第2話 魔法を使うなら気合で?
食休みも終わって、愛里ちゃんを先生にして魔法の勉強が始まった。ちゃんと魔法を勉強するためのテキストは持っている。が、新品未開封だ。
「私たちって結構簡単にスキルを覚えられるじゃないですか。だからまずは〈魔力感知〉スキルを覚えた方がいいと思うんです」
「ふむふむ」
「〈魔力感知〉があれば、自分の魔力がどう動いているかわかりやすいですよ」
「なるほどの」
というわけで、玉藻の前の姿に変身しました。
〈狐火魔法〉の制御が〈火魔法〉のそれより上であることから、玉藻の前の姿に、なんらかの魔法的バフがあるのではと考えたからだ。
「今、水と一緒に魔力を動かしてますよー」
「ふぅむ」
愛里ちゃんの両手の上でふよふよと浮かぶ水球を見ながら、魔力を感知できないか目を凝らす。
「目で見ようとしてもダメですよ。全身で感じるんです」
これはあれか、考えるな感じろ、ってやつですか。ならば逆に目を閉じたらどうだろう。ついでに耳もペタンと倒し聴覚も封じる。
「むむっ、むぅ……」
何かこう、気配に近いものを感じる……、気がする。ふわふわして、捉えどころがない雲みたいなものだ。
こういうときはあれだ。この雲みたいなもやもやを……、ギュギュッと!
「ほいっ。おお、これが魔力か」
「あ、わかりましたか?」
〈ステータス〉を確認してみると、しっかりと〈魔力感知1〉が生えていた。やっぱギュギュッとするのが大事だったんだな。
愛里ちゃんの浮かべる水球を見れば、中にぐるぐると魔力が渦巻いているのがわかる。
「今はぐるぐる動かしてますけど、ぴったり止めて静かにさせることもできます。私の髪とか目はそんな感じです」
「確かに、髪と目は水魔法で色を変えておるはずじゃが、魔力の乱れは感じ取れんのう」
愛里ちゃんの髪と目は、耳や尻尾と同じ綺麗な水色のグラデーションなんだけど、普段は水魔法でコーティングして黒色にしてある。その表面は、水球のような魔力の動きは感じられない。
「魔法を使う時は、魔力が外へ外へ行こうとしますからね。それを抑えて制御することで、同じ魔法でも威力の調整などができるようになります」
試しに狐火で鉄扇にエンチャントしてみると、わずかに魔力が漏れているのがわかった。
「確かに漏れておる」
「私が感じた限りだと、それくらいの人はほとんどいませんでした。皆はもっと漏れ漏れです」
「〈火魔法〉でも試してみるか。変身!」
元の姿に戻って火魔法のエンチャントをしてみると、これは確かにブワーっとなってるなと納得できる派手さだった。狐火の時がろうそくだとすると、火魔法はキャンプファイヤーくらい。
「こんなのがダンジョン外にいたら、感知できる人は何事かと思っちゃいますよね」
「うん」
これには頷くことしかできない。
「それで、制御する具体的な方法ですけど、魔力の動きを意識して、術式に流す魔力を制限してやればいいんです」
転生特典のスキルでも、一般のスキルと術式は同じらしい。テキストのエンチャントのページを開いて理恵ちゃんが説明してくれている。
けど、私って術式を意識したことがない。魔法はすべて想像だけで使っている。
「うーん、そうでしたね。明さんはそうなんでした……」
要は魔力が漏れないようにすればいいわけだ。ということは、ギュギュッと……、いや、もう1段階上のギュギュワンっとすればどうだろうか。
イメージとしては耳と尻尾を消す感じ。あれだって愛里ちゃんに言わせれば獣人専用の魔法みたいなものらしいし。
「それは、たしかに。一理ありますね。明さんの耳・尻尾隠蔽は魔力の漏れもなく、魔力感知でもわかりません」
「じゃあ、やってみるね」
エンチャントをするときに、ギュギュワンっと!
「ほい。お?」
「わっ。できてますね! 少しだけ漏れちゃってますけど、すごい変化です!」
「ん、だいたい分かった。体の外からギュギュワンっとするんじゃなくて、内側をギュギュワンってしないとダメ。威力の調整はシュシュっとやれば良さそう」
「?」
これは盲点だった。漏れようとする魔力を外側から抑えるのではなく、内側から抑える必要があった。そうすることで、威力の調整も可能になる。
なるほどこういうことだったのか。考えてみれば魔力は体の内から出る力だから、外からなんやかんやしてもうまくいかないんだろう。
「愛里ちゃんは教えるのが上手」
「それはちょっと疑問ですけど、でも、うまくいって良かったです!」
「ん。これで暑い日に外へ出ても安心」
「あ、そういう話でしたね」
魔力感知されても派手にならない魔法を覚えることができたので、あとは火魔法で熱を遮断できるようになれば、暑い日でも安心。
そこは転生スキルの便利なところで、だいたいのイメージさえあれば、望む魔法が使用できる。
「こんな感じかな」
「魔力の漏れは良い感じですね」
「ちょっとだけ外に行ってみる」
バッチリでした!
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