【てんたま!】 転生するなら狐耳美少女〈玉藻の前〉で ~転生先はダンジョンありの現代ファンタジーだった!?~

蟹蔵部

第1章 謎の狐耳美少女現る

第1話 転生するなら狐耳美少女で

「あなたには異世界に転生してもらいます」


 真っ白な世界で、俺の前に立つ美女がそう言った。


「て、転生?」


「はい。こちらの手違いであなたを死なせてしまいました。お詫びとして異世界に転生してもらいます。もちろん、断っていただいてもかまいません。その場合は、そのまま死後の世界へと行ってもらいます」


 転生? 本当に!?


 俺がどうやって死んだかなんてどうだっていい。たぶん誰も興味なんてないだろう。


 今重要なのは、俺が転生する権利を得たってことだ。


「しゅ、種族は……、狐の獣人になれますか?」


「人種ならば問題ありません。邪妖精人種(ゴブリン)などはおすすめできませんが」


 き、きたー!! 狐の獣人!


「あの、性別を選べたりもしますか?」


「可能です。と申しますか、可能な範囲で転生する体を自由にできますよ」


 美女――たぶん女神様――がそう言うと、俺の目の前にゲームでよくあるキャラクタークリエイト画面が現れた。


「あなたの記憶から、操作がしやすいようにインターフェースを作製しました。自由に選択してください」


「あ、ありがとうございます!」


『もし、異世界に転生したら』、誰しも一度は想像したことはあるだろう。もちろん俺もある。


 転生するなら、狐耳美少女でしょ! みんなもそう思うよな?


 よし、キャラクリをしていくぞ!


 まずは〈変身〉スキルを取る。ん? 何故かって?


 俺の狐耳美少女のイメージは、妖艶な九尾の狐――玉藻の前なんだが、玉藻の前がそこら辺をうろうろしているのを考えて欲しい。


 ダメだ、ミステリアスさが足りない。


 そこで〈変身〉スキルだ。ここぞというときに玉藻の前に変身して活躍する。そういうロールプレイがしたい!


 なので〈変身〉スキルは必須だ。


「変身前後で別々に容姿を設定できるんですね」


「そうですね。自由な変身を行うスキルと別形態を切り替えるスキルの2種類があります。後者の方が魂の容量は少しで済みますね」


「魂の容量ですか? どういったものか教えていただけますか?」


「魂には容量があり、スキルの取得数に制限があります。強いスキルばかりだと、取得できる数が減ってしまいますね」


「なるほど。ありがとうございます」


 そうすると、玉藻の前ロールプレイに重要なスキルから取っていった方がいいな。


 変身の次に取るのは、〈火魔法〉スキルだ。狐といったら? そう、狐火だね。


 おっと、狐火のことを考えていたら、〈狐火魔法〉スキルが生えてきたぞ。こういうこともあるのか。もちろん取得します。〈狐火魔法〉スキルは、玉藻の前に変身しているとき限定のスキルのようだ。


 あとは〈鉄扇術〉スキル。これは賛否、というか、好みがわかれる部分だと思う。薙刀とか刀とか弓とか、いろいろ考えられると思うが、俺は断然鉄扇推しだ。ちなみに、ちゃんと切れるタイプの鉄扇推しだ。


 かなり魂の容量が少なくなってきているようで、取れるスキルが少ない。ご丁寧にグレーアウトしていて選べなくなっている。


 つらつらとスキルリストを眺めていると、良いものを発見した。


 〈呪符〉スキルだ。呪符を飛ばして、バフやデバフをかけるスキルのようで、残りの魂の容量でも取得できた。玉藻の前的にもグッドだ。


 最後に、容姿を設定する。


 まずは年齢だが、これは若すぎず老いすぎず、16歳とした。もう少し若く、とも考えたが、あまり若すぎると軽くみられることがあるかもしれない。きっと冒険者ギルドでからまれる。


 玉藻の前は、金髪がいいだろう。背は少し高めで、金色の眼差しは鋭め。キリっとした目がいい。お胸様は……、盛っておこう。うん。


 尻尾は、九尾にはできなかった。残念ながら一尾のまま。レベルが上がったら尻尾が増えるシステムとかありませんか。


 よし、これで〈変身〉スキルで玉藻の前に変身できる。〈変身(玉藻の前)〉スキルの完成だ。


 普段の姿は、玉藻の前と遠ければいいから、低身長でお胸様は控えめ、目はジト目というか眠たげにして髪は黒で、っと。


 うん、我ながら良い出来だ。


「女神様、できました」


「そうですか。それでは転生してもらいます。当面生活できる資金と住居は用意しておきました」


「ありがとうございます!」


 今日日まったく支援もなしに転生させるということも珍しくない(※フィクションの話です)というのに、資金と住居まで与えてくださるなんて!


 さすが女神様です!


「健やかに生きなさいね」


「ありがとうございました、女神様! 俺、立派な玉藻の前になります!」


 視界を覆っていく光の中で、俺はハッキリと宣言した。この機会を活かして、立派な玉藻の前になると。


 光が段々と収まり、視界が戻ってくると、周りの様子がわかるようになった。


 明るい木目のフローリング、白い壁紙、通り抜けできそうな大きな窓には爽やかなブルーのカーテンがかけられ、少し開いた隙間から陽の光が室内を照らしている。


 部屋の中央にはローテーブルと3人掛けのソファ、対面には大き目のテレビ、そして奥にはキッチンが――、


「って現代に転生してるじゃないか!?」

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