第10話 ゴースト相手なら魔法攻撃力で
新しい装備に慣れるため、一日だけ〈墓ダンジョン〉に入って準備を整え、次に向かうのはいよいよCランクダンジョンだ。
有希ちゃんと悠ちゃんの双子は初挑戦。しおりちゃんは試しに入ったことがあり、その時は、モンスターを倒せはしたけどMP消費が重かったため、すぐに入るのを止めたという。
しおりちゃんは、〈マジックアイテム〉買う時以外は、計画的できちんとしているのだ。
「ここが、関東05〈亡霊ダンジョン〉ですか」
挑戦するのは、関東05ダンジョン、通称〈亡霊ダンジョン〉。〈墓ダンジョン〉に続いて、アンデッド系のダンジョンとなった。
このダンジョンは普段はとても不人気なので、『世界冒険者月間』の優先攻略ダンジョンに指定されている。
というのも、出現するモンスターのほとんどが物理攻撃無効なのだ。1階から出現する『ゴースト』というモンスターは、ふわふわと浮遊し、ただの剣で切り付けても効果がない。
そこで役立つのが、魔法攻撃、つまり『魔法攻撃力』だ。
『攻撃力』について少し説明しよう。
『攻撃力』とは、モンスターや人のHPへのダメージに影響を与える概念で、冒険者の攻撃力を表すために導入された。オタク的知識の攻撃力とそれほど差はないと思ってもらってかまわない。
この攻撃力には、『物理攻撃力』と『魔法攻撃力』の2種類がある。
『物理攻撃力』はそのまま物理的な破壊や衝撃をもたらす攻撃力で、『魔法攻撃力』は主に魔法などによる魔法的な攻撃力を指す。
どちらも厳密な数値として表されるものではなく、「AよりBの方が攻撃力が高い」とか、「Cは少し魔法攻撃力がある」のように相対的な指標に限られる。だって攻撃力の値とか見れないから。
この『攻撃力』を厳密な数値で表そうという試みもある。ただ、〈ステータス〉さえ自己申告で、ここでは説明しないが『防御力』や『防御姿勢』という概念も加わり、その進捗は極めて悪い。
話を『魔法攻撃力』に戻そう。
この魔法攻撃力を剣に付与する方法が2つある。
1つ目は、モンスター素材を利用した武器だ。ただし、高ランクのダンジョン産の素材でなければ、効果は微々たるもので、物理100に対して魔法1とかそんなもの。
2つ目は、魔法による〈エンチャント〉だ。〈属性魔法〉スキルのレベル4で使えるようになる呪文に〈エンチャント〉というものがある。これを武器に用いることで、武器にその属性魔法の『魔法攻撃力』を付与できるのだ。
しおりちゃんの〈属性魔法【闇】〉がレベル4になったことで、このエンチャントが使えるようになった。
そのため、普段は人気がないが優先攻略ダンジョンに指定されている〈亡霊ダンジョン〉へと来たわけだ。
そしてさらに――、
「ん、ファイアエンチャント」
私の槍に炎がまとわりついた。
「明さんも魔法が使えるなんて、言われた時はとても驚きましたよ」
「そうね。槍だけでもすごく強いのに」
「明さんすごいです!」
私の〈火魔法〉を少し解禁だ! スキルレベルはエンチャントが使えるレベル4ということにしてある。
冒険者登録してすぐの時に封印していたのは、槍と魔法の両方を使う初心者として悪目立ちしたくなかったから。Cランク冒険者になった今、どうしても隠したいものでもなし、これからは少しずつ使っていく予定だ。
Cランク冒険者なら、剣と魔法の両方を使っていてもそれほど違和感はない。なお、登録からの期間は考慮しないものとする。
「これはすごい臨時パーティーにあたったねぇ。あっ、私には〈エンチャント〉いらないから。自前でなんとかできるよ」
「はい。わかりました、理恵さん。皆、まずはエンチャント有の戦闘になれるために1階層でしばらく練習しましょう。私と明さんで皆にエンチャントをかけて近接戦闘を試します」
「ん、わかった」
「お願いね、しおりさん、明さん」
「がんばりましょう!」
「それでは出発です」
武器にエンチャントすると、火属性の場合は敵が燃えたり、闇属性の場合は敵がぐずぐずに崩れたり、なんらかの反応を示すことがある。それに驚いたりしないように、まずは練習だ。
「明さん……」
「ん。これは私も想定外だよ」
「これじゃあ練習にならないね」
「ぼ、僕はすごいと思います!」
「すごいのは確かです」
何が起きたかというと、私が有希ちゃんの剣にエンチャントをかけて、それで戦闘してみてもらったんだけど、剣がかすったゴーストが一瞬で燃え尽きたのだ。ほんのちょっとでもかすれば、一瞬だ。
それは戦闘とは呼べず、処理だった。
おそらくだが、私のエンチャントはこの世界で一般的な〈属性魔法【火】〉による〈ファイアエンチャント〉よりも、よほど強力なんだろう。なにせ、転生特典の〈火魔法〉スキルによるものなので。
詠唱もいらないので、そもそもエンチャントですらない可能性もある。魔法を使うイメージとしては、〈火魔法〉を武器に閉じ込める感じを想像した。これが原因か?
「ゴースト相手には過剰というほかないですね」
「そうだね」
「しばらくは封印しましょう。1階層ごとに解禁するか皆で相談します」
「ん、わかった」
ひとまず封印と相成りました。
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