第6話 チャンピオン


「もしもし、上坂さん?実はさ、、」

「あ、聞いたよ。エンジェから。BPEXで、またコラボすることになったんでしょ?」

「う、うん」

「大丈ぶぅ?」

「いやーどうかなあ」

「まぁ、、色々と大変だろうけど……何かあったら相談乗るし」

「ありがとう」

「一つ注意点があるとすれば、、」

「ん?」

「エンジェの視聴者、過激派が多いからそこは気をつけた方がいいかもね」

「あー」


 そういえばそうだ。あとから気づいたことだったけど、配信中はコラボ配信に夢中で見れなかったコメント欄を、アーカイブで見直していたところ、連投荒らしや対立煽りなどがあり、少し荒れていたのだ。


「うちの事務所、結構自由度高くてさ、コメント欄も自身のスタイルに合わせて管理することになってるんだよね」

「なるほど……」

「まあ、コメント欄なんて気にしなくて自由に楽しくやればいいよ!!エンジェも昨日すごく楽しそうだったし」

「二人ってめっちゃ仲良いよね?」

「一応同期でデビューしたての頃から仲良いからね。急にどうしてそう聞いたの?」

「いや、、2人ともお互いを分かりあってる感じがしたからさ」

「ま、リアルでも交流あるからね」

「そうだったの?」

「うん。たまに遊びに出かけるよ。2人で。あっそうだ。私が暇になったら、3人で出かけてみる?」

「えぇ!?僕、男だけどいいの?」

「ちょうどいいじゃん。早乙女くん、女装してくれるって約束したよね?それなら、傍から見たら3人みんな女の子だよ」

「つまり、女装をして一緒に出かけようってこと?」

「うん、そいこと」

「ま、まぁ約束したし……」

「よしっ!じゃあそういうことで!」

 いつかは決まっていないが、近い将来、3人で出かけることになったみたいだ。しかも僕は、女装で。


 ◇


 エンジェとのコラボ配信当日となった。


「よーし、前回の雪辱を果たすぞっ〜!!」

 エンジェは、気合いが籠っていた。

「おー!」

 ゲームに関しては、エンジェは本気なので僕もそれに呼応した。

 こうして、チャンピオンを取るまで終われない配信は始まった。


 が、初戦だった。


「まって、この仲間の人めっちゃ強そうじゃない?」

「なんで分かるの?」

「えっ、だって、バッチが凄いもん。これこの人について行けばいいよ!梨林りりんちゃん!」

「OK、じゃあ着いてく。エンジェ置いてくけど大丈夫そ?」

「あっ舐めてるなー?エンジェだってやる時はやるんだからね〜」

 その試合は本当にその野良の仲間の人が活躍し、僕達は援護射撃するだけでほぼ無傷で敵部隊との戦闘に勝利していた。野良の仲間だけが戦い、僕らは遠くで打つだけというなんとも恥ずかしい戦略だが、勝てれば良いのだ。

 そして、最終円のバトルになった。

「やばい!もうこれ最終リングだよ!!やばいやばい」

「お、落ち着いてエンジェ、この仲間がいれば大丈夫!!」

「わ、わかった!でも、どうすれば」

「と、とりあえず着いていこう」

 どんどんとエリアが縮んでいく中で、僕達は強い仲間の背中に張り付いていた。

「あっ、敵が!!」

「撃と撃と!」

「おっけー!!」

 残り3部隊。

 そこから激しい銃撃戦になり、仲間がワンダウンをもう取っていた。

「あ、今、キルしたキル!」

「僕もやった!1人!」

「えっもう、これチャンピオンなんじゃない?」

「あと、残りどこだー?」

「あ、仲間があそこで戦ってる!勝ってるわ!!」

 僕たちが敵を倒している間に、仲間はその2倍を倒していて、まさかまさか初戦でチャンピオンを取れた。

「やったあああ!!!取れたああああ」

「あっけなさすぎない!?もうこれで配信終わり!?」

「そうでしょ?チャンピオン取れたんだし」

 僕はワクワクしながらそう言った。

「なんでちょっと嬉しそうなのよ!でも

 終われないってだけだから、終わらなくてもいいのよ」

「え?」

「もうちょいやりましょ」

「ええ〜?」

「やろう、ね?」

「う、うん」

 エンジェの圧に負けてもうちょっとだけやることになった。


「てか意外だなー」

「なにがー?」

「ヱカルラさ、エンジェ以外の女の子のVとあんまりやりたがらないから〜どうやって仲良くなったのぉ?」

「あー、、」

 そっか、僕を男だと知らないし、専門学校でもう知り合っていることもエンジェは知らないんだ。

「なんか気が合うのかも。初めてコラボ配信したのも、そういう理由だし!」

「ふーん、なんか妬けるわね。エンジェのポジションを奪われたみたいで!!」

「いやそんなつもりは無いから〜!」

「やっぱり、エンジェと梨林ちゃんはライバルだねっ。腑抜けたプレイまたするようだったら、許さないわよ!そのポジション奪い取ってやるんだから!!」

「だから奪ってないって〜」

 この人、わざと面白いから喧嘩する方向に持っていってない?

『エンジェのポジションを奪うなんて、この新人、調子乗ってるな!』

 あーあ、僕のコメント欄も香ばしくなってきたし。


 その後は2人で沼プレイを連発し、お互いに貶し合いながら、面白く雑談しながら、プレイし、チャンピオンは取れずに終わった。


 コメント欄は少し荒れていた。


「もしもし、梨林?お疲れ様」

 配信後、エンジェから電話がかかってきた。

「今日はコラボ配信ありがとう。色々あったけど」

「色々あるふうにさせたのよ」

「えぇ、なんでそんなことを?」

「だって、その方が面白いし、盛り上がるじゃない?」

「はぁ、、」

「視聴者サービスよ。あんたもこれから配信で人気になりたいならこういうのも学んでいくべきね」

「でも、、僕のコメ欄荒れてたんですけど……」

「え?なんてコメント?」

「『エンジェのポジションを奪うなんて、この新人、調子乗ってるな!』って」

「それはごめんなさい。迷惑かけたわね」

「まあ、いいんだけど」

「でも、そんなこと気にしないでいいのよ。コメント欄なんて」

「なるほど」

「楽しいコメントだけ見ればいいの!その方が楽しいし!」

「アドバイス、ありがとう」

「べ、別に私はそうだから言っただけ」

 やっぱり、狐悪魔こあくまエンジェの中の人は、上坂さんの言う通り、根はいい子なんだって思った。しかも、配信に対してちゃんとしっかりとした志を持っている。

 僕も、見習うべきだなと思った。

「そういえば、近々3人で遊ぶ約束、ヱカルラとしたらしいわね?」

「うん」

「ちょっと、楽しみだわ。あんたがどんな感じの人か」

「そうだね、僕も楽しみだよ」

3人で会う、、いつになるか分からないけど、本当に楽しみだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

読んでくださった方、ハート、星、コメントやレビュー、フォローをしてくださった方、ありがとうございます。


この話が少しでも気に入ってくださった方は、星やハートをよろしくお願い致します。とても励みになります。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

男の娘の僕がバ美肉でVTuberデビューしたら、いつの間にかハーレム築いてた件 黒兎しろ @utumi_yushin

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