第4話 コラボ配信しようよ!

 オーディションに受かり、PCも買い、ついに僕はデビューすることになった。


 リアライバー9期生として。


 VTuber鳴神なるかみ 梨林りりんとして。


 名前もキャラデザも僕が考えた。水色の髪に黄色が少し混ざっていて、それが雷の模様をしている。林檎と梨の形をした2つのヘアピンをつけている。


 キャラデザだけでなく、ちゃんと僕が描いたキャラが、鳴神 梨林であり、愛着も湧いていた。


 そして、待ちに待った初配信日が来た!


 配信開始ボタンを押す。


「初めまして、リアライバー9期生、鳴神 梨林です。初配信なので緊張をしていますが、これからよろしくお願いします」


 初めて自分で配信した時とは違って、高性能なグラフィックそして、ボイスチェンジを使用することが出来た。わざわざ自分で足を運んで、PCを買った甲斐があった。


 今日の配信としては、自己紹介と事務所で打ち合わせした面白エピソードを話すという内容だった。


 人生初の配信の時とは違い、配信開始前からコメント欄は賑わっていて、既に一万人近くの視聴者が居た。


 僕は、女の子のVTuberとして、売れる自信があった。


 その理由の一つとして、僕は男であるからだ。男のロマン、つまり、男がどういう女の子に理想を描くか、男の好きなへきを掌握している。それにより、男が大好きな女の子を、演じることが出来るのだ。


 男が好きな女子、趣味や好みは人それぞれ違うものの、共通していることがある。一つ目に根が純真であること、優しい雰囲気があること、そしてちょっとした穴があるところだ。穴っていうのは、ちょっとした可愛いと思える欠点だ。ギャップ萌にも繋がる。例えば、趣味がオヤジ臭かったり、オタク趣味で早口になっちゃったりするところ。


 僕はSA○U○Eに影響されて始めたパルクールの話ややってみたいゲームの話をした。

 その話をしている中で、話口調や雰囲気、笑い方に意識して、清楚で砕けた言葉の中にも上品さがあって、パルクールやゲームについての詳しい話や熱意を語り、オタクっぽさもある感じにして、僕が可愛いと思う最善の女子を再現出来たと思っている。


 コメント欄でも、『かわいい!』とか『いいね!』とか肯定的意見や好印象なコメントばかりに溢れていて、嬉しくなった。


 ◇

「昨日の配信面白かったよ!」

 専門学校で上坂さんにそう言われた。

「ありがとう。緊張してたけど何とかできたよ」

「いや、緊張とか全然してなさそうに聞こえたけどね。様になってたよ。女の子として」

「それは良かった」

「でさ、配信に慣れてからでいいんだけど」

「ん?」

「一緒にゲーム配信してみない?コラボ配信ってやつ」

「逆にいいの?してもらっても?」

「いいよいいよ。うち結構色んな人とコラボしてるし、せっかくだから早乙女くんともしたいなって」

「なるほどね。なんのゲームするの?」

「BPEXっていうFPSゲームやってる?」

「やってる。好きなゲームだよ」

「おー!!じゃあいいね」

「最近始めたばかりだからあんまり上手くないけど大丈夫?」

「大丈夫大丈夫、うちもめっちゃ下手だから!」


 上坂さんとBPEXでコラボ配信することになったので、次の配信は初のゲーム実況として、BPEXやった。

 BPEXといえば激しいFPSゲームだから、撃ち合いとかになったらリアクションを大きく、そして可愛くするのが基本だろう。それをやったら、リスナーにもやっぱり、ウケが良かった。


