第114話 コーデッカ王国からの来訪者

 リューン王国に怪しい動き、あり


 シノビ衆からの報告を受け、俺たちパラデイン軍は対リューン王国への準備を加速させた。



 西の脅威であったゴルドア帝国は既に風前の灯火だ。パラデイン軍が占領下に置いた旧帝国領土を帝国軍が再奪取する可能性は極めて低いだろう。


 そこで旧帝国領に駐留していた兵を最低限の数だけ残して、他は全て本国へと帰還させていた。


 現在は新王都になる予定のケルベロスにある城内の軍議室で会議を行っていた。



「どうやらリューン王国は周辺国へ協力要請を出したようです」

「なんだって!?」


 クロガモの報告に第一軍団長オスカーが動揺を見せた。


「あのプライドの高い軍事国家が……周辺国と手を組むとは……」

「実際にリューンに協力する国家はありますの?」


 ステアが問い、それに応じたのはロニー・コルラン宰相だ。


「属国であるジオランド農業国は言うに及ばず、グゥの国、イデール独立国、ネーレス首長国、ジーロ王国辺りは同調する可能性が高いでしょう」

「帝国は?」

「恐らく動けません。あそこはケルニクス元帥による策謀で、現在は民衆からの反発も強く、各地で暴動が起きております。むしろ応援が欲しい立場でしょうね」

「ふふん!」


 コルラン宰相の説明を聞いた俺はドヤ顔で胸を張った。


 なんか知らないけれど俺のインテリジェンスな行動がパラデインの利になったらしい。やったね!


「それと西に潜伏中の旧ティスペル王国貴族残党にも不穏な動きが見られます。メノーラ領も同様です。そちらにもリューンの使者が赴き、水面下での協力を促したようです」

「ティスペルの亡霊どもが……大人しくしておけば良いものを……!」


 ティスペル王国を潰した際、私腹を肥やしていた貴族たちのほとんどを降格処分、または追放処分としていた。


 そんな不穏分子たちを敢えて放置する事により、潜在的な敵を一纏めにして分かりやすくなるよう誘導していた。それの方がこちらも監視が楽だからだ。


 また、当時は不穏分子どもを王国最西端の方に追いやっていたので、対帝国への壁役としても有効であったのだが…………帝国が衰退した今、連中を放置するメリットは少なくなっていた。


 これ以上の放置はむしろ厄介事の種になるかもしれない。そろそろ狩り時だろうか?



「放棄したヨアバルグ要塞の今の持ち主は?」


 以前に制圧した帝国のヨアバルグ要塞。


 立地的にも優れた要塞らしいが、俺たちが制圧した時には見方が少人数しかおらず、維持するのも困難だったので放棄したのだ。


「ジーロ王国です。奴ら、ヨアバルグ要塞がもぬけの殻だと知って、嬉々として帝国領に侵攻して他の勢力を出し抜き、要塞を手に入れたようです。あの周辺の領地もジーロ軍が支配しております」

「ファッキューですの!!」


 ジーロと聞いて女王様がお怒りだ。



 過去に俺たちは北ユルズ川を通行しようとした際、ジーロ王国側に許可されず追い返された事がある。その報復としてステアは大量の杭を神業スキルで生み出し、俺たちの手で川を通行できないよう塞いでしまったのだ。


