第4話 臨時パーティー組むなら女の子と
『世界冒険者月間』のイベントにおいて組まれる臨時パーティーには、ある程度の要望が出せる。
例えば、「高難易度のダンジョンに行きたい」、「魔法主体がいい」、「蟲系モンスターは無理」などなど。すべて要望通りのパーティーが組まれるわけではないが、ある程度は考慮してくれる。
こうしてパーティーの目的意識がなんとなーく共有されているので、臨時パーティーを組んだとき問題になりにくい。あとは冒険者協会から派遣される冒険者が、調整役として働いてくれるということもある。
私が出した要望は、「CランクかDランクダンジョンに行きたい」、「できれば女の子パーティーがいい」の2点だ。
はい。言いたいことはわかる。でもこれにはちゃんと理由がある。
私の見た目を思い出してほしい。小さめの背丈でやせ型。それなのにお狐様パワーで力いっぱいだ。これで男性とパーティーを組んだら……、絶対面倒なことになる。元男として断言できる。
故に女の子パーティーだ。
それに、これは少し想像も入るのだが、冒険者協会としてもありがたい要望だと思う。
冒険者には、当然女の子もいる。そうした女の子を守る意味でも、強くて美少女(自分で言っちゃった)の私がパーティーに入ることにメリットがある。
あとお友達になるなら女の子が良い。
「初めまして、根岸しおり(ねぎし しおり)と申します。よろしくお願いいたします」
「私はこっちの悠と二卵性の双子の中内有希(なかうち ゆき)よ。よろしくね」
「な、中内悠(なかうち ゆう)です。よろしくお願いします。あと男です」
「こんにちは。前田明(まえだ あきら)といいます。よろしくお願いします」
「よーし、あいさつはすんだようね。あ、私は後藤理恵(ごとう りえ)。冒険者協会の依頼できてるよ。よろしく!」
臨時パーティーの顔合わせの日だ。
上から、眼鏡っ娘、クールっ娘、男の娘、私、姉御だ。クールっ娘と男の娘は二卵性の双子なので一緒のパーティーになったんだろう。女性4、男性1だが、見た目的には女性5なので希望通り女の子パーティーだ。やったー。
「最初だけはおせっかいを焼かせてもらうよ。こういう臨時パーティーを組んだ時は、まずパーティー内での自分の役割を明確にするんだ」
理恵さん(姉御)が臨時パーティーを組んだ時の注意点なんかを説明してくれた。現役冒険者からの生の情報というのは大変価値がある。
複雑な連携などは難しいから、役割を単純化し、やることとやらないことを明確にする。ポイントは、「できること」と「やること」は違うってこと。
できることを全部やるなら、極論私はソロでいい。でもパーティーを組むということは、役割を分担し、協力してダンジョンを攻略するということ。故に「やること」を明確にする。
いくらかの話し合いを経て、とりあえずの役割が決まった。
前衛の斥候に私、前衛のタンクに有希ちゃん(クールっ娘)、中衛の遊撃に理恵さん(姉御)、後衛アタッカーにしおりちゃん(眼鏡っ娘)、後衛ヒーラーに悠ちゃん(男の娘)だ。
私のメインの役割は斥候。モンスターがグループの時は、一時的に注意を引き付けて、いわゆる回避盾と呼ばれる役割もこなす。モンスターと出会った瞬間に槍で突き刺すのは役割には入っていない。
どちらかというと受けがメインの戦法で、これはパーティーでダンジョンに入る時には珍しくないとのこと。モンスターに走り寄って殲滅しまくる戦法しかしてこなかったので新鮮だ。
ちなみにパーティーリーダーはしおりちゃんに決まった。一番常識が無い自覚があったので私は辞退し、悠ちゃんも辞退し、前衛よりかは後衛がリーダーの方が良いだろうということでしおりちゃんに決まった。本人もやる気十分だ。
「それでは、どのダンジョンに入るか決めましょう」
「おっと、協会から優先攻略ダンジョンの資料があるから、一応見ておいてね。強制じゃないから、ここ以外のダンジョンでもかまわないよ」
「ありがとうございます、理恵さん。皆さん、苦手なモンスターはいますか?」
「ぬめぬめしているのはちょっと……」
悠ちゃんが控えめに主張した以外は、特に何も問題なさそう。私も多分大丈夫。ぬめぬめも蟲もいける。
「ぬめぬめは……、優先攻略になっているダンジョンにはいませんね。最初の攻略は皆さんが経験のあるダンジョンが良いのではないでしょうか」
「私たちは普段Dランクの〈墓ダンジョン〉に行ってるわね」
「私は主にソロで〈草ダンジョン〉です。明さんはどうですか?」
「私はCランクの〈巨人ダンジョン〉です。Dだと〈狼ダンジョン〉ですね」
「そっか。明ちゃんはCランク冒険者だったね。僕より若いのにすごいね」
「それほどでも。えへへ」
無事Cランク冒険者になれてはいる。けれど、「登録2か月なんて早すぎる!?」みたいに驚かれたりはしなかった。というのも、最短記録は登録後1週間だからだ。早すぎぃ!
だからこうして褒められるととても嬉しい。悠ちゃんは良い娘だねぇ。
「それなら、最初は〈墓ダンジョン〉でパーティー攻略の練習をしましょうか。私も明さんも普段はソロでパーティーには慣れていません。タンクの有希さんが慣れている〈墓ダンジョン〉が良いと考えました」
「いいと思うよ。私は賛成」
「僕も賛成です」
「私も〈墓ダンジョン〉で大丈夫です。パーティーは初ですが頑張ります」
「よーし、決まったようだね。それじゃあダンジョン攻略は3日後からだ。今日はケーキバイキングで親睦会といこうじゃないか。もちろんお姉さんのおごりだよ」
ありがとうございます、姉御! あ、ケーキバイキングにはお稲荷様もありますか?
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