第103話 おじさん
その噂の出店とやらは、ラルフの経営する“懐旧の台所”の裏通りにあった。
「うわぁ……凄い行列……!」
「本当に人気のようですの!」
普段は通行人が少ない筈の裏通りだが、出店から20メートルほど先の距離まで人の列が出来ていた。
ここに並んでいる全員が、噂のスープを飲みに来たのだろう。
列に並ぶ前に、まずは出店の様子を見てみた。
「……本当にスープだけ売ってるのか」
「しかも、席が少ないですの」
出店はカウンターが備えられており、そこに席が四つ設けられていた。店主の男が調理している正面に座って食べるの形式のようだ。
その出店には幾つかの注意書きが掲載されていた。
“メニューは野菜スープのみ”
“お持ち帰りは不可”
“その場で食べ、食器を全て返却する事”
“おかわり希望の際は最後尾に並び直す”
と書かれていた。
早速、俺たち七人も最後尾へと並ぶ。
俺は兎も角、ステアやエータにクーなど、裏通りには似つかわしくない装いの女性陣を見て、他の客たちが困惑していた。
「なぁ、あれって……」
「女王様ぁ!?」
「まさかぁ……他人の空似だろう……だよな?」
「いや、でも……一緒にいるのって“双鬼”じゃね?」
何人かには身バレしたようだが、俺たちは何食わぬ顔で順番を待ち続けていた。
席が四つずつなのと、テイクアウト不可だと聞いて、もっと待たされるかと思いきや、意外に列の進みは早かった。
その理由は俺たちの順番が近づくにつれ判明した。
「う、うめぇ……!」
「こんなスープ……食べた事ねえよぉ!!」
客たちの誰もがそのスープの美味さに目を見開き、夢中になってあっという間に完食してしまうのだ。ほとんどの者がおかわりを要求するも、注意書きにもある通り、その際は最後尾へと並び直しとなる。
客たちは急いで最後尾へと