 それが原因なのかは知らないが、ジーロ王国側の潮対応はそれ以降も続いていた。ジーロ王国は何かと俺たちパラデインに対して面倒な外交を行ってくるのだ。


 そんなジーロをステアは毛嫌いしていた。



 珍しく怒っている女王に一同は冷や汗を流した。


「ケリー! その要塞、さっさと潰して欲しいですの!」

「OK!」


 あの要塞か。熊さんが居ないのなら、俺一人だけでも潰せそうだ。


 ただし、事後処理は除く。


「お、お待ちください! 元帥殿には大事な防衛任務がございますぞ!」

「女王様。お気を静めになってください! ジーロ側に攻め入る正当な理由がこちらにはございません!」

「むううううう……っ!」


 家令ヴァイセルや家臣たちの言葉でステアはようやく気を静めた。


「ごほん! 失礼、取り乱しましたの。続きをどうぞですの」

「は、はい……」



 それからもリューンへの対応について話し合われたが、一番の争点となるのは兵数不足の問題であった。



「やはり、何時も数の不利を強いられますね」

「これでも相当、兵士を増やしたのですが…………」

「領土が広い分、兵も砦もまだまだ足りておりません!」


 ここに来てパラデイン王国が急成長を遂げてきた弊害が出てきた。


 経済的には急速成長しているのだが、国の規模に対して明らかに人材の方が不足していた。質の高い優秀な士官や将校は一定数確保できたものの、実際に現場で動く末端の兵士たちが足りなさ過ぎたのだ。


 我がパラデイン王国では徴兵制度を行っていない。今の王国軍は主に志願兵と犯罪奴隷、傭兵団で構成されている。


 他所の国では、食うに困った者たちが仕方なく兵に志願するのが常だが、パラデイン王国は経済的に豊かになり、物価も安定している。その為、命を懸けてまで兵になろうとする気概のある者が減少傾向にあるのだ。


 だが、それでもまだ緩やかな減り方なのだ。


 他国と違い、パラデイン王国では身分階級による差別を行っていない。平民でも活躍次第では士官や将校に成り得るのだ。積極的に戦場に出たがる野心を持った者も一定数はいた。兵の質は向上し続けていた。


 だが、それでも領土面積に対して兵数が少な過ぎるのだ。



「また何か策を打たねばなりませんね」


 そう呟いた宰相であったが、彼自身の表情には余裕が見えた。


「宰相。何か奇策でもおありですの?」

「いえ、今回は奇策を用いません。あちらが同盟を組むのなら、こちら側も同盟相手を探せばいいのです」

「「「おお……!」」」


 至極真っ当な宰相の考え方に、何故か古株の者ほど感心してしまった。


(俺たち……ずっと奇策ばかりだったからなぁ)


 そうしなければ生き残れなかったのだから仕方がない。


「その同盟相手とは?」

「明日、女王様の知人が貴族の方をお連れになって城にご到着になると伺っております。なんでも彼はエビス商会コーデッカ支部の責任者だとか」

「なるほど! イートンさんとお連れの方にコーデッカ王国との橋渡しをお願いするのですわね!」

「その通りでございます」



 イートンの手紙によると、今回の来訪には本人だけでなく、この機にパラデイン女王にお目通り願いたいと伯爵家当主も同行しているようなのだ。イートンとその伯爵を通してコーデッカ王国と同盟を結ぼうと宰相は考えているのだろう。



「可能ならば、もっと近い国とも協力関係を結びたいのですが……」

「コーデッカの他に近辺で同盟相手となると……レイシス王国、ザラム公国、後は……バネツェ王国くらいですな」


 レイシスとザラムは俺もこの前行ってきたばかりの場所だ。どちらも帝国南部付近にあるがパラデイン王国領とは残念ながら隣接していない。


 対帝国路線では協力してくれるだろうが、相手がリューン王国となると、一体どうなるか…………



 そして一番の問題は内海の向こうにある島国、バネツェ王国だ。



「バネツェ王国には大きな借りがありますの……」


 正確に言うと、その借りは俺たちのではなく、ティスペル王家……いや、サンハーレ子爵家の借りだ。



 俺たちが国を興す切っ掛けとなったサンハーレのクーデター事件。その発端はエイナル・サンハーレ子爵の暴走から始まった。


 彼は自分の欲望の為に国を帝国に売り渡そうとし、その裏工作で無辜の民にまで手を掛けたのだ。


 その手を掛けた民というのが、バネツェ王国から交易でやって来ていた船の乗員、乗客たちである。それを知ったバネツェ王国はサンハーレとの取引を止め、それ以降もティスペル王国――――パラデイン王国とは不干渉を貫いたままだ。



