第16話 ロールプレイするなら一緒に

〈鑑定〉スキルで私の〈ステータス〉は愛理ちゃんに筒抜けになっていた。その代わり、と言っては何だけど、愛理ちゃんの〈ステータス〉を教えてもらった。というか、〈鑑定〉スキルによって、目の前に表示されている。こういうこともできるのね。


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名前:山本愛理(やまもと あいり)

レベル:9

HP:170/170

MP:210/210

所有スキル:〈こん棒術1〉、〈身体強化1〉、〈気配察知4〉、〈隠密4〉、〈魔力操作3〉

転生特典スキル:〈鑑定〉、〈アイテムボックス〉、〈人語理解〉、〈水魔法〉

状態異常:耳・尻尾隠蔽

ダンジョン踏破証:Fランク、Eランク

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 ふむふむ。近接戦闘はあんまりで、魔法主体って感じ。ひときわ高い〈気配察知〉と〈隠密〉が苦労を物語っているね。


「私も明さんに聞きたいことがあるんです」


「ん、なに?」


「今、話題になってる狐巫女って、明さんですか?」


「あ」


 あー、そっか。それが繋がっちゃうか。私の変身スキルって、〈ステータス〉にはしっかりと、〈変身(玉藻の前)〉って出ちゃってるんだよね。


 玉藻の前がどんな存在かを知っていれば、容易に繋がっちゃうか。


「そうだよ。〈変身〉スキルで変身してたの」


「それって、見せてもらえますか? 生の狐巫女をすっごく見てみたいです!」


「むふ。愛理ちゃんもお狐様に興味しんしんなんだね」


 いいでしょう。私の玉藻の前で、お狐様の魅力をたっぷりとわからせてあげます。


「変身! ふふふ、お主が妾に会いたいと申した娘かえ?」


「すごい! 見た目も服も、一瞬で変わった!」


「元気な娘じゃのう」


「口調もさっきまでと全然違いますね!」


「当然じゃ。妾は玉藻の前じゃからな」


「おおー!」


 むふふ。愛理ちゃんの目がきらっきらだ。まっすぐな称賛が気持ち良い。


「どれ、特別に鉄扇に呪符も出してやろう。ほれ」


「すごい! 動画で見たやつだ! かっこいい!」


 右手に鉄扇、左手に呪符を出してポーズだ。そしてチラッと流し目。うーん、ミステリアス。


「どうじゃ。満足か?」


「はい! とっても!」


「それでは戻るでの。変身! ん、戻った」


「明さんは天才です! こうやって別の姿を用意すれば、耳も尻尾も転生の時に貰ったスキルを使うのも自由なんですね! ここまで考えてスキルを選んでいるなんてすごいです!」


「? 違うよ。ただ玉藻の前でミステリアスなロールプレイをしたかっただけ」


「え?」


 何か勘違いしているようだけど、私のスキル選びは徹頭徹尾ミステリアスな玉藻の前ロールプレイのためだ。そもそも、私も愛理ちゃんと同じく、転生先はテンプレ中世風異世界だと思っていたからね。


「そ、そうだったんですか。私も変装というわけではないんですけど、一応髪と目の色は変えてます」


「そうなの?」


「はい。本当の色は、耳や尻尾と同じ水色ですよ。こんな感じです」


 根元から黒色だった髪が、綺麗な水色へと変わっていく。目も水色の濃淡が綺麗だ。外で見かけたら、まず忘れないだろう。


「これは隠して正解。どうやってるの?」


「〈水魔法〉で薄くコーティングしてあるんです」


「それって変えられるのは色だけ? それとも形も変えられる?」


「形もできますね。〈水魔法〉って物質操作系の魔法なので、意外と応用が利くんですよ」


 ほほぅ。色と形を変えられると。これは、あれじゃな。


「提案なんだけど、愛理ちゃんも私と一緒にロールプレイしない?」


「ロールプレイって、明さんがやってる玉藻の前みたいなのですか?」


「ん、そう。〈水魔法〉で顔立ちを少し変えれば、愛理ちゃんだってバレないと思う。それに、別人を装えば、耳と尻尾を出してダンジョンに入れるよ? 隠したままって、結構むずむずするでしょ?」


「それは……、たしかに」


〈水魔法〉で変装することと、ロールプレイすることは、一切関係がないんだけど、なんとかこちらに引き込めないだろうか。2人目のケモミミってミステリアスさが高いと思う。


「顔立ちはそのままで、メイクを変えてもいいよね。名前もロールプレイ用に考えよう」


「メイク、名前……」


「何かいい名前はないかな? 犬の神様とか狼の神様とか、イメージしやすい名前がいいよね」


「真神(まかみ)とかどうでしょう。狼の神様です」


「真神、いいね。メイクはどうしようか」


「隈取りのようにアイメイクを少し強めにしておけば、普段の私とはイメージが変わるかな」


「ちょっとやってみようか。〈水魔法〉ってどんな風に使うのか気になるな」


「こんな感じで……、どうでしょう」


「うんうん、いいね。犬耳も出しておいてね。それじゃあ次は口調を考えよう。普段の愛理ちゃんと一緒だとおかしいからね」


「明さんみたいにガラッと変えるのは、難しいです。元気よく、語尾に『っス』を付けるとか」


「一人称もそれに合わせてもいいかもね。それじゃあ少し会話してみよっか。私が質問するね。こほん……、あなたは誰?」


「私、じゃなくて、あたいは真神っス」


「いいよいいよ、その調子。どうして耳が生えてるの?」


「これは元々っス。あたいは狼の神様っスから」


「真神さんはどうやって戦うの?」


「あたいは水魔法が得意っス。どんなモンスターもいちころっス!」


「いいね、すごい上手。完璧なロールプレイだったよ」


「そ、そうっスか? えへへ」


 よし、仲間ゲットだ。

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