第23話 戦うならオーガで
ミミミちゃんおすすめのCランクダンジョンは、関東33〈巨人ダンジョン〉だ。全35階層で、室内型の石製通路は関東13〈岩ダンジョン〉と雰囲気が似ている。〈岩ダンジョン〉をそのままスケールアップした感じ。
出現するモンスターは、オーク、オーガ、サイクロプスなどの巨躯の人型がメインで、基本的には1体で現れる。モンスターの大きさに合わせて、通路や小部屋は広く大きくなっている。
怪力だが鈍重なモンスター相手には、私やミミミちゃんのような素早さを活かした戦い方は相性が良い。
「当らなければどうということはない」
また1つ、言ってみたい台詞が言えた。
5階層までで出てくるモンスターは、オークと階層ボスのオーガだ。
オークは豚顔の巨人で、身長2メートルちょっと。素手以外にも武器を持っていることがあり、注意が必要となる。
レアドロップとして〈オークの睾丸〉なるものがドロップすることがあり、高値で取引される。何に使っているかは知りたくもない。絶対に直接触れたくないので、トングを用意しておいた。それでも心情的には回収したくない。けど高く売れるんだ。ミミミちゃんが言ってた。
オーガの方は、オークを超える巨人で、3メートルに届くかという身長を持つ。圧倒的なフィジカルを活かした素手での近接格闘を仕掛けてくるモンスターで、なかなかの強敵。
物理に特化している分、魔法にはとても弱い。ミミミちゃんは〈属性魔法【火】〉で燃やしていた。私の場合、〈火魔法〉を解禁すれば楽だろうけど、しない場合はガチの近接戦闘になりそう。というかなってる。
「えい」
――グアッ!
牽制の突きは容易に見切られて、返答の拳を引き戻す槍でいなす。ついでに拳を弾き、崩しを狙おうとするも、オーガの体幹はびくともせず、代わりに蹴りが飛んできた。
「ん、〈跳躍〉」
蹴りに乗って跳躍し、膝を浅く切りつけた。オーガの体には無数の傷ができているが、これで動きが鈍るようなモンスターではない。より一層気炎を上げ、宙に浮いた私に向かって拳を振るう。
――ゴアッ!
「えいっ」
相対するこちらも力を込めて槍を振るう。空中での衝突。圧倒的質量差は、しかし〈ステータス〉によって強引に両者を同じステージへと持っていき、硬質な音を響かせながら槍と拳は相を打つ。
――ガアアアアッ!
拳が弾かれ、その反動すらも利用したオーガのラッシュを、こちらも反動を利用し空中でさばききる。地に足が付いていない分は回転を利用し、速度で押す。
「えいっ、えいっ」
楽しい! 森を走っている時と同じくらい楽しい! バトルジャンキーというわけではないと思うけど、十全と自分の体を活かし、迫る脅威に対処する。そういう意味では、森を走るのと似ているのかも。
――グルアアッ!
崩れない私に焦れたオーガの乾坤一擲の拳を、柔らかく槍で受け、回転しつつ自分の位置をずらすことで回避した。ここが隙だ。
〈登攀〉でオーガの拳に取り付き、伸びきった腕の上を駆ける。やっぱり〈登攀〉は巨人戦用なんだ。などと考えながら、止めの一突きをオーガの眼窩に叩き込んだ。
「ふいー」
オーガ、いいね! 金策効率的には、〈オークの睾丸〉一点狙いのオーク狩りが良いらしいけど、私は断然オーガを推すね。
やっぱり、戦っていて気持ちのいい相手って重要だと思う。あと睾丸をマジックバッグに入れるのは心情的に嫌だ。
浅い階層では、階層ボスでしかオーガは出現しないが、奥に行けば普通に出現するらしい。これはさっさとそこまで行くべきかな。
Cランクダンジョンの様子見も兼ねていたので、今日は5階層の入口へ戻ってダンジョンは終了。
Cランク〈巨人ダンジョン〉2日目。
今日はできるだけ深い階層を目指す。目標は15階層だ。16階層からは、道中出現するモンスターにオーガが混じり始める。
焦りすぎても良くないので、今日は15階層で止めておき、3日目からオーガと戦う。そんな予定。
ただし階層ボスのオーガが居た場合はその限りではない。10階層と15階層の階層ボスはどちらもオーガだ。けれど、通常種ではなく、リーダーモンスターとエリートモンスターにパワーアップしている。
ここで豆知識なんだけど、階層ボスは次の階への階段前に陣取っていて倒さないと先に進めないように見えるが、別に倒さなくても無視して先に進める。
パワーアップしたリーダーオーガやエリートオーガは強い割にドロップがおいしくないということで、敬遠されがちなモンスターになってしまっている。
そういうわけで、きっと階層ボスも残っているだろう。
純粋なパワーアップ個体なので、戦うのが楽しみだ。――あれ、やっぱりバトルジャンキーかな?
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