生きるということ(四)
そんなこんなで、おじちゃんの相手をしていると、バアバが一階からやってきて、「タカル、ケンタッキーを買って来たわよ」と、水槽の前に箱を置いた。
バアバに踏切の怪談の話を手短にたずねたところ、「そんな話、聞いたことないわ」とそっけない返事だった。
何で知らないんだよー、まあ、いいや、イチカ、箱を早く開けてくれ、ドラムは入っているかい?
とおじちゃんがうれしそうにはしゃぐので、私が箱の中を確認すると、ドラムは入っていなかった。
私が首を横に振ると、おじちゃんはテンションを下げて、「外れか~」と言った。バアバも箱を覗き込んで、「あら、あら、外れね。残念だったわね、タカル」と水槽の中で丸まっているザリガニに声をかけた。
「でも、バアバ、ザリガニに人間の食べ物ばかりあげていてもいいのかしらね?」
私がそう言うと、バアバはシェルフから、かわいいザリガニのイラストがデザインされたボトルを手に取り、「でも、タカル、このエサ、全然食べないしね」と口にした。
それに対して私が、「人間としてのキョウジがあるんだってさ」と応じたところ、「でも、ザリガニが長生きするのに必要な栄養素が入っているわけでしょう? たまには食べてもらわない」とバアバが言ったので、再度、私が「だったら、人間の食べ物をあげなければいいでしょう?」と言うと、バアバは悲し気に笑うだけで何も答えなかった。
対して、おじちゃんはのんきなもので、ドラムはなくても、サイはあるだろう、サイをくれ、サイを、とうるさかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます