休日三分前の創世神 VS 全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ

田分出穂

創世神にも納期がある

 私には三分以内にやらなければならないことがあった。

 全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れの討滅である。

 六日間働き世界を作り上げ、やっと休みである翌日が三分後に迫った今になって、

 全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れが現れたのである。

 残業して作り上げた生物も、言葉も、地上も、空も、銀河も、

 世界そのものが現在進行系で破壊されている。



 たまったものではない。

 三分後に迎えるたった一日の休日の為に残業して六日で仕事を終わらせたのだ。

 休みの寸前になって仕事を増やすな。

 創世の納期は決まってるんだぞバッファロー。

 納期が明後日だからあと三分含む今日までに仕事したんだぞバッファロー。

 是が非でも一日休みを入れたかったんだぞバッファロー。


 休日に一秒でも働けば、終日労働の日になってしまうのだ。

 そうなれば休日は遠のいてしまう。

 泣く泣く後回しにした趣味がさらに遠のいてしまう。

 言い換えれば死に等しい。

 つまり、だ。

 三分以内に全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れを滅ぼす必要がある。



 一端の野生動物とはいえ、全てを破壊する存在である。

 可能な限り全力で事に当たらねば三分後の休日は消えてしまう。

 こう考えている間にも明日は二分後になっている。許せん。


 時間は無いが、相手の力量は測る必要がある。

 故にまず太陽をバッファローの群れにぶつける。

 しかし、いや当然と言うべきか、バッファローの群れは太陽を破壊し突き進んだ。

 力押しではダメだ。質量や熱量ではバッファローを討滅できない。


 ではバッファローの生態を利用してみてはどうだろう。

 彼らは本来、川辺や沼地に住む生き物だ。

 安住の地を求めて突き進む事をやめないのか?

 自らが住まう地があれば全てを破壊する事をやめるのではないだろうか。

 故にバッファローの群れの目前に沼地を作った。

 一瞬で破壊された。

 少しは躊躇してほしい。



 もう明日まで三十秒しかない。

 最終手段である。

 討滅すべき相手である、全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ。

 これを複製し、オリジナルとぶつける。

 全てを破壊する存在同士がぶつかればどうなる?

 絶対に破壊する矛と、絶対に破壊する矛を衝突させる。


 矛は何をかも貫く事ができても、自らを守る力までは無かったようだ。

 オリジナルとコピーのバッファローの群れ達は対消滅した。

 代償として、周辺のまだ破壊されていなかった諸々が余波で粉砕される。

 程度によっては十秒後の明日に修正作業が必要となる!

 頼む、余波で破壊するにしても納品可能な範囲にしてくれ……!




 思いが通じたのか、まだ破壊されていない品々は原型を保っていた。

 バッファローの群れに壊された痕跡は数多くあるが……

 納品する分には問題ない範囲だろう。

 私は強引に納得することにした。


 全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れの討滅は完了した。

 最低限ではあるがバ界ローの安全は保証され、ようやく私は休日を迎えられる。





 今なんて?

 自身の言葉を復唱する。

 バ界ローの安全は保証され



 言葉がバッファローに破壊されていた。

 バ界ローと言おうとしてもバ界ローになってしまう。

 バ界ローを納品しようにも名前が違う点は言い逃れできない問題だ。

 今から修正しろと?

 三分経った。

 休日出勤が確定した。

 私は泣いた。

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休日三分前の創世神 VS 全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ 田分出穂 @tawakenai

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