第22話 次に行くならCランクダンジョンで
今日は予定通り、ダンジョンへ向かう前に冒険者協会日本支部・関東局に来ている。目的は、〈狼ダンジョン〉から得た指輪型の〈マジックアイテム〉の詳細鑑定だ。
ちなみに半ば強制の鑑定のため、費用は0円となっております。
どうしたの冒険者協会? 何か企んでいるの?
実際は、〈マジックアイテム〉の情報を得る対価、ということになっている。
詳細鑑定には、〈マジックアイテム〉の鑑定を行う〈マジックアイテム〉を使用するらしい。なんだかややこしい上に、冒険者協会の機密でもあるのであやふやな情報だ。
「こちらの番号札を持って、1番鑑定室へ移動してください」
言われたとおりに部屋に移動すると、透明な板で仕切りがされた部屋だった。イメージとしては、刑務所の面会室に近いと思う。本物の面会室を見たことが無いのであくまでイメージ。
仕切りの向こうには、冒険者協会の職員さんが座っている。
「ご利用ありがとうございます。番号札と〈マジックアイテム〉を提出していただけますか?」
「はい」
ここで詳細鑑定が行われるようだ。
アイテム受け渡し用の小窓から指輪を受け取った職員は、指輪を銀色のトレーの上に置き。微動だにしない。
一体何が始まるんだ。妙な空気が流れ始めたころ。「ジージージー」というまるでレジでレシートを発行するときのような音が鳴った。
「はい。詳細鑑定が終了しました。名称は〈灯火の指輪〉。機能は、光の玉を放つ、です。こちらが鑑定書です」
「あ、はい」
なんか良くわかんないけど終わったみたい。「鑑定! ハッ!」とかそういうのは無しでした。
〈灯火の指輪〉ね。戦闘にはちょっと役立ちそうにないけど、ライトとかの代わりになるかな?
「もし機能を試したい場合は、関東02ダンジョンで試されると良いでしょう」
そっか。関東局にはダンジョン講習でお世話になった、あの超低難度ダンジョンがあったんだった。
職員さんの勧めに従って、関東局のダンジョンで〈灯火の指輪〉を試してみることにした。
「どんなものかな。えい」
“使おう”と意識すれば、アクティブ型――起動するタイプ――の〈マジックアイテム〉は使える。
ちなみに〈マジックアイテム〉にはもう1つパッシブ型というものがあるが、こちらは装備するだけで効果を発揮する。ミミミちゃんが装備している〈集音の頭飾り〉がパッシブ型だ。
MPを1消費して光の玉が現れ、指輪を向けた方向へスーッと飛んで行った。明るさは普通の電球くらい? 移動速度は小走り程度。飛んで行った光の玉は、壁に当たると反射して、合計20メートルくらい移動して消えた。
「定点の灯りとしては、使えそうにないね。移動していっちゃうし、割とすぐに消えるし」
使い道は……、なんだろ? 飛んでいくから、深い穴があったら内部を確認するのに使えそう。ひもを付けたライトを落とせっていう正論は知らない。
でもいいの。初めて拾った〈マジックアイテム〉、それだけで価値がある。私にとってはお宝だ!
お宝を左手人差し指にはめて、金策3週間の最後の追い込みをかけた。
金策効率と〈マジックアイテム〉の可能性にかけて、〈狼ダンジョン〉の20階層から25階層までを1日1回踏破する。21階層以降で他の冒険者とは1度も会うことはなく、気楽に金策ができた。
残念ながら、最初に〈灯火の指輪〉を得た以外に〈マジックアイテム〉はおろか宝箱すら出なかった。最初の宝箱はビギナーズラックだったみたい。
〈マジックアイテム〉は出なかったけど、3週間で稼いだ合計金額は140万円を超え、マジックバッグの代金がまるまる戻ってきた。
「むふ、やっぱりマジックバッグの効果がすごいね」
最後の1週間の稼ぎだけで、前の2週間の稼ぎを超えたくらいだ。
「でも〈狼ダンジョン〉での金策はそろそろ終わりかなぁ」
21階層以降の金策効率はなかなか良いが、ダンジョン外でちょっと面倒くさいことになっている。
というのも、パーティーでの金策が盛んな〈狼ダンジョン〉でソロ金策をしていると、まあ目立つ目立つ。視線に力があったら、ボッコボコのボコになってたかも。1週間目はそこまででもなかったんだけど、2周目以降で一気に増えた。
パーティーへの勧誘もちらほらとある。ありがたいのは確かだけど、パーティーを組むつもりは今のところ無い。
そうすると、解決策はソロでも目立たないダンジョンへと活動の場を移動することだ。
「ソロのおすすめダンジョン。DランクかCランクか」
Dランクダンジョンには、ソロのおすすめダンジョンとして関東08〈草ダンジョン〉がある。ここは〈狼ダンジョン〉よりも難易度も金策効率も低い。これだと移動するメリットはほとんどない。
「やっぱりCランク。ミミミちゃんのおすすめに従おうかな」
関東33〈巨人ダンジョン〉。次の目標は決まった。
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