込むのは嫌だったのか、別に水を操り、少し脇へ移動させた。
「お主ら冒険者はどうする? 素直に認めるか、それとも、妾たちに立ち向かうか。どちらでも良いぞ?」
冒険者たちの顔がすっごい真っ青だ。ようやく彼我の実力差というものを理解したみたいで良かった良かった。
「お、俺、いや、私たちが悪かったです」
「ほう。素直に認めるか。何が悪かったのじゃ、言うてみよ」
「わた、私たちは、玉藻の前様の、その、尻尾をまねた毛皮を使って。指示されて、ダンジョンで、玉藻の前様がいるように、見せかけて、ました」
「偽物だと認めるわけじゃな」
「は、はい」
よし、生配信の目標を達成できたぞ! これで私たちのミステリアスさは保たれた。あとは偽物の女性に謝ってもらえば終わりだね。
「ファイアモード、シュート」
「うわあぁっ!!」
「まだ誰からの依頼か言っていません。しっかりと自白してください」
彩華ちゃん!? まだやり足りなかった? あ、そう、しょうがないね。冒険者諸君、キリキリ吐きたまえ。
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