地獄の亡者。

あるところに、知ったかぶりの牧師がいた。


牧師と言うだけで、なんら反省もせず、聖書をろくに読みもせず、説教をしていた。そう、牧師とは名ばかりで、実がなかった。


ただ、頭がよく、人から得た知識で聖職者に就いていた。


ある時、夢をみた。


有象無象の悪魔がその牧師の体内に入り込み、強い酒をくらい、パイプを吹かし、ギャンブルをし、いかがわしいと思える事をしだすと悪魔はゴキブリにかわり、牧師の体内を喰い荒らす、と言う夢だった。実際身体に痛みがあった。


夢から覚めると、牧師の頭の上にゴキブリの死骸があった。


「サタンに魅入られたか、、、」


牧師はその後熱心に聖職者として務め、聖書を通読10回、ヘブル語の勉強、御言葉の研究をし、反省の姿を見せた。


再び夢を見た。


悪魔や悪霊が隊をなし、牧師の身体に入って来た。身体をがんじがらめにされ、侮蔑の言葉、実際痛みのある十字架刑にあい、鼠100匹と共に十字架につけられる、と言う夢だった。


起きると、鼠が1匹、布団から出て来た。


それから、牧師は更に回心をし、聖書の御言葉を中心に、慈善事業に精をだし、禁欲清貧の暮らしをした。そして信徒を1万人に増やすと、外国へ行き、共産圏の国へ行き布教をし、神を信じず、人を呪う輩をクリスチャンにすると、自然と牧師の財は増え、巨万の財と成った。その金額100兆円。そのお金を使い、さらに3つの慈善団体を作り、巨大な教会を5つ新たに建てた。

そして、自ら医師になり、人々を医療的に治し、霊的にも人を活性させ、荒れた人々の心を正し、と活躍し出した。


次に見た夢はエジプトのファラオから、君命を受け、キリスト者を迫害するとゆう夢で、夢の中で、裏切り者、と揶揄され、牧師はは失意に満ちた生活を送り、今度は悪魔と共に夕飯を共にし、蛇を食うとゆう夢だった。


起きると天井から蛇が出てきた。


牧師は起きると、聖書のもう100の御言葉を覚えて、更に全財産、あらゆる権利を、教会のクリスチャンに分け与えると、断食祈祷をし、賛美し、主の御名を唱え、主を崇め、奉り、更に教会で信徒一人一人の心を鍛え、主の愛を与え、更に聖職者の中の「炎の牧師」と二つ名がつくほど、教会学校の先生ばかりではなく、一本筋の通った人を1,000人あまり育て、世に送った。


そうすると次は信徒のクリスチャンが、富んでいった。献金の額はその牧師の建てた教会5つの教会の1ヶ月分が1兆円なり、慌てた牧師は更に清貧に身を置き、自分の献金からの取り分は無くし、代わりに次々と伝道師を養成し、聖書解説書から、トラクトの冊子を自ら作り、ミッション系小中高大の学校を創設し、そこから、政治、経済、文化、科学、各方面に渡り、秀でた人物を輩出させた。


牧師自身、医師の傍ら、畑仕事をしだし、自給自足の生活をおくった。


次に見た夢は、主イエスと共に食事をする夢だった。


それから、その証詞をすると3日後亡くなった。


亡骸は、教会の納骨堂に入り、教会員により、讃美歌を歌われた。


「立派な人だったねぇ。歳も100まで聖職に就いていたし、私達は豊かになったし。牧師先生の遺言は、隣人愛、だったね」

お葬式の後、皆口々に言う。

1人の老婆の脇を、春の空の鳩が舞い降りた。

「牧師先生は鳩が好きだったねぇ」

傍の老人が言う。

「そう言えば、牧師先生の庭には鳩がたくさん来ていた。森や自然を愛していた、牧師先生らしい」

その時、1人の少年が鳩の中から、足に指輪がついていた鳩を見つけた。

「ね、あの鳩、牧師先生が着けていた十字の指輪足にしていた。間違いない」

「じゃ、あの鳩は御使いだな。牧師先生を天に運んだ後、牧師先生は、指輪はいらないから、鳩にあげたんだよ。優しい牧師先生だったからな」

春の陽があたりを照らし、徐々に暖かくなっていった。


遠くの山々から、讃美の歌が響いた。草木は芽生え、鳥の囀り、野の獣の啼く声、蝶々は舞い、花びらは満開となり、家々は良い香りに満ちた。春爛漫だ。


風がザッと吹いた。桜の花びらがまった。


その花びらの向こうに語らう2人の姿が見える。1人は牧師先生、1人は、、、






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