 そして、コラボ配信当日になった。


『ついに、あの新星VTuberの鳴神梨林と色鳥いろとりヱカルラがコラボする日が来たぞ!』

『めっちゃ楽しみ!2人とも好きだからどんな絡み方するんだろう!』。

 僕も、すごく楽しみだったから、色鳥ヱカルラとコラボすると何度も配信で口にしていた。そのせいもあってか、配信開始前のコメント欄は、ワクワクとウキウキで溢れていた。


「あっ、初めましてー!」

「初めまして!!よろしくお願いします!」

「あはは、よろしくよろしくぅ!」

 あくまで、初めて話したかのうように振る舞う僕ら。

「なんて呼べばいい?」

「梨林がいいかなぁ」

「じゃあ梨林で!」

「僕はなんて呼べばいいですか?」

「ヱカルラでいいよ!あと敬語やめてよ!先輩後輩とかめんどくさいし」

「じゃあもっと親しみこめた呼び方でもいい?」

「どんな呼び方?」

「ヱカちゃん」

「あっははははは!それ!○ガちゃんみたいじゃん。ふふっ、いいんけどさ!!」

 呼び方も決めて、ようやくBPEXは始まった。

 デュオモードで、バトルロイヤルを開始した。

「キャラ何使うのー?」

 ヱカちゃんが聞いてきた。

「うーん、やっぱり初心者だからブラちゃんかな」

「えっ、ブラ○!?キャラ被りなんだけど!」

「ええ!?じゃあ、使う?」

「いやいいよいいよ!梨林使って!」

「じゃあ遠慮なく、ヱカちゃんはどうするの?」

「うーん、どうしよっかなぁ、悩むなぁ」

「あっ、やばい時間が!」

「ああほんとだどうしよ!」

「もうデブで行こ!デブで!」

「これデブじゃなくて、ジ○だからっ!」

 ヱカちゃんは僕に突っ込んで大爆笑をしていた。その楽しい様子が伝わったのか、リスナーのコメント欄も『www』で埋め尽くされ、大草原不可避となっていた。


 試合が始まり、戦闘の時も最初から最後まで終始和やかなムードで、会話で初のコラボ配信は進んでいった。

 そんな雰囲気に包まれて、コメント欄も平和で楽しくワイワイと盛り上がっていた。

「楽しかったね!またよかったらやろ!梨林」

「ぜひぜひ!ヱカちゃんが良ければ!」

 気づけば、同接はヱカちゃんのおかげもあって10万人くらいいた。


 ◇


 終了後、反響は凄かった。


 切り抜き動画で、

『面白すぎる新星V、現る。面白すぎて戸惑うヱカルラwwwww』

 とかいうタイトルが何十万再生もされていたし、その動画のコメント欄では、『この2人面白すぎる』とか『この2人尊すぎて好き』とか2人のコラボに対する肯定的コメントで溢れかえっていて嬉しくなった。面白かったのは、

『ヱカルラ、VTuberの中でも女子力高い方だと思ってたけどもっと高いVがいたなんて』というものだ。僕は男なのにと思って笑えてきた。


「コラボ配信まじでよかったね!」

 上坂さんといつものように専門学校で再会すると、テンション高く話しかけてきた。

「マジで楽しかった。誘ってくれてありがとう」

「全然いいって!うちがやりたかったことだし!」

「このコラボ良かったしさ、もっと他の子ともコラボしてみない?例えば、リアライバーで一番人気の子とか」

「えっと、狐悪魔こあくまエンジェさんだっけ」

「そう!うちと同じリアライバー9期生で、リアライバーの中で一番登録者数が多い凄い子なんだよ!!まぁ、ちょっと本人は癖強いんだけど根はいい子だし」

「そうなんだ。上坂さんが言うなら安心かな」

「じゃあ、3人でBPEXでコラボ配信しよ!」

「お、いいね!」


 この時は軽く約束してしまった。上坂さんの友人なら大丈夫だと思った。しかし……


「あんたが最近、めっちゃ人気の新人V?なーんか、生意気ね」


 めっちゃ敵意示してるんですけどおおおおおおおおおおおおお!?


 こんなに敵意を向けられているとは思わなかった……


 どうなる!?早乙女さおとめ 両佑りょうすけ!鳴神 梨林!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る