生きるということ(四)

 そんなこんなで、おじちゃんの相手をしていると、バアバが一階からやってきて、「タカル、ケンタッキーを買って来たわよ」と、水槽の前に箱を置いた。

 バアバに踏切の怪談の話を手短にたずねたところ、「そんな話、聞いたことないわ」とそっけない返事だった。

 何で知らないんだよー、まあ、いいや、イチカ、箱を早く開けてくれ、ドラムは入っているかい?

 とおじちゃんがうれしそうにはしゃぐので、私が箱の中を確認すると、ドラムは入っていなかった。

 私が首を横に振ると、おじちゃんはテンションを下げて、「外れか~」と言った。バアバも箱を覗き込んで、「あら、あら、外れね。残念だったわね、タカル」と水槽の中で丸まっているザリガニに声をかけた。

「でも、バアバ、ザリガニに人間の食べ物ばかりあげていてもいいのかしらね?」

 私がそう言うと、バアバはシェルフから、かわいいザリガニのイラストがデザインされたボトルを手に取り、「でも、タカル、このエサ、全然食べないしね」と口にした。

 それに対して私が、「人間としてのキョウジがあるんだってさ」と応じたところ、「でも、ザリガニが長生きするのに必要な栄養素が入っているわけでしょう? たまには食べてもらわない」とバアバが言ったので、再度、私が「だったら、人間の食べ物をあげなければいいでしょう?」と言うと、バアバは悲し気に笑うだけで何も答えなかった。

 対して、おじちゃんはのんきなもので、ドラムはなくても、サイはあるだろう、サイをくれ、サイを、とうるさかった。

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