苦肉の策
兄上2人にも帰ってきて貰い、家族総出で唸りつつ、知恵を出し合い…案を捻り出した。
まずは、女性のふりをして王宮に入り、3ヶ月で王子の衣装を仕上げる。
そして、居もしない婚約者との結婚を口実に王宮からサラッと退散しようという打開策が練り出された。
3ヶ月位なら、なんとかやり過ごせるのでは無いか…というのが皆の結論で。
わざわざ「実は男なんです!」なんて言うと、大層名誉な呼び出しに対し、間違いを指摘し王宮側に恥をかかせ、更には期待に応えなかったという事で、どんな処罰が下るか分からないし…
わざとでは無いにしても、王家に背いたという事実で、家業もたたまなくてならない羽目になるのは目に見えていて。
「でもなぁ…リュカ。お前は、口が悪いからなぁ…そもそも喋ると男だとバレてしまうだろうし」
頭を悩ます父上に、姉上が助言する。
「言葉が話せない事にしましょう。口が悪いのも隠せますし」
2人して口が悪い口が悪いと…ヒドイ。
まぁ、事実だが。
確かに話さなくて良いのは気楽でいい。
「でも、女性と生活するのは…着替えたり入浴したりでバレないだろうか…」
そこも姉上が策を練ってくれる。賢い姉上を持っていて助かった。
「事故で背中に大きな傷を抱えていて、…見られるのは本人が大層拒み、気鬱病になるので…皆さんも汚い傷は見たくないでしょうしと言って、他の方と分けて頂きましょう」
もちろん、傷などないが、それは名案だとなった。
その傷があるが故に、なかなか貰い手の無かった縁談がやっと決まったので帰して欲しいというのも説得力があるし。
繊細な刺繍が出来るのも、身に起きた不幸によって内面のナイーブさに深みが増したから…と。
まぁ、僕の本来の生き様とは全く違う素晴らしい物語が作られていく。
横でぼんやりと聞いていた僕に、父上が静かに投げかける。
「悪いな…リュカ。無理だろうか?頼まれてくれるか?」
父上は、優しい…結局は、お前が嫌なら断るよ…と言う言葉も含めて聞いてくれている。
こんな出来損ないの僕をずっと、捨て去る事無く、むしろ伸び伸びと育ててくれた。
これは親孝行出来るチャンスが来たと言う事だろう。
「いいよ、行くよ」
僕は腹を括った…
王宮をマルっと騙くらかして来るよ!
もちろん言葉にはしなかったが…
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