第2話 転生したら現代で!?
「って現代に転生してるじゃないか!?」
俺の目に入ったのは、至極一般的な現代風リビング。テレビの他にはエアコンも設置されており、ローテーブルの上にはスマホとノートPCも置かれている。
どう見ても現代です。
「え、ちょ、え……」
言葉をなくすとはこういうことか。あまりの衝撃に頭がうまく働いてくれない。
しばし呆然とたたずんでいたが、これはイカンと気合を入れて、周囲を探索してみることにした。
「そ、外はどんな感じなんだ?」
少しだけ開いたカーテンの隙間から外を覗き見してみる。こ、怖がってなんかないぞ。
慎重に覗き見した外はベランダになっており、外壁の奥に見える建物の高さを考えると、この部屋は3階以上の高さにあるようだ。
「……ますます現代っぽい」
マンションっぽい建物もあるし、階下には一戸建ての屋根もある。ファンタジー世界が進歩して現代っぽくなった、と言い訳できる可能性も無くはないが――、
「日本語が普通にあるんだよね……」
遠くに見えた看板には、でかでかと日本語が書かれている。さすがにファンタジー世界と言い張るには無理があろう。
「よし、室内も見ておこう」
外の覗き見はやめて、室内の探索に移る。今いる部屋はリビングっぽい部屋で、奥にダイニングキッチンが見えるので、LDK(リビングダイニングキッチン)になるのかな。
LDKの隣の部屋はベッドが置かれた洋室で、収納、トイレとお風呂別、そして玄関。
「うん。1LDKってやつだ」
見て回ってわかった。そして戦利品もある。
「これが私の戸籍かぁ」
洋室のサイドテーブルに置かれていた書類のいくつかは、この世界での私の戸籍関連だった。
名前は、前田明(まえだ あきら)。16歳の女性。両親は無しの天涯孤独。仮に両親がいたとしても、どう付き合っていったらいいか分からないし、悩まなくて済んだと考えよう。
写真付きの身分証明書には、黒髪をショートボブにした眠たげな少女の顔が写っている。キャラクリしたまんまだ。
「おー。なんだかちょっと感慨深いかも」
ぱらぱらと書類を確認していくと、戸籍以外のものはこの部屋の契約書だった。
16歳で保証人もなしで契約していて、ちょっとやばいかもと思ったんだけど、どうやらこの世界では16歳が成人らしい。何があったの現代……。でもおかげで助かりました。
預金通帳も発見した。女神様の言った通り、結構な残高があって、しばらくの生活には困らなさそう。
「よかった。早く冒険者ギルドに登録して稼がないとね。……ん?」
あ、今何か気付いちゃいけないことに気付いちゃった気がする。
転生したら冒険者ギルドに登録するでしょ? それで薬草採取や魔物退治してお金を稼ぐ。うんうん、テンプレだね。
でもそれって現代でも同じこと言えるの?
「え、うわー、まずいよまずいよ! え、どうやって生活費稼ぐの!? 私16歳だよ! 雇ってくれるとこなんてある!? あ、学校、学校は行ってないの!?」
室内を、文字通り隅から隅まで再探索し、学校関連の書類がないことを確認した。ちなみに制服なんかもなかった。
「いや違うでしょ。学校より生活費でしょ! 落ち着いて考えなきゃ……」
うろうろとリビングを歩きながら、何か名案が浮かばないかと期待する。行ったり来たりする度に尻尾がふぁさりふぁさりと揺れ動く。
「うー、どうしよう」
ソファに座り込むと、どっと疲れがやってきた。ついでにお腹も減ってきた。前に回した尻尾を抱え込んで顔をうずめると、ちょっと気分がマシになった気がする。狐吸いの効果だ。いずれガンにも効く。
「腹が減ってはなんとやら! まずは腹ごしらえだ!」
冷蔵庫には何も入っていないことは確認済み。ひとまず近くにコンビニか何かがないか探して、お弁当でも買ってこよう。
「スマホとお財布、ちょっと後ろポケットに入れるのに尻尾邪魔だなぁ」
そこではたと気付いた。
「尻尾……ある。狐耳も……ある。あれ、これって普通なの? あれ? あれあれあれ? これ、一番まずいんじゃない?」
両親なしの天涯孤独とか、学校に行ってない16歳とか、現代で冒険者とか、そんなの目じゃないくらいの問題でしょこれ!
「いや、まだだ! わんちゃん狐耳がいっぱいいる世界になっている可能性が!」
スマホを取り出し、タップ!タップ! 検索『狐耳 獣人 実在』行けー!君に決めたー!
検索した結果。
「――獣人は、この世界に、いないっ!!」
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