第7話 買い物するならみんなで

「買い物に付き合ってほしい、ですか」


 ダンジョン攻略が終わった後、有希ちゃんから買い物のお誘いがあった。


「そうなの。臨時パーティーを組んでお金も溜まってきたし、悠と一緒に装備を更新しようかと思って」


「はい。皆さんの意見も聞きたいなと思ったんです。ダメ、でしょうか?」


「いえ、ダメじゃないですよ」


 上目遣いの悠ちゃんに、しおりちゃんは屈した。若干被せ気味で早口だった。


「それなら、ついでに私も買い物したい」


 私もそろそろ槍を新調したいと思っていたところなので渡りに船だ。


 冒険者試験の際に購入した初心者用の槍は、現代の一般的な技術で作られているので、粗悪品というわけではない。しかし、Cランクダンジョン以上に挑もうとすれば性能にやや不安がある。


 もっと性能の良いもの、〈マジックアイテム〉とまでは言わないが、モンスターから得られる素材アイテムを使った特製の槍があれば心強い。


 購入するかは価格を見てからになるだろうけど、今後の予定を立てるためにも、どんなものか一度見ておきたいのだ。


「それならちょうど良いですね。では、明日は皆でお買い物といたしましょう」




 翌日、理恵さんは冒険者協会に報告があり、残念ながら不参加だ。臨時パーティの4人でお買い物となった。


 向かう先は、いつもの『東京アドヴェンチャーセンター』。冒険者用品はそこらで買えるものではないので、オーダーメイド以外だとほぼ一択だ。


 集合場所の関東局前に到着した時には、すでに3人が待っていた。時間を確認すると予定時刻の10分前。


「待たせちゃったかな?」


「いえ、私たちも2分前に到着したところです」


 しおりちゃんはきっちりしているので、2分前といったら2分前なんだろう。あまり待たせることにならなくて良かった。


 ところで3人の服装なのだが、何か結構気合が入っている。というかオシャレだ。


 まず悠ちゃん。腰巻スカートにレギンスって、レディースなの? 自分からそれを選んだの? 経緯がすごく気になるよ。


 トップスもドレープたっぷりで、胸があるのかないのか曖昧な感じで男の娘なの? あ、悠ちゃんは男の娘だった。


 次に有希ちゃん。清楚っ。もうすっごい清楚っ。いつものクールな感じはどこに置いてきたの? でもすごい可愛い。白のブラウスが似合うね。


 あとロングスカートからチラ見えするストラップシューズが大変良い。足首に絡みつくストラップがちょっと妖艶に見えるのが不思議だぁ。チョーカーとかも付けてみない?


 最後にしおりちゃん。どうして男装してるの? それでいてお胸様の自己主張が激しいね? ジャケットがパッツンパッツンよ?


 それにそのイヤリングの数。いくつついてるのよ! でもかっこいい。壁にドンされたらちょっとやばいかもしれない。その時はきっと顎クイもセットだ。


 あ、私の服装ですか? いつもの、パーカーにショートパンツにサイハイソックスのセットです。最近温かくなってきたので薄手のものに変わってます。以上。


「みんなオシャレでかわいいね」


「明さんは普段と同じですね。何かこだわりがあるんですか?」


「ん。これしか持ってない。似合ってないかな?」


 こだわりというか、クローゼットにはこれしか入ってなかったのでそれを着ているだけだ。女神様が用意してくれた初期セットだね。女神様の好みなのかな?


 着るのも楽だし、動きやすいし、見た目も私に似合っていると思う。さすがに全然似合ってないなら、別の服を買うくらいする。


 そういうわけで、新しい服を買おうというモチベーションがわかず、そのまま着続けている。


「僕は似合ってると思うよ。でも他の服を着てもいいんじゃないかな?」


「そうね。スカートが苦手というわけでもないんでしょう?」


「苦手じゃないよ」


 玉藻の前はスカートだしね。よほどのミニスカートでなければ、抵抗なく着れると思う。さすがにパンチラはしたくない。玉藻の前でもそこは徹底していて、スカートの中は呪符でパーフェクトガードしてある。


 ミステリアスにパンチラは厳禁、これ鉄則ね。


「それでしたら、最初は明さんの普段着を探してはどうでしょう。もちろん、明さんが嫌でなければですかが」


 おー、すっごくお友達っぽい。それに皆オシャレなので、アドバイスに期待が持てるな。


「いいの?」


「もちろんよ。明さんを可愛く着飾ってみたいって思ってたのよね」


「ん?」


「有希ちゃんは可愛いのが好きだから。いつも僕に着せるんだよね……。自分には似合わないからって」


 あれ、ちょっと流れ変わったかな?


「少年の様な服も似合うと思います。短パンにサスペンダーとかどうでしょう」


「いいね、しおりちゃん。それじゃあ早速行こうか」


 有希ちゃんとしおりちゃんに両側から腕を捕らわれ若干足が浮いております。


「明さん、こうなったら諦めるしかないよ? でもセンスはいいから……」


 なるほど。悠ちゃんがすでに通った道でしたか。でも初めてのお友達だからこれも楽しみ。


――――――――――――――――――――

【あとがき】

前田明さんのイメージ図を近況ノートに掲載しました。

気になる方はぜひ見てみてください。

https://kakuyomu.jp/users/kanikurabu/news/16818093073846683081

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