第5話 普段使いには槍で
「そこまで。筆記用具を置いてください」
試験を監督する冒険者協会職員の声で、筆記用具を置いた。今日は待ちに待った冒険者協会の試験の日。
学科試験のできはまずまずといったところ。回答もほとんど埋めて、おそらく問題なく突破できているだろう。
試験後のわずかに弛緩した室内には、私と同じく受験しに来た人たちがいる。人数は11人。
毎月試験があるおかげか、一度に受験する人数はそれほど多くない。ここ関東局の担当エリアでは、試験会場が2か所あるというのも、人数が少ない理由のひとつかな。
マークシート形式の試験なので、合否はすぐにわかる。学科に合格した人だけが、午後の実技試験を受けられるのだ。
「お揚げさんが少し薄いけど、もむもむ、2枚入っててお得感がある、うまうま」
私が来ている試験会場は、冒険者協会日本支部の関東局本館だ。同じ敷地内に、日本支部のビルと関東局のビルが2つ並び立っている。
関東局本館の1階には、社食?レストラン?的な飲食できる場所があるので、そこで昼食にきつねそばを頂いた。なかなか美味でした。
「次の機会があったら、こんどはきつねうどんにしよう」
そう心に決めて、学科試験の結果を待つ。結果は合格。あとは実技試験という名の体力テストを受ければフィニッシュだ。
「こちらが冒険者証になります。記載されているお名前と住所に誤りがないか確認してください」
「はい。問題ないです」
無事実技試験もパスしました。むしろ力をセーブするのに苦労した。
獣人になっているから、下手に全力を出すと、なんだこいつは!?ってなりそう。可もなく不可もなく、普通のラインを目指して頑張りました。
「ダンジョン講習を受講するまでは、お一人でのダンジョン入場はできません。直近でのダンジョン講習は明日になりますが、受講されますか?」
「はい」
試験に合格しても、すぐダンジョンに行けるかというとそうでもない。今言われたように、ダンジョン講習を受講する必要がある。
これは、安全に〈ステータス〉を得るためだ。〈ステータス〉とはなんぞや? 冒険者協会の公式ホームページにはこうある。
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ステータスとは、ダンジョンの出現とともに、人類が得た新たな力のこと。
モンスターを初めて討伐すると誰でも得ることができる。
名前、レベル、HP、MP、所有スキル、状態異常(バフ、デバフ)、ダンジョン踏破証の7種類の項目があり、脳裏で確認できる。
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オタク知識がある人であれば、なじみ深いだろう。各項目の意味もだいたい同じ感じ。詳細は必要になったら説明しようね。
普通の人は、〈ステータス〉を得ると同時に何か1つ〈スキル〉も得られる。私の場合は転生特典ですでにもらっているけどね。でも追加でもう1つもらえるかもしれないから、実は少し楽しみにしている。
〈スキル〉についての記載も確認しておこうか。
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スキルとは、ダンジョンの出現とともに、人類が得た新たな力のこと。
モンスターを初めて討伐すると誰でも1つ得ることができる。また、鍛錬や特殊な条件を満たすことによっても得ることができる。
自分が得たスキルは、脳裏でいつでも確認ができる。
スキルにはレベルがあり、最低が1で最大が10である。スキルレベルはスキルを使用していくと上昇する。
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有名な〈スキル〉は、ネットにかなり詳しい情報がある。例えば〈身体強化〉スキルは、スキルレベルごとにおよそ1割の身体能力が向上する。スキルレベル10で元の2倍だ。
私は転生特典のスキルを持っているが、普通のスキルとの違いは、ステータスを得る前にすでに持っている点と、レベルが無い点。
レベルが無い点は、メリットなのかデメリットなのかちょっと分からない。〈鉄扇術〉で鉄扇を振り回している感じでは、そこそこ高レベル相当だと思う。スキルは戦闘の要なので、あとでちゃんと検証しないとね。
翌日。今日も探索者協会日本支部・関東局本館に来ている。
つまり今日はきつねうどんの日だ。違った、ダンジョン講習の日だ。
関東局本館には講習用のダンジョンがあって、講習はそこで行う。ほんとは逆で、ダンジョンがあったからその上に関東局本館を建てたみたい。
さて、本日のダンジョン講習だが、講習と言っても、現役冒険者の引率に従って最弱モンスターであるスライムを1匹倒し、ダンジョン1階層を1周回って終わりの、のんびりしたものだ。
講習前には、そのスライムを倒すための武具を購入できる。これが本日のメインイベントと言っても過言ではない。
武器にはいろいろな種類があって、剣、斧、槍、弓といった割とスタンダードなものがここでは購入できる。イロモノは別にお買い求めください。
私が選んだのは槍だ。
長物は強いってどこかで言ってた気がする。リーチはパワーだ。
「ダンジョン講習はこちらでーす!」
えいっ、プスっ、ステータスゲット!
はい今日は終わりです。きつねうどんを食べて帰りましょう。
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