第5話 罠を探すのはBランクダンジョンで
愛里ちゃんと添い寝した翌日。日曜日も愛里ちゃんの家に泊まった。
そして何故か、金土日は泊まることを約束させられ、ついでに土曜日は添い寝の日ということも決まった。
「計画通り」と愛里ちゃんが呟いていたが、私も何が何でも拒否したいわけでもない。私専用の部屋も用意されて、半ば同棲のような感じだ。
そして週が明けて月曜日、私たちは心機一転、Bランクダンジョン、関東06〈人形ダンジョン〉へと来ている。
関東局エリアに2つあるBランクダンジョンの内の1つで、ドールやパペットといった人形系モンスターが出現する。
ダンジョンタイプは室内型で、洋館の内部といった雰囲気。廊下と部屋で構成され、扉も多い。また、他の一般的なBランクダンジョンに比べると罠の数が多く、踏破難易度が高いことでも有名だ。
「ここは罠が多いから、いっぱい練習できるね」
「はい! 早くスキルがゲットできるといいですね!」
わざわざここへ来た目的は、罠を発見するスキルや解除するスキルを得るためだ。
想像してみて欲しい。ミステリアスな玉藻の前が罠にかかる場面を……。
くっ、ダメだ! ミステリアスさが台無しだ! これじゃあ女騎士だよ!
故に罠への対策は必須。冒険者として活動する上でも全く無駄にならない。むしろメリットしかない。
「うわっ、〈気配察知〉に冒険者がいっぱい引っかかってます!」
「ん。人気みたい」
踏破難易度の高い〈人形ダンジョン〉だが、冒険者からの人気はかなりある。
まず部屋が扉で区切られているため、不意打ちを受けづらい。絶対ではないが、安心してモンスターと戦える。また、モンスターの出現する「沸き部屋」が決まっており、沸き部屋以外では安全に休憩することができる。
そしてこの「沸き部屋」の中で、良い感じの間隔でモンスターが出現する「稼げる沸き部屋」を確保できれば、たまに現れるモンスターを狩るだけで、非常に簡単に金策ができる。
「稼げる沸き部屋」の位置は、日や時間によって異なるため、常に同じ効率とはいかないが、Bランクダンジョンに入れる冒険者にとって、美味しいダンジョンとなっているのだ。
「今日はまず様子見で歩き回ってみよう」
「そうですね。モンスターとも戦ってみたいです」
このダンジョンは、あみだくじ型、とでも言うべき形をしている。たまに突き当りでどこにも繋がらない廊下はあれど、ほとんどがどこかに繋がっている。
したがって、階層をまたぐ階段の位置さえ分かっていれば、時間はかかるものの迷わずに次の階層へと移動できる。
「1階層のモンスターは、アニマルドール。いろいろな種類の動物の姿をしているから、注意して」
「はい! あ、あっちの部屋にモンスターがいます!」
アニマルドールは、木製っぽい質感の動物型人形に、申し訳程度の毛皮が付いたモンスターだ。犬型なら走るのが速く、鳥型なら空を飛ぶ。スケルトンと似たような感じだ。
〈気配察知〉に反応があった部屋へと近づく。廊下から部屋に入るには扉を開ける必要がある。まだ罠を見つけるスキルを得ていないため、2人で慎重に調べることにした。
「うーん……。何もなさそう?」
「そうですね。何もなさそうです」
別に罠を発見するスキルに頼らなくても、罠を見つける方法はある。愛里ちゃんなら〈水魔法〉で生み出した水で隅々まで調べることができるし、私も……、〈狐火魔法〉ならできると思う。
しかし、それをやってしまうと、いつまでたっても罠を発見するスキルが手に入らない。地道な訓練が必要なのだ。
「じゃあ開けてみるね。念のため、呪符ロープで開けよう」
「わぁ、呪符ってそういう使い方もできるんですね」
ドアノブに張り付けた呪符で慎重に扉を開けた。すんなりと扉は開き、中にはアニマルドールが3匹座り込んでいる。見た目は、3匹とも犬だ。
「犬型3匹。愛里ちゃんがやる?」
「やります! エンチャント! せいっ!」
愛里ちゃんが手に持つのは、先端にトゲトゲが生えた球が付いたこん棒、モーニングスターだ。以前まではもっと原始的な、持ち手以外が太くなったこん棒を装備していたんだけど、スタンピード対応の報酬金で新しい武器を購入した。
ある程度の慣熟訓練も終わらせてあり、〈こん棒術〉スキルを上げるためにもどんどん使っていく予定だ。
ちなみに私の槍も新しくなっている。目を付けていたモンスター素材を使った槍だ。しなりも良く、丈夫で使いやすい。
「終わりです! ドロップは魔石と、フェイクファーも!」
アニマルドールはの確率ドロップには、フェイクファーというもふもふな素材アイテムがある。手触りがとてもよく、1平方メートルほどの大きさがあるので、ダンジョンで使う敷物として確保している人も多いとか。
モンスターの時には申し訳程度の毛皮だったのに、こんなに大きな1枚皮になるなんて……。不思議だ。
「すごいもふもふ」
私の尻尾ほどじゃないが、かなりのもふもふだ。愛里ちゃんの頼みもあって、これは売らずに確保しておくことに。私用にもう1枚ほしい。
その後もアニマルドールを狩り続け、無事フェイクファーをゲットした。
しかし、罠を見つけるスキルは手に入らなかった。そもそも、罠と遭遇しているのかもわからないので、罠を探して調べている時間の虚無感がすごい。
「今まではすぐスキルを入手できてましたけど、普通はこんなに大変なんですね」
「そうかも。地道に頑張ろう」
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