生きるということ(二)
「おじちゃんは、怖い体験ある?」
嫌々、宿題を再開した私がたずねると、おじちゃんはしばらく黙っていた。それから、おもむろに、あるよと答えた。
「どんな?」と私がたずねると、おじちゃんが話しはじめた。
あれは、おいちゃんが大学生の時、寒い地方でアパート住まいをしていたときのことだった、深夜、おいちゃんが寒い中、薄いふとんで寝ていると、シンと静まった部屋に、ガリガリ、ガリガリ、パカパカ、パカパカという音が響いた、目を覚ましたおいちゃんは、ふとんの中で固まった、どうやら、玄関のほうから音がする、なんじゃらほいと思って耳をすませていると、ナニモノかが、玄関のドアの新聞受けを開けたり、閉めたりしていたんだ、だれかいるのかとおもったが、どうも、人の気配はない、おいちゃんは怖くなって、ふとんを頭からかぶり、そのまま寝てしまった、次に起きたら朝だった。
私がシャーペンを動かす手をとめて、「なに、それ。嫌な話ね」と感想を述べると、気味が悪いだろうと、おじちゃんが応じた。
「隣人の嫌がらせじゃない? また、なにか、揉めごと起こしていたんじゃないの。それか、猫」と、私が想像をはたらかせると、おじちゃんは丸まって、黙り込んでしまった。
しばらくしてから、おじちゃんは、そんなことない、ちがうと思うよとかぼそい声で言った。それから、イチカ、怪談が聴きたくなった、西浦和也先生のユーチューブを聴かせておくれよとせがんできた。
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