あれこれ、いろいろ(四)
「あれ、ずいぶんと青色になったね」
ほぼ毎日、おじちゃんを見ている私やバアバは気づかなかったが、三日ぶりに来た野田先生には、ずいぶんと青く見えたらしい。
良いこと言ったぞ、野田くん、実験は終了だと、おじちゃんが鋏を振りながら言った。
「まだ白っぽい感じがするけど……」と私が口にすると、先生が「こんなもんじゃないかな」と言った。
いいぞ、野田くん、もっと言えーと、おじちゃんが先生を応援した。
そこにバアバがやってきて、「もういいんじゃない。サバばかりやりすぎると栄養が偏るんじゃないかしら」と言ったので、実験は終了した。
青色のザリガニを見ながら、私がついうっかり、「よくよく考えれば、だからなに、よね」と言ってしまったところ、おじちゃんが、なんてことを言うんだとぷりぷり怒り出した。
水槽の中で引っ繰り返って、憤りをあらわにするおじちゃんを見ながら、先生が「イチカちゃん、それは言っちゃいけないよ」とたしなめた。しかし、私はその言葉の響きから、先生も私と同じことを思ってたんじゃないかと推測した。
ジタバタしていたおじちゃんは、「タカル、いまからマックに行って来るわ」というバアバの一言でどうにか落ち着きを見せた。
それから、私に向かって、「イチカ、ドナルド・グローヴァーのディス・イズ・アメリカをかけるんだ。おいちゃんはたいへん怒っている」と怒鳴った。
黙々と倉庫へ向かう私を背に、先生が、「なぜ、その選曲……」とつぶやいた。
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