「あの国へ同盟提案をするとなると…………相応の対価や条件を要求されますよ?」


 当時の責任者や実行犯は全員処刑しているが、向こうからしたら、こちら側に落ち度があると指摘するだろう。しかも、このタイミングでの同盟提案だ。足元を見られるに決まっている。


「…………分かっておりますの。でも、国や民の安全には変えられないですの」


 金銭で済むのなら問題無いのだが、果たして……



「その交渉役、私にお任せ頂けないでしょうか?」


 名乗り出たのは王家の家令兼政務官のヴァイセルである。


「ヴァイセル殿が? しかし、貴方は……」


 コルラン宰相が言い淀むのも無理はない。


 コルランはヴァイセルの経歴を資料で読んで知っていたからだ。ヴァイセルが元は、全ての元凶であるサンハーレ子爵家の執事長である事も……


「当然、あちらも私の素性を知れば納得しないでしょうな。ですので……交渉の際、私はこの首を差し出す覚悟ですぞ!」

「だ、駄目ですの! ヴァイセル!!」


 慌ててステアが止めに掛かるもヴァイセルの表情は穏やかだ。


「ステア様。私には償いきれない罪がございます。どうか、その過ちを少しでも拭えれば……」

「それでも! 死ぬことは絶対に許しませんの! 使者として同行することは認めますの! ですが……ヴァイセルは絶対に生きて帰ってくるですの! 貴方の首の代わりに街の一つ二つを寄越せと向こう側が要求するのなら、絶対に首を縦に振るですの!」

「へ、陛下……私にそんな……勿体なきお言葉……っ!」


 自分に街以上の価値があると告げられると、ヴァイセルは感動して涙を流した。


「でしたら、ヴァイセル殿には私が同行します!」

「アマノ伯爵……」


 同行を買って出たのはセイシュウであった。


「ヴァイセル殿のお覚悟、感動致しました。私は元々、ウの国の者。旧ティスペルやサンハーレとは縁も所縁もございません。今回の交渉役として一番適しているかと」


 セイシュウの提案に文官たちは頷いた。公式上では、当時の彼はサンハーレとは一切関係の無い人物となっているからだ。



 ここでセイシュウに抜けられるのは戦力的には痛手だが、彼ならヴァイセルの護衛役にも適任である。それにセイシュウは伯爵家当主という身分なので、使者としても十分以上だ。



 結局、バネツェ王国への交渉団には責任者をセイシュウ、その付き添いにヴァイセル以下複数名の文官を付けることになった。



 議論は他の件へと移る。



「トライセン砦とリプール港の様子は?」


 どちらもリューン王国との不平等条約で奪われた場所だ。


「連中、戦争の準備で最近は忙しそうです」

「軍港と化したリプールでは、既に多くの軍船が停泊中です」



 リプールは北のコスカス領に近い僻地の港町だ。その港をリューンに差し出したのだ。


 最早あの町はリューン王国の飛び地である軍港と化しており、元々住んでいたパラデインの国民たちは他所の領地へと避難していた。



「サンハーレに停泊中であるリューンの軍船も徐々に姿を消しつつあります。恐らく港に船が完全退去した段階で宣戦布告がなされるでしょう」


 サンハーレに割と近いトライセン砦をリューンに明け渡している為、最寄りの港としてサンハーレ港にもリューンの軍船が定期的に停泊していた。物資を運ぶのは陸路よりやはり海路の方が優れている為だ。


 サンハーレの港にリューンの軍船が停泊する件に関してパラデインの民たちは良い顔をしなかったが、パラデイン兵たちが厳戒態勢でリューン兵の動きを見張っているので、今のところ街中で大きな問題は起きていない。


(ま、水面下でお互いにやり合っているけれどね)


 リューン側はこちらにバレないようサンハーレ近郊を調査し、いくつかの小さな兵站や塹壕をこっそり築いていた。


 その全てをシノビ衆に調査され、工作されているとは露知らず……



 そして肝心のトライセン砦だ。


 我がパラデインの最南端にある砦で、相手が陸路から攻めてくるとなると真っ先に前線基地になるのがトライセン砦だろう。


 その砦にもリューン軍が駐留しているが、こちらが砦を明け渡す前、各所に隠しカメラを設置しておいたのだ。


 このファンタジー世界にとってはオーバーテクノロジーである小型カメラの存在をリューン側はまだ気付いていない。


 今もカメラは起動状態であり、シノビたちにモニタリングされながら秘密の軍事会議を行っているのだから滑稽だ。お陰で開戦がまだ少し先である事は分かっている。


 情報戦ではこちらが圧倒的に優位を保っていた。だが、のんびりもしていられない。


 砦にいるリューンの将校たちによると、本国から指示がき次第、即開戦となるらしい。なので、こちらも今の内に準備を進めているのだ。



「サンハーレの避難状況は?」

「もうほぼほぼ終わっております。港町には既にダミーの市民しか暮らしておりません」


 トライセン砦から入手した情報によると、敵の第一目標はサンハーレのようだ。


 リューン軍はまず、飛竜や軍艦を使ってサンハーレを徹底的に爆撃し、港町を即座に占拠して前線拠点にする計画らしい。リューンから陸路での侵攻だと距離がある為、あちら側はどうしても足掛かりとなる港を必要としているのだ。


 それはリプール港の方でも代役は可能だが、出来れば相手の中心部近く……しかも、女王が居るであろう現在の王都サンハーレ港が一番望ましい目標地点なのだ。


 だが、既にステアは完成されたケルベロス城に移住している。サンハーレ市民もケルベロス城下町へと避難済みだ。後は遷都の件を公式発表すれば、ケルベロスは何時でも王都として機能できる状態となっていた。


 それを知らないリューン軍は必死になってサンハーレを襲撃するわけだ。



「リューンが攻めてきた段階で、ダミー市民である兵たちも撤退させ、その際に街に罠を仕掛けます」


 ちょっとしたプチ焦土作戦を行うつもりであった。


 焦土作戦と言っても、自らの手で街の建物を焼いたりはしない。サンハーレは何れ取り戻す予定の街なので、必要以上に破壊行為はしたくないのだ。ほんの悪戯程度の工作をするだけである。



 飲み水用の生活用水路と下水を繋げ、相手の腹を壊させる


 わざと壊れやすい武具を武器屋などに残しておく


 置いていった作戦資料に一部、欺瞞情報を載せておく


 ……そんな些細な悪戯ばかりだ。



(街を焼いたり毒を散布したりして死の街にしちゃったら、後で復興が大変だしね)


 今回のテーマは“クリーンにゲスい作戦”だ。下水なだけに……



 後は俺たち兵士の配置場所だが……これが一番厄介だ。


 リューン単独なら南側かケルベロス周辺の防衛だけで済んだのだが、周辺国からも攻めてくるとなると、またしても精鋭たちを各地に分散せねばならない。上手く配置しなければ何処かが穴になって内部深くまで侵攻を許すことになる。



 軍議は長時間行われた。








 翌日、セイシュウとヴァイセルたち派遣団を乗せた船が港を出向し、入れ替わるようにイートンたちコーデッカ王国からの馬車隊がケルベロスに到着した。


 船でそのままサンハーレに行くことも物理的には可能なのだが、今は川の途中にあるトライセン砦にリューン軍が駐留していた。コーデッカ王国の船と言えども、この状況だと拿捕される危険性もある。開戦が近い状況なので砦付近の通行を避けた形だ。


 イートンたちは旧帝国領近くに設けた桟橋に船を付け、そこから馬車でケルベロスまでやってきた。




「いやぁ、皆さん! お久しぶりですな!」

「イートンさん! おひさ~!」

「お元気そうでなによりですの!」


 女王に対する気さくな挨拶にイートンを知らない者たちは戸惑っていたが、ステア本人は気にした素振りを見せていなかった。護衛のエータ近衛隊長も苦笑しながらそれを容認していたので、他の者は怒るタイミングを逸してしまっていた。


