第6話 ステータス申告は正確に(嘘)
はい今日は終わりです。きつねうどんを食べて帰りましょう。
とは流石にいかない。
ダンジョン講習が終わったら、得た〈ステータス〉の情報を、冒険者証に登録する必要がある。
また、ダンジョンに入場する際に着用が義務付けられている、ダンジョンギア――通称Dギア――の購入と設定もしなければならない。
Dギアは、リストバンド型の機械で、通信やマッピングなど様々な機能を持つ。多機能故に値段も高いんだけど、冒険者は無利子のローンで購入が可能だ。もちろん余裕のある人は一括でも可。
それで肝心の〈ステータス〉の話。
まずは、私が得た〈ステータス〉について。それがこちら。
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名前:前田明(まえだ あきら)
レベル:1
HP:120/120
MP:105/105
所有スキル:〈槍術1〉、〈気配察知1〉
転生特典スキル:〈変身(玉藻の前)〉、〈火魔法(狐火魔法)〉、〈鉄扇術〉、〈呪符〉
状態異常:耳・尻尾隠蔽
ダンジョン踏破証:なし
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順番に確認しよう。
レベル1、これはいいよね。レベルはモンスターを倒していれば自然と上がっていく。まだスライム1匹しか倒してないからレベル1のまま。
次にHPとMPについて。冒険者協会の情報によると、一般的な数値はどちらも50くらい。うん、高いね。
初めて得たスキルが物理型だとHPがちょっと高く、魔法型だとMPがちょっと高くなる、という統計データはあるらしいんだけど、それにしても高い。たぶん転生が何か悪さしてるんだと思うけど、高い分には困らない。
お次は所有スキル。〈槍術1〉はスライムを倒した時にもらえた。〈気配察知1〉はその後にダンジョンを歩いているときに生えてきた。スキルの後ろの数字は、スキルレベルを表している。1だからレベル1だ。
転生特典スキルもしっかり確認できてる。わかりやすいように別記してあるけど、実際は併記だ。
状態異常に耳・尻尾隠蔽ってあるね。これって状態異常だったんだ。状態異常を回復するお薬や魔法で耳と尻尾がバレちゃうこととかあるかも。気を付けないとね。
最後にダンジョン踏破証。これはダンジョン最奥まで踏破することで増えていく。当然今は何もなし。
「ふぅ、確認終わり」
ステータスの確認は終わった。あとは冒険者証に情報を登録するんだけど、正直に登録するとたぶんまずい。
ここは一般的なステータスを登録しておくことにする。スキルも〈槍術1〉だけにしておこう。ステータスの登録は自己申告なので問題はない。
過去に、無理やりにでも正確にステータスを登録しようとしたみたいなんだけど、ステータスって詳細は自分でしか確認できないんだよね。
それでも無理やり確認しようとして、登録するためのコストが膨大になって、最終的には自己申告に落ち着いた。
もちろん正直にステータスを申告することにメリットもある。それはずばりお金だ。
嘘はないですよ、正確な内容ですよ、と契約してからステータスを申告すると、少なくないお金がもらえる。あ、ちなみにこの契約は生涯契約で、年1回のステータス更新のたびにお金がもらえる。これをステータス登録契約という。
さすが冒険者協会、やり方が汚い。――ほめてますよ?
無難に登録した私の〈ステータス〉がこちら。
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名前:前田明(まえだ あきら)
レベル:1
HP:55/55
MP:40/40
所有スキル:〈槍術1〉
状態異常:なし
ダンジョン踏破証:なし
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「はい。ご登録ありがとうございます。ステータス登録契約はいつでも可能ですので、気が変わりましたらご一考ください」
「はい」
玉藻の前ロールプレイの足枷になりそうなステータス登録契約は絶対にしない。
「続けてダンジョンギアの設定に移ります。ダンジョンギアペアリング機能を有効にした後、冒険者証をかざしてください」
「こうかな」
ポロロン♪
軽快な音の後に、手首に着けたダンジョンギア――Dギアに私の名前が浮かび上がった。
「これで所有者登録が完了しました。ダンジョンギアはペアリングされた冒険者登録証とセットでしか機能しません。どちらも紛失されないよう気を付けてください」
「わかりました」
「こちらはダンジョン入場時の注意点についてまとめた冊子です。お時間があるときにご一読されるのをお勧めいたします」
「ふむふむ」
「ダンジョン保険にご加入の予定はありますか? 冒険者協会のおすすめプランもございますよ」
「あ、いいです」
「そうですか。お渡しした冊子にも保険について記載がありますのでご参考にしてください。それでは本日お渡しするものは以上です。質問や意見は総合窓口かインターネット窓口へお願いいたします」
「はい。ありがとうございました」
実に事務的。これが現代の冒険者窓口か!
それでも、転生してから2か月弱、ついに冒険者になったぞ!
待ってろダンジョン、私の冒険はこれからだ!
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