第8話 続・検証するならダンジョンで
ゴーレムは、はっきり言って人気のないモンスターだ。
まず硬い。下手に刃物で攻撃すると刃が欠けたり、刀身が曲がってしまったりする。弱点は打撃だけど、それでもタフだ。
次に魔石。ゴーレムの胸にはまっていて、これを攻撃すると簡単に倒せる。けれど、魔石に一定量攻撃するとドロップアイテムで魔石が手に入らなくなる。
そして、魔石以外のドロップは、石。石なんてもらってどうしろと?
とまあ、こういう理由で人気がない。
ただ、高ランクのダンジョンには、希少な金属をドロップするゴーレムがいるらしく、そっちは逆に人気がある。今の私には関係ないけどね。
「岩ダンは近場だから、朝から行って、できれば踏破もしたいな」
関東13ダンジョン――通称〈岩ダンジョン〉はEランクなので、踏破をすればステータスのダンジョン踏破証にEランクが増える。
「踏破証にEランクが増えれば、Eランク冒険者だ。むふふふ」
冒険者ランクとは、そのままどのランクのダンジョンを踏破したかを表す。Eランクダンジョンを踏破したならEランク冒険者、Dランクダンジョンを踏破したならDランク冒険者だ。
しかし、Cランク冒険者以上になるためには、そのランクのダンジョン踏破以外にも実技試験が必要となる。これは冒険者になるための体力テストとは違い、ガチの戦闘試験だ。
したがって、Cランク冒険者とは一流の冒険者の証しなのである。
「登録してすぐにCランク冒険者になっちゃったりして。最速のCランク冒険者だ!?とかテンプレだよね。むふふ」
なんたって私、転生してますから。お狐様ですから。むふふ。
「あーでもでも。あんまり目立ちすぎても玉藻の前のインパクトが薄れちゃうかなぁ」
悩ましいところだ。
「とりあえず情報収集はここまでにして、明日に備えて休もっか」
お夕飯は、油揚げとほうれん草の煮びたし。おだしを吸ったお揚げが大変おいしいです。
翌日、いつもより少し早めに目覚めた私は、すぐに岩ダンへと向かった。検証したいことはいっぱいあるし、できれば〈変身(玉藻の前)〉の検証もやりたい。
いつものパーカーにいつものショートパンツ、あとは槍をかついで走って移動だ。
今のところ、防具は購入していない。岩ダンのゴーレムは動きが遅いらしいから必要はないと思う。
「それでもいずれは購入しないとなぁ」
ちなみに玉藻の前の巫女服は、並みの防具よりもよっぽど防御力がある。
獣人の脚で20分ほど走って岩ダンへと到着した。
低ランクのダンジョンの入り口――〈門〉の周囲には、無人の建物があるだけだ。これがCランク以上だと、買取カウンターがあったり、売店があったりする。
手首に着けたDギアをかざして、扉を開けて中へと入る。そこには関東局ダンジョンと同じ見た目の〈門〉がポツンとあった。
「よし。まずは小手調べ。ゴーレムを相手にできるかやってみよう」
ダンジョン講習を除いたら、2回目のダンジョン侵入だ。否が応にも高まるテンションを抑えて、いざ出発!
「情報通り、室内型の石製地下通路だね」
出てくるゴーレムに合わせてなのか、ここは石畳や石壁で整えられた地下通路のようなダンジョンになっている。
通路の幅と高さはどちらも5メートルほどで、ところどころに10メートル四方の小部屋があるらしい。
「周囲に敵は……、いないっぽい」
スキルの〈気配察知〉を意識しながら周囲の気配を探ってみた。隠蔽していなければ狐耳がピコピコ動いていたかもしれない。
とりえず一度ゴーレムと戦ってみたい。その結果次第で、踏破を目指すかどうかを決めよう。
20メートルも歩かずに、ひとつめの小部屋へとついた。気配察知にはゴーレムらしき反応が1つ。目視では、何やらガレキの山が見える。
「むぅ。あれがゴーレム?」
槍を構えて前進していくと、にわかにガレキが動き出し、ゴーレムへと変形した。
「おー。すごい!」
――ゴオオオ!
ガシン、ガシンとこちらへ近づいてくるゴーレムの歩みは、とっても遅い。これなら、少なくとも逃げることは簡単そうだ。
「えい」
カチン!
槍で軽くつついてみたけど、ちょっとダメそう。力を込めればダメージは通るだろうけど、槍にもダメージがありそうで怖い。いくら初心者向けの安物とはいえ、買ったばかりの槍がダメになったらショックだ。
「石突の方でやってみよう。でもこれって〈槍術〉扱いになるのかな? えい」
バゴン!
――ゴッ!
足を1本吹っ飛ばされたゴーレムが、バランスを崩して倒れ込んだ。
「なるほど。こっちなら大丈夫っぽい。えい」
バゴン!
倒れたゴーレムの頭を吹っ飛ばしたら、ゴーレムが消えて魔石がドロップした。頭が弱点なのかな? それとも単純にダメージの蓄積だろうか。
それも検証項目のひとつに追加するとして、ゴーレムを倒せることは確認できた。
「これならダンジョン踏破も目指せそう。よーし、行ってみようー」
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