第24話 配信するのは初めてで
「狐よ。それくらいで良かろう」
生配信は、彩華ちゃんが乗っ取った。『突撃なんとか』っていうチャンネルに行こうとする人たちは、皆『マヨヒガ』チャンネルへ誘導されている。
そして、偽物の耳と尻尾を吹っ飛ばしてから、満を持して私たちの登場だ!
もちろん空中からの登場です。その方がミステリアスだからね。
「もっとやっても良かったっスよ」
愛里ちゃんは龍のリューちゃんに乗って飛んでいる。
「配信はすべてこちらの手の中です」
彩華ちゃんは白熊のベアトリクスの背中に乗りながら、タブレットをパチパチいじっている。
「さて、妾の名を騙る偽物よ。覚悟はできておろうな」
2人に挟まれた私は、狐を放っているため1人だけ乗り物もなく浮いている。もちろん〈呪符〉のおかげだ。さすが呪符、便利だ。
――本物の玉藻の前様だー!
――『マヨヒガ』ってお狐様のチャンネルだったの?
――すごい!
――3人もいる!1人増えてる!
――熊が飛んでるぞ!
――真神様ー!
「あっ、玉藻さん! 生放送にコメントが付いてるっスよ! どうも皆さんこんにちは、我ら『マヨヒガ』っス!」
「コメントとな? どうやって見るのじゃ?」
気になる気になる。ダンジョン配信の生放送は、見るのもやるのも初めてだ。いつも見ている『火剣のミミミ』チャンネルの動画は、アーカイブ動画だからね。
コメントがリアルタイムに付いて、それに配信者が反応するのが楽しいらしい。
「玉藻さん、これをどうぞ」
「おお、すまぬなキムンカムイよ。どれ……、おおっ、すごい数のコメントじゃ」
――玉藻様ー!
――『マヨヒガ』!?
――本物?
――3人目!
――こっち見てー!
「うむ。妾が本物じゃぞ」
「玉藻さん、コメントに話しかけてもダメっスよ。カメラに話しかけないと」
――玉藻様かわいい!
――機械が苦手なのは解釈一致!
――真神様ナイス!
――玉藻の前様って天然なんだねw
て、天然!? いや違いますよ。ちょっとコメントの数に驚いて失敗してしまっただけ。玉藻の前は天然ではなくミステリアスです!
「玉藻さん、カメラはそこです」
「もちろん分かっておるぞ、うむ。妾が本物の玉藻の前じゃ。この尻尾を見よ。偽物とは毛艶が全く違うじゃろ」
――もふもふ
――もふもふしたい!
――俺は偽物って分かってました!
――当然だよなぁ!
「うむ。分かれば良いのじゃ」
ドローンカメラに向かって再度本物宣言をし、なんとかごまかせたようだ。ふぅ、良かった。
「野狐(やこ)の皆――あっ、この配信では、視聴者のことを野狐って呼ぶっス。で、こっちの人がキムンカムイちゃんっス」
「初めまして、ボクの名前はキムンカムイです。よろしくお願いします」
私が安心している間に、彩華ちゃんの自己紹介が始まっていた。ロールプレイするのは初めてだから、しっかり認知してもらわないとね。
「キムンカムイちゃん、あのポーズをお願いするっス!」
「本当にやらないとダメですか?」
「絶対人気になるっス! バズるっス!」
「わ、わかりました。……が、がおー!」
――か、かわいいー!
――ボクっ娘きたー!
――えー何それ何それ!何そのポーズ!
――ぐふぅっ
――かわよ
――めっちゃ耳ピクピクしてるw
――恥ずかしがってて可愛いー
「ナイス、キムンカムイちゃん! これで登録者もがっぽがっぽっス!」
――真神様がめついw
――ノリノリじゃんw
――真神様もかわいいよー!
――チャンネル運営してるの真神様っぽいよな
――真神様最高っス!一生ついていきますっス!
愛里ちゃんが彩華ちゃんのレッサーパンダポーズをだしにして、チャンネル登録者を稼ごうとしている。この可愛さなら、爆増間違いなしだ。
「うむ。キムンカムイは優秀で可愛いからの。お主たちも「野狐っス!」野狐? 視聴者をそう呼ぶのが決まり? わかったわかった、真神のいう通りにしよう。あー、野狐たちもチャンネル登録するのじゃ」
――野狐ごり押しw
――チャンネル登録しました!
――これは断れないわ
――一瞬で登録者増えてて笑うわw
――玉藻の前様は配信とか見ないのかな?
「配信か? 妾も配信くらい見ておるぞ。ほれ、妾が助けた女子がおったじゃろ。あの女子の動画は良く見ておる」
――助けたって、ミミミちゃんか?
――まじかよ、玉藻の前様ってミミミちゃんの視聴者だったんか
――『火剣のミミミ』ってチャンネルか
――真神様とかキムンカムイちゃんも配信見てるのかな?
――それ気になるわ
「あたいっスか? あたいは猫動画しか見てないっス!」
「ボクはお仕事があるからあんまり見てないですね」
――狼なのにw猫動画wせめて犬動画見てww
――猫動画いいよねー癒される
――子猫の動画とか無限に見れる
――キムンカムイちゃんはお仕事してるんだーえらいねー
「うむ。この配信もキムンカムイが整えてくれたのじゃ。とても優秀じゃな。なでなでしてやろう」
「……ぅぅ」
――キマシタワー!
――これは……、尊いっ!!!!
――アッ……
――私もなでなでしたい!
「玉藻さんもキムンカムイちゃんも、そろそろこっちの対処をするっスよ」
愛里ちゃんが指さした先には、リューちゃんたちによって包囲された偽物たち。
「ああ、そんなやつらもおったな」
――そういやいたな
――玉藻の前様に夢中で忘れてたw
――コイツら結局なんなんだ?
――俺はお狐様だけ見ていたいんだが
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます