未題
石神井川弟子南
天の御国。
「お父さん、天の御国てどんなとこ?」
私は冬の寒さが続いている道すがら父に訊く。私は厚着をし、手には手袋をしている。
「そうだなぁ、パラダイスていうくらいだから、、、なんでもアリのところかな」
「パラダイスか。お父さん、もっと具体的に言ってよ」
「そうだなぁ、食べたり、飲んだりする必要がなく、太陽の代わりに御使いの光で満ち、大地は豊潤で、雑多な生き物で満たされている。家に入る必要も感じる事ないぐらい、温暖な気候。でもたまに砂漠に行ったり、森へ行ったりして、外で過ごしても不自由がない。眠る必要もない。朝は御使いの声で緩く集まり、神の御言葉に聞き従い、仕事らしい仕事はなく、悪と言う概念がない世界かな」
「人はそこで何をするの?」
父は、真っ直ぐ前を向き、雪道を歩く。父も厚着をしている。
「祈り、賛美、御使いの手助けさ」
「御使いの手助け?」
私は父を見る。父のマフラーが顔にかかる。
「もちろん、手助けと言っても、地上の人がパラダイスに来る用意をするぐらいさ」
「楽しい?」
「地上で遊園地や豪華な食事する100倍楽しい」
雪が降っていたが、やがて止んだ。雪は3センチほどしか積もっていない。
「あ、人が立っている。3日ぶりだ。ねぇ、お父さん、道が正しいか、訊こうよ」
「いや、訊く必要はないな。明らかに道は間違えていない。狭いし、さっき潜った門は小さかっただろう?」
「何日食べていなかったけ? 僕ら」
「1週間ぐらいだろう。さて、此処で服を2枚脱がないとな。暑くなってきた。服が余計だ。立っている人に服を渡そう」
父は立っている人に声を掛ける。
「暑くなってきました。服を差し上げます。あなた様はまだ寒いでしょう?」
光が照り始め、さっき降り積もっていた雪が溶け出す。
「兄弟、様付けは良くない。我々は仲間だ。私の事はもう知っているだろう。
「モーセでよかったかな?」
「そこの門に隠れている、ユダと言う男に服を渡せば良い。私はいらないよ、ヨシュア」
「ヨハネ、持っている服を脱ぎ、ユダに渡しなさい」
私はユダと言う者に服を渡した。
「ヨシュア、これから、5分も歩いた先に、ステパノがいる。挨拶をし、そこで与えられる服を着て、古い、その百万円の服を捨てなさい。身体を洗い、歯を磨きなさい。そして、1番狭い門から入れば、そこが、目的地だよ」
「ありがとう。モーセ」
「そしたら、次に主イエスと会う。そしたら、冠を授けられる。まぁ、金の冠だろう。間違いなく。ヨハネはその一つうえの冠だ
」
ありがとう、モーセ、と私は言い、天の御国への道を歩いて行った、、、、
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「しかし、とんだ悪人だったな、ヨシュアとヨハネの親子」
「100人殺しのヨシュアと、万引き常習、1人をレイプし、子殺しのヨハネ。いや、地獄行きっしょ」
「でも、死ぬ前に聖書を通読3回、御言葉一つ覚えて行ったからな」
「最後、牧師に懺悔してたな」
「お互い泣きながらな」
「ああ、もう看守の仕事したくないよ。どいつもこいつも悪人だ」
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