第13話 配信するならダンジョンで?

 予定していた買い物は思ったより早く終了した。総合防具店の店員さんが親切だったのと、私に合うブーツのサイズがなかったからだ。


 とりあえずお昼にフードコートできつねうどんを食し、あとはウィンドウショッピングといこう。


 この世界は現代といっても、前世とは違うし、何か面白いものが見つかるかも。


「へぇー、魔石稼働家電かぁ」


 部屋をもうちょっと快適にしようと生活雑貨・家電が置かれているエリアに来てみた。


 目に入ったのは、魔石によって稼働する家電たち。


 ダンジョンでとれる魔石は、内部にエネルギーを保有しており、これをなんかいい感じにすると電力源として使用できる。


 新たなクリーンエネルギーとして注目の的で、そのため冒険者が魔石を売却して稼げるというわけだ。


「電池みたいな扱いかな。使用後はなくなっちゃうから、電池よりも後始末が楽と」


 魔石で稼ごうとしている身ではあるが、なんとも不思議な物質だ。


 冒険者なら魔石は自分で集められるし、魔石稼働家電は良い選択なのかな? それとも電気代の方が安いかな? (あとでネットで調べてみたら、基本的には電気代の方が安かった。魔石稼働は付加価値メインの商品らしい)


 さらにずんずん進んでいくと、『ダンジョン配信は、最新の高性能ドローンで!』、という看板が立っていた。


「ダンジョン、配信?」


 ほうほう。なるほどなるほど。


 ダンジョン配信とは、その名の通りダンジョンでの活動を動画配信サイトで配信するというものだった。配信サイトの名前は、『ダンチューブ』。


 運営しているのは世界冒険者協会で、もちろん営利目的だ。そのため、法律的なあれやこれやで冒険者登録のための学科試験には出せなかったみたい。


 また、ほぼ常識レベルで周知されているので、わざわざ説明もないと。これが異世界ギャップかぁ。異世界ギャップって言葉、たぶん私が初めて使ったと思う。


 一応、ダンジョン講習後にもらった冊子には、ちょこっと記載があるらしい。……ごめんなさい、まだちゃんと読んでません。帰ったら読みます。


 とりあえずスマホでダンジョン配信についてちょこっと調べてみる。


「冒険者協会も撮影を推奨……。あ、犯罪抑止のためね」


 証拠映像を残す様にすれば、おバカな考えを持つ人も減るだろうと期待してのこと。人の目があるぞと。


 逆に撮影をしていない人は、映像を残さないように何かをしようとしている、とも考えられる。臨時パーティを組む際には積極的な撮影が好ましい。


「はぁ~。これは知らなかったらちょっとマズかったかも」


 ほんとーに、ここで気付けて良かったよ。


 私はソロで活動することがほとんどだと思うから、撮影用のドローンを飛ばしていなかったら、ダンジョン内で合う人みんな警戒まっしぐらだ。それで私が撮影のことを知らなかったら……。うー、鳥肌立っちゃった。


「配信……、はしないと思うけど、撮影ドローンは買っておいて、いつでも使えるようにしておいた方が良いね」


 正直に言えば、配信に対する興味はある。ただその場合、持ってる力のほとんどを制限することになるだろうから、ちょっと窮屈だ。


 制限しなくてもいいくらい素の力が強くなったら、配信してみてもいいかもね。それとも玉藻の前で配信するとか? ありかな? 一応ロールプレイの候補には入れておこう。


「どのドローンが良いのかな?」


 当面の間、配信するつもりはないし、録画するだけなら稼働時間重視がいいのかな。あとは耐久性とか?


『ダンジョン配信 ドローン おすすめ 初心者』、検索開始! 君に決めた!


 購入したドローンは、魔石稼働のもので、スライムからドロップする極々小魔石でも12時間録画できる。ゴーレムの魔石なら90時間だ。


 魔石を入れるスロットが3個あって、魔石切れ(バッテリー切れみたいな意味)になりそうになっても安心の設計。良いじゃない。


 買い物はここまでにして、部屋に戻ってドローンの設定をしよう。


 関東局ダンジョンにお邪魔して、スライム3匹を蹴飛ばし魔石を1個ゲット。ドローンの箱を抱えて走り回る私は、まるで早く遊びたい子供みたいに見えたのか、冒険者協会の職員さんたちが生暖かい笑みを浮かべていた。


 ドローンの設定自体は単純で、冒険者証をペアリングしたように、Dギアのペアリング機能を有効にしてドローンを近づけるだけ。


 ボロロン♪と軽快な音をさせて、設定は終了。あとはペアリングしたDギアの録画ボタンを押せば、自動で追尾しつつ録画してくれる。


 配信する際は、配信サイト『ダンチューブ』側でいろいろ設定する必要があるが、そこは今はスルーで。


「おおー、本当についてくる! すごい!」


 部屋の中を歩き回って試してみると、私の斜め後ろ、三人称視点とも呼ぶべき所をキープしながら、静かについてくる。


 ドローンと言ってもプロペラで浮いているわけではなく、何かがうまいこと作用して浮いているので、特に気にならない。すごい技術だ。


 停止ボタンを押せば、Dギア付近に移動したドローンが、力を失ってポトリと落ちてきた。


「おっと、いよし。動作確認終了。普段は仕舞っておいて、必要な時だけ出すようにしよう」


 ベストに着けた小型収納バッグにドローンを仕舞った。


「さて、寝る時間までは、ダンチューブとやらでダンジョン配信でも見てみようかな」

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