第16話 女社長はケモミミ美少女で

「ボクの名前は竹内彩華(たけうちあやか)。熊の獣人です。よろしくお願いします」


「あっ、どうも。私は狐の獣人です。よろしくお願いします」


「えっ、あ、犬、の獣人です。よろしくお願いします?」


 なーんだ。獣人仲間だったかー。どうやって特定したかの疑問はあるけど、ここまでして私たちを呼び出した理由は分かった。


 彩華ちゃんの年齢は、私と同じくらいに見える。少なくとも身長は私よりもちょっと低い。


 ただ、お胸様がね。羽織っている白衣をぐいーっと横へ押しのけるお胸様がね。すごいよね。


 そして、彩華ちゃんに断って、再度鑑定した〈ステータス〉がこちら。


――――――――――――――――――――

名前:竹内彩華(たけうち あやか)

レベル:7

HP:150/150

MP:170/170

所有スキル:〈盾術1〉、〈属性魔法【地】3〉、〈身体強化2〉、〈気配察知2〉

転生特典スキル:〈錬金術〉、〈魔力操作〉、〈器用〉、〈頑健〉、〈健康〉

状態異常:なし

ダンジョン踏破証:Fランク、Eランク

――――――――――――――――――――


 獣人であることや、玉藻の前(偽)に関係していないことも鑑定で確認させてもらった。


 最初に鑑定が弾かれたのは、彩華ちゃんが持っていた魔法防御の〈マジックアイテム〉の効果だった。魔石を材料にした使い捨てで、一度だけ効果を発揮する。


「今日お呼びしたのは、お互いの情報共有のためです。確認なんですが、前田さんと山本さんは、今話題の玉藻の前と真神ですよね?」


 おー。そこまで探り当てているのか。


「どうして分かったの?」


「Dギアのサーバーをハッキングしたんです。玉藻の前が現れた際、誰がダンジョンに入っていたのかをピックアップし、行動範囲と照合。決め手は山本さんとの同棲です」


「Dギアってハッキングできたんだ」


 さらっと言っているけど、やばいことだ。Dギアは世界冒険者協会が製造方法を独占している。特許なども表に出てきていない。


 信頼性が冒険者の生命に直結することから、ハッキングは不可能と言われている。


「電子的には強固ですけど、魔力的には脆弱でしたので、その隙を突きました」


「へー。彩華ちゃんってすごいね」


 表情は変わらないが、彩華ちゃんの耳がすっごいピコピコ動いている。嬉しいのかな?


「さきほども言いましたが、情報共有を望んでいます。どこから話しましょうか……」


 そう言って少し悩んだ彩華ちゃんは、結局最初から話すことにしたみたい。


 彩華ちゃんも私たちと同じように転生して、熊の獣人になった。その時に女神様からスキルをもらっている。


「転生先の世界の情報を聞いていたので、〈錬金術〉スキルをもらうことにしました」


「「!?」」


 え、そんな、転生先の情報を聞くとかありだったの? 普通に教えてくれた? あ、そうなんだ。玉藻の前のキャラクリに夢中で、そういうとこにまで頭が回っていなかった。


〈錬金術〉スキルは、ポーションや〈マジックアイテム〉を作製できるらしく、ネクター社で販売しているものは、全て彩華ちゃんが作製したものだそうだ。


 その他の転生特典スキルは、〈錬金術〉を補佐するものだったり、健康のためのスキルをとったとのこと。


「ボクは生前、病気で寝たきりでした。だから戦闘職より生産職の方が良いかと思い、スキルを取ったんです」


「こうやって会社も作ってるもんね。すごいね」


「ありがとうございます」


 高速耳ピコピコだ! 顔の表情が変わらない分、耳の表情が豊かで可愛いね。


「お2人にお聞きしたいんですが、耳と尻尾は普段どうやって隠しているんですか?」


「えいやって隠してるよ」


「えいや?」


「あー、竹内さん。明さんはちょっと独特なんです。私が説明しますね」


「ありがとうございます、山本さん。ボクのことは彩華と呼び捨てでいいですよ。前世は14歳で、多分この中で一番年下でしょうから」


「え! 私より年下だったの? こんなにしっかりしてるのに……。私は今も昔も16歳だよ。これからは彩華ちゃんって呼ぶね。私のことも愛里って呼んでね」


「それではボクも愛里ちゃんって呼ばせてもらいます」


 前世と現世で年齢があっちこっちで混乱しそうだ。まとめると、


 愛里ちゃん 16歳 → 16歳

 彩華ちゃん 14歳 → 18歳

 私    ひみつ → 16歳


 こんな感じ。


 それにしても彩華ちゃんは若くして転生しちゃったんだね。これはまた妹が増えちゃったな。姉としてしっかりしないと。


 うんうん、と私が誓いを新たにしている間に、愛里ちゃんは彩香ちゃんに耳・尻尾隠蔽の方法を一通り教え終えていた。実演もセットだ。


 そして彩華ちゃんの実践だ。あー、おしい。違う違う、もうちょっとギュッと、そこでギュギュッと。良い感じ良い感じ、そうそうシュイーンね。


「んっ! できました!」


「できたね、彩華ちゃん!」


 両手を上げて喜んでいる彩華ちゃん。でもどうしてだろう。頭の上で熊耳が高速ピコピコしている幻が見えるよ。


 ……はっ! ひらめいた!


「彩華ちゃん彩華ちゃん。もう一度耳を出して、ばんざーいってしてもらってもいい?」


「耳を出して万歳ですか? 別にかまいませんが……。はい、どうでしょう?」


 やっぱり! レッサーパンダだこれー!

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