 代わりにイートンの隣にいる男が声を掛けた。どうやら彼がコーデッカからの使者である貴族のようだ。


「い、イートン殿! 女王陛下に、そんな無礼な……」

「問題ありません、伯爵様。このお方は近しい者に畏まられる方がお嫌いな性分なのですよ」

「ですの」

「は、はぁ……」


 あくまで気を許した者にのみ許される行為だ。


 これでもステアは一国の女王。無礼な真似をすれば、首は飛ばずども叱咤される。


「初めまして、女王陛下。私はコーデッカ王国からの使者、フィリップ・ブルレックと申します」

「アリステア・パラデインですの。コーデッカからの長旅、ご足労でしたの」



 互いに簡単な挨拶を済ませたところで、イートンがフィリップ氏の事を紹介した。



「この伯爵様は出来た御仁ですぞ! 私が悪徳貴族の対応に手を焼いていたところ、フィリップ殿にご助力頂いたのです!」


(へぇ? 貴族にしては見どころあるな!)



 フィリップは代々続く伯爵家の当主だ。その性格は真面目と、貴族にしては珍しい善人タイプのようだ。


 コーデッカ王国内では“人徳のフィリップ”として有名な人物らしい。



 イートンの紹介にフィリップは気恥ずかしそうにしていた。


「私は生まれながらに領地と部下に恵まれましたからな。他の貴族たちのように無理な徴税をせずとも、領民や家族たちを十分に養っていけます。それ故の結果でしょう」


 フィリップが謙遜しながら語るとステアは微笑んだ。


「まあ! 本当に貴族には珍しいお考えの方ですのね」


 他の貴族だったらそうはならない。


 金を持って生まれた貴族は更に大金を欲するだろうし、広い領地を持っているのに更に他所の土地を欲しがるものだろう。


 人間の欲望というのは留まる事を知らないのだから……


 確かにフィリップの考え方は、為政者側の視点からすれば、領地と民をより豊かにする為の向上心が欠けていると指摘されるのかもしれない。


 だが、貴族の大半は己の事のみを考える愚か者ばかりだ。それを考慮すればフィリップの方が遥かにマシな貴族だと言えよう。



 イートンは更にフィリップを褒め称えた。



「つい先月も、エビス商会の繁栄に嫉妬する商会のスポンサー貴族がちょっかいをしてきましてな。報復に贋作商品を売り付けて大赤字にさせてやりましたぞ! その時にもフィリップ殿にはお世話になりまして――――」


 …………ん?


「いやいや。イートン殿の手腕も見事なものですよ。我が領地に隣接する性悪クソ子爵の嫌がらせに困っていたので、仕返しに違法奴隷娼館を潰してやったのですが……エビス商会の支援がなければ、もっと時間が――――」


 んん? 所々で不穏な単語が飛び出てくるのは気のせいだろうか?


「いやいやいや。フィリップ殿の方がやり手ですぞ! 悪徳貴族の噂を聞くと、すぐに刺客を放って調査し、裏でこっそり誅殺を――――」

「いやいやいやいや。イートン殿こそ、違法奴隷の話を聞きつけると、悪徳商会を経済的に追い詰めてから、後でじっくり――――」


「「「…………」」」


 俺たちはイートンとフィリップからお互いの武勇伝を聞かされたが、そのどれもが過激な内容であり、法的にもスレスレ……いや、かなりアウトな部分も含まれていた。


 イートンは過去に、悪徳貴族の策略で奥さんと息子さんを奴隷にされ、両方とも亡くしている。その恨みからか、彼は違法奴隷を毛嫌いし、悪徳貴族、悪徳商人相手には平然と犯罪行為で思い知らせる。


 だが、どうやらフィリップの方も同じ闇を抱えているようで、二人はコーデッカ王国内で悪徳貴族や商人を相手に大立ち回りを行っているようだ。


“人徳のフィリップ”とは、彼に恨みを持つ悪徳貴族たちが皮肉を込めて付けた二つ名ではなかろうか?



(((とんでもねえ奴らが来た……!)))



 パラデインの面々は一癖も二癖もありそうなイートンとコーデッカからの使者に冷や汗を流すのであった。

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