三分以内にチューしなさい
丸焦ししゃも
三分以内にチューしなさい
俺と妹は三分以内にやらなければならないことがあった。
それはチュー。
俺と妹は三分以内にチューしないと出られない部屋に閉じ込められてしまった。
「はぁ? なんでお兄ちゃんとキスしないといけないわけ?」
「壁にそう書いてあるだけじゃん」
「絶対に嫌! きもい!」
妹がぶんぶんと首をふっている。
「俺も絶対に嫌なんだけど」
「お兄ちゃんのせいでこうなったんだよ!」
「人のせいにするな!」
何故か妹の顔が真っ赤になっている。
「で、でもこの部屋から出られないのも困る」
「それは俺だって……」
正面には時計のタイマーが置かれている。
話しているだけでも、勝手に時計のタイマーが進んでいく!
既に残り時間は二分になっていた。
「だ、大体三分で心の準備しろっていうほうが無理じゃん……」
「心の準備?」
「うるさい!」
ただ聞いただけなのにまた妹に怒られた……。
「……ところで、お兄ちゃんはキスしたことあるの?」
「あるわけないじゃん。そういうお前は?」
「私だってキスなんてしたことないよ……」
今度は妹は恥ずかしそうにうつむいてしまった。
……正直、このままこの部屋に閉じ込められるのは嫌だ。
今日は見たいテレビあるし、やりたいゲームもあるのに。
「……キスしてみる?」
「はぁあああああ!?」
うるさいなぁ! 妹が変な声を出している。
「だって、残り一分しかないし……」
「うぅううう……」
「お前だってこの部屋にずっといるのは嫌だろう」
「……」
俺がそう言うと、妹がもじもじしながら近づいてきた。
目の前にいるのに全然目線を合わせようとしてくれない。
「……仕方なく。仕方なくだからね」
「分かってる」
「出られないと困るから仕方なくだからね!」
「分かってるって」
妹がぎゅっと俺の体を抱きしめる。
「……それとキモいは言い過ぎた。ごめんなさい」
「俺もさっきは言い過ぎたごめん」
「うん、本当はお兄ちゃんのこと大好きだからね」
――チュッと俺と妹の唇が触れた。
その瞬間、部屋の扉が開いた。
※※※
「あんたたち! ちゃんと仲直りしたの!?」
「お母さーん! ごめんなさーい!」
妹が泣きながら、部屋の扉を開けたお母さんに抱きついた。
「全くあんたたちは喧嘩してばかりなんだから! 昔はあんなに仲良かったのに!」
「ごめんなさい……」
「二人とも今年でもう小学三年生になるんだからねっ!」
またお母さんに怒られてしまった……。
うちのお母さんは怒るととても怖い。
僕と妹は喧嘩をすると、いつも一緒に二階の物置部屋に閉じ込められる!
「
「ちゃんとキスして仲直りしたもん!」
「なら許してあげる」
ぷんぷん怒っていたお母さんが、ようやく少し笑ってくれた。
「昔はいつも二人でほっぺにチューしてたんだからね。ご近所でも有名な仲良し兄妹だったんだから」
「へ?」
な、なんか嫌な予感してきたかも……。
「そ、そうだよ! キスじゃなくてチューしたもん!」
妹がお母さんに嘘をついた。
確かにキスではなくチューしなさいって言われてた……。
三分以内にチューしなさい 丸焦ししゃも @sisyamoA
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