第19話 最奥ついたら検証しよう
大量だ。
「むふ。むふふ」
思わずニヤけてしまいそうなほど、大量に魔石が集まっている。それでもマジックバッグの容量には余裕があった。
「でも時間が時間だから、今日はボスをやって終わりにしよう」
狩りに狩って、夕方前に25階層の最奥部、ボス部屋手前までやってきた。お夕飯前には帰りたいので、今日はここまで。
〈狼ダンジョンの〉最奥ボスは、エリートフォレストウルフ1、フォレストウルフ3、リーダーフォレストウルフ1、ウインドウルフ2の7匹のグループが2つ、つまり14匹が相手だ。
終始複数体の相手をさせられるので、パーティー推奨ダンジョンとなっている。
私が挑むとしたら、エリート以外は一突きで倒せるので攻撃力は十分にある。怖いのは、囲まれるのと、〈ウインドボール〉を連発されること。数は力だ。
「速攻ウインドウルフを潰すとか? エリートに登ったら他からの攻撃を防げたりしないかな。〈登攀〉の出番?」
いろいろと考えてみるが、まずは私の現状を確認しないといけないでしょう。今の〈ステータス〉はこれだ。
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名前:前田明(まえだ あきら)
レベル:11(7UP)
HP:220/220(70UP)
MP:205/205(70UP)
所有スキル:〈槍術2(1UP)〉、〈気配察知3(1UP)〉、〈隠密3(1UP)〉、〈跳躍2(1UP)〉、〈身体強化2(1UP)〉、〈登攀1〉、〈軽業3(1UP)〉、〈魔力操作1〉、〈疾駆2(1UP)〉
転生特典スキル:〈変身(玉藻の前)〉、〈火魔法(狐火魔法)〉、〈鉄扇術〉、〈呪符〉
――――――――――――――――――――
うんうん。全体的に育ってるね。
レベルは2桁に到達して11に、HPとMPも200を超えた。
スキルについては、森を走り回るときによく使っていた〈気配察知〉、〈隠密〉、〈軽業〉の3つはスキルレベル3になっている。
スキルレベルについて補足しておくと、レベル3で一人前、レベル5で一流、レベル7を超えると超一流で、レベル9から上は超越者。そんな感じ。
金策は半ばルーティーン化しているので、残念ながら新しいスキルは生えていない。同じく魔法関連も使っていないので、全く育っていない。
「軽戦士、というか暗殺者っぽい?」
狐耳の暗殺者か……。どちらかというと猫耳にそんなイメージがあるが、狐耳でも悪くない。短剣でも持ってみようかな? あとは狐のお面とかも良いね。これはちょっとメモっとこう。
「うーん、ボス部屋だから、転生特典スキルも解禁しようか」
一応そこは気を付けていて、〈狼ダンジョン〉は人が多いので、転生特典スキルを使わないようにしていた。一度、中ボスの戦闘中に、他の冒険者が現れることがあったので余計に気を使っている。どこに目があるか分からないしね。
とりあえず、ボス部屋に入ったら〈呪符〉を使って自分へバフをしよう。効果は、敏捷上昇でいいな。ボスといっても、対応方法は今までと同じ、囲まれる前にこっちから突っ込む。
「もし辛そうだったら、〈火魔法〉も解禁して手数を増やす。〈変身〉は……、うーん、検証もしたいな。残せそうならエリートを1匹残して、検証もしよう」
戦闘の流れを確認して、ボス部屋に踏み込む。扉が閉まったら戦闘開始だ。
――グォオオオン!
――ガウッ!
2匹のエリートが吠えると、それぞれのグループに属するフォレストウルフとリーダーが左右それぞれから走り寄ってきた。
エリートがいるとこれがやっかいなんだ。グループが、より戦術を持って動くようになる。
こちらも〈呪符〉によるバフを済ませ、あまりバラけていない方のグループへと向かって走る。〈呪符〉のバフに〈身体強化〉を加え、さらに〈疾駆〉も使った私の速度は、ウルフのそれを圧倒的に上回る。
いささか乱暴で、まだ細かい制御はできない。それでも、近づいて槍を突くくらいは十分できる。
「えいえいえい」
モンスターが魔石になるより早く、前衛のフォレストウルフを片付けた。〈呪符〉の効果は槍を扱う速度にも影響する。
先手を取れたのはここまでだ。走り寄ったフォレストウルフとリーダより更に左右へ広がったウインドウルフから、それぞれ2発、合計4発の〈ウインドボールが〉放たれた。また、時間差でフォレストウルフも攻撃をしようと突っ込んでくる。
「活路は前にあり。……これ言ってみたかったんだ」
飛び込んだ勢いのまま、向かってくるフォレストウルフのさらに上へ〈跳躍〉で飛び上がる。ついでに槍を叩きつけ、フォレストウルフを1匹倒しておいた。狙うはリーダーだ。
空中で呪符を放ち、リーダーに敏捷低下のデバフを狙う。過たずリーダーに張り付いた呪符によって、見るからリーダーの動きは緩慢になった。これならば相対するのは容易い。
「えい。えい」
着地ざまに1匹、そこからもう1匹のリーダーを倒した。これで残りは、フォレストウルフが2匹と、無傷のウインドウルフとエリート。自分からウルフたちの只中に飛び込んだので、ここからは乱戦になる。
まずはついでにエリートへと呪符を飛ばし、敏捷のデバフを狙う。1匹には成功し、もう1匹には避けられた。これは今後の課題だね。
デバフの入ったエリートは、できれば残しておきたい。
――グゥオン!
速度の落ちていないエリートと一合。爪と槍が弾け合い、私はその勢いを利用して、ウインドウルフへと反転した。
まだ〈ウインドボール〉の次弾はない。
「えいえい。えい」
〈気配察知〉で迫るフォレストウルフを捉えながら、ウインドウルフ2匹を突き刺し、余裕をもってフォレストウルフも一突き。
さらに後ろから最後のフォレストウルフが来ているが、残りのウインドウルフも誤射を恐れず〈ウインドボール〉を撃ってきた。
すわ「俺にかまわず撃てー!」というロマンかと思えば、直前でフォレストウルフは〈ウインドボール〉避けて、魔法だけがこちらに向かってくる。
もしかして、魔法を体で隠しての不意打ちを狙ったのかな?
いや、その戦法自体はありなんだけど、問題は、フォレストウルフ1匹の大きさでは、〈ウインドボール〉の存在を全く隠せていないということ。つまり、見え見えの〈ウインドボール〉なんて簡単に躱せてしまう。
この戦法をするなら、前衛はエリートとか、もっと体の大きいモンスターでやらなくちゃ意味がないよ。
「えい」
無理な機動で隙ができた最後のフォレストウルフを倒し、ウインドウルフ……、は一旦放置でエリートへ。魔法について検証したい欲が出てきた。
デバフのかかった遅いエリートを躱し、再度元気なエリートと一合。今度は〈身体強化〉も込みの本気の一撃で、前足を吹っ飛ばし、浮き上がった喉に向かって槍を一突き。
これで残ったのは、デバフで敏捷が低下したエリートと、ウインドウルフ2匹。
「変身! ふふふ、これで準備が整ったのう。さあ、検証の時間じゃ」
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