そのために、探偵になった

バルバルさん

三分以内に

 探偵には三分以内にやらなければならないことがあった。

 現在、この屋敷の部屋の中には二人の男。銃を持った男と、車いすに座った男。

 車いすの男が言う。


「まさか、君が犯人だったとはねぇ」


 そう言った男は、窓の外を眺めている。窓の外には豪華な庭園があるが、そこには警察官たちが今回の事件に対する調査をしていた。

 大谷十蔵の屋敷で起こった怪事件。次々と十蔵の関係者が無残に殺されていく事件の調査。

 だが、あまり進展はない様で、窓の外の現場はピリピリとした雰囲気だ。

 銃を持った男が言う。


「この復讐は、子供の頃から温めてきたんだ。窓の外のぼんくらどもに解決できるわけがない」

「復讐、復讐ねぇ……なら、何故何の罪も犯していない、大谷晴美の母子を殺したんだい?」


 ぴくり、と銃を持った男の眉が上がる。


「ふん。おしゃべりをして時間稼ぎのつもりか? お前の命は、もって後三分。さっきお前、毒薬を飲んだろ?」

「あはは、バレていたか。君に、これ以上殺人させたくなかったからね」

「くだらないことを……そのせいで、大幅に計画を前倒して、お前を殺さなければなくなった!」


 そう言った銃を持った男は、引き金を引く。

 銃声は大きくは響かない。そういう仕組みの銃だ。

 銃弾は車いすの男の額に命中し、彼を絶命させた。


「……くそ、こんな殺しではバレる可能性が……だが、未だつかまれない……大谷の血族を、絶やさないと……っ」


 探偵には三分以内にやらなければならないことがあった。

 それは復讐。

 幼い頃に両親を破滅させた大谷十蔵への復讐。

 彼の両親は、自殺した時に絶命するまでに三分かかったという。

 ならば、大谷の血族にも同じことをしてやろう。

 死ぬまでに三分かかる毒薬を飲ませて、それで死ぬか、別の方法で死ぬか選ばせる。

 計画は九割成功していた……大谷十蔵の孫、総司がその薬を自発的に飲まなければ!

 そのせいで、三分以内に総司を殺さなければ、復讐が完遂できなくなってしまった。


 だが、総司は変な事を言っていた。大谷晴美の母子を殺した?

 あの二人は自殺。無理心中のはずだ。

 大谷晴美の子供、優香は殺す対象だったが、晴美は違う。だからあの二人は殺していない。殺せていない。

 一体、どういうことだ?


 ……何か違和感がある。

 ……何かが引っかかる。


 もしや、この屋敷に、俺以外の殺人者がいる?


 ダメだ。俺以外が大谷の血族を殺すのは。俺の復讐が完遂できなくなる。

 俺以外の殺人者を、告発しなければ。

 俺が捕まらないように、かつ、大谷に連なる人間を殺すために……

 

 そのために、探偵になったのだから。

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