第18話 マジックバッグがあるなら奥へ行こう

 金策は順調で、目標では3週間だったところを、2週間で目標金額の60万円に届いた。


 ここでオリチャー(オリジナルチャート)発動! 3週間たっていないけど、マジックバッグの購入! これにより、金策の効率が向上し、槍を収納することでダンジョンまでの移動も快適に!


「おおー、すごい。槍が入った」


 購入したのは、容量0.2立法メートルのポーチ型マジックバッグ。容量が少ないように思えるが、マジックバッグの容量はちょっと特殊だ。


 例えば球を箱に詰めた場合、3割くらいは隙間ができて、箱の容量が無駄になる。マジックバッグではそれが起こらない。だから槍を入れても、純粋に槍の容量分しかマジックバッグの容量は減らないのだ。


 容量以外にも制限があって、バッグの口よりも大きなものは入らないというもの。ポーチの口は20㎝ほどで、私の装備でいうと、槍は入るけどベストは入らない。


「取り出すのも楽ちん。不思議だなぁ」


 取り出す際は、ポーチの口に手をかざせば、望みの物を取り出せる。中に入っているものは、なんとなくわかる。


「これでいくら稼げるか、ちょっと楽しみかも」


 普段の金策では、ポケットがいっぱいになったら一度買取カウンターへ行って売却し、それからダンジョンに戻る、ということをしている。


 ダンジョンへ戻る際には〈ダンジョンポータル〉を使うわけだが、移動した先にはそれなりに冒険者がいる。それを避けてある程度移動してから金策を再開するので、買取カウンターへ行く回数が多いと、移動時間以上に効率が下がってしまう。


「がんばるぞ、コヤンコヤーン!」


 この掛け声が最近のお気に入り。




 移動してきました〈狼ダンジョン〉。槍が無いだけでとっても楽ちん。ベストとニーパッドはそのままなので、少しだけいぶかしげな眼で見られるけど気にしない。


 しゃがんだ時に前の人を突き刺す心配も、電車の乗り降りで槍を引っかける心配も、下り階段でコツコツ石突を鳴らす心配も不要!


「やっぱりマジックバッグは必需品だった」


 うんうん、と再確認してダンジョンへ入場。今日のスタート地点は、20階層だ。そこから下って行って、順調ならそのままダンジョンを踏破したい。


 今までは金策を優先していたので、20階層以下には進んでいない。もし進んだとしても、早々にポケットがいっぱいになって、ただ移動するだけの時間が長くなってしまうという判断だ。


「とりあえず21階層を目指そう。狩りはそこからで」


 20階層の〈ダンジョンポータル〉周辺は、ベテラン冒険者の狩場だ。この階層までは、フォレストウルフとリーダーフォレストウルフの混合グループしか出てこず、パーティーであたればおいしい獲物となる。


「中ボスはリポップ待ち時間っぽい」


 そして中ボスは、その混合グループにエリートフォレストウルフが混ざった構成。20階層で普通に狩りをできるパーティーなら、なんら問題ない相手だ。


 今はいないので、21階層への階段を駆け降りる。ここからは、少しやっかいな相手、魔法を使うウルフの登場だ。


「む、あれがそうかな」


――――――――――――――――――――

名前:ウインドウルフ

強さランク:5(ふつう)

確定ドロップ:魔石(小)

確率ドロップ:魔石(中)

レアドロップ:なし

スキル:〈ウインドボール〉

――――――――――――――――――――


 茶色や灰色のフォレストウルフの中に、緑色の体毛のウインドウルフが混じっている。名前の通り、〈属性魔法【風】〉を持ったウルフで、人のスキルでいうところの〈ウインドボール〉を撃ってくる。


 現れたグループは、フォレストウルフ3、リーダーウルフ1、ウインドウルフ2だ。それぞれ前衛、中衛、後衛の立ち位置。


「先手必勝。ふっ」


 グループを相手するのも慣れたもの。まずは速攻し、数を減らす。一番まずいのは囲まれることで、こちらから近づくことでそれを防ぐ。


「えいえい」


 初手で2匹。並んでくれていたのでラッキーだ。少し遅れたフォレストウルフを反転させた石突でかち上げ、下をくぐるように前進を続ける。


「えい」


 反応できていないリーダーをさっくり突き刺し、〈疾駆〉で横にずれウインドウルフの〈ウインドボール〉を躱す。狙いが雑で、撃たれるまでどこに来るかわからない分、避けるのも大げさになっちゃう。


「えいえい」


 あとは魔法を連発できないウインドウルフを順番につんつんして終わり。


 終わってみれば、20階層以前よりも楽に戦闘できた。


「何もしなくても、良い感じに分かれてくれるから、囲まれる心配がなくて楽かも」


 加えて、前衛にあたるフォレストウルフを倒すまでは、後衛のウインドウルフは〈ウインドボール〉を控えている様に感じた。


 誤射を嫌がっているのか知らないが、こちらとしては大助かり。単純にウインドウルフの分だけ前衛の数が減るのだ。そして前衛が減ると、ますます囲まれる心配が減る。


「そしてウインドウルフは魔石(中)(1,000円!)を落とす……。ここは絶好の金策地なのでは?」


 事前に調べた限り、ここのウインドウルフはかなり厄介な相手で、金策するなら20階層以前がお勧めされていた。百聞は一見に如かずという言葉もあるように、きちんと自分で確認することが大事だね。


「これは、過去最高の金策になりそうな予感!」

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