私と話さないで(一)
おじちゃんの部屋の中では、サザンオールスターズの「Bye Bye My Love(U are the one)」が流れており、それに合わせて、アメリカザリガニがテレパシーでへたくそな歌を私に聞かせていた。
「ほら、家庭教師を雇ったのはいいけど、私の家って、掃除の好きな人がいないじゃない。毎回、掃除をするのが母ちゃん、嫌になっちゃったのよ」
姉さんは相変わらずだね、それで、おいちゃんの部屋で勉強をすることになったのかい、とザリガニが言った。
「おじちゃんのおかげかどうかはわからないけれど、国語の成績は上がったわ。でも、他の教科がちょっとね。おじちゃんも教え方がわからないって言うし。だから、先生に来てもらうの。いい、先生が来ているときは、私に話しかけないでね。気が散るから」
私のお願いに対して、おじちゃんは答えず、代わりに、先生の名前はと、たずねてきた。
「野田サトリ先生。市大の経済学部に通っているんだって。痩せてて、けっこう格好いいのよ。私、たまにドキドキする」
密室に男子大学生と女子中学生か、ちょっとエッチだねとおじちゃんがささやいたので、私は機嫌を悪くして、「変なこと言わないで。いい、静かにしていてよ」ともう一度、くぎを刺した。ああ、なんか、不安になってきた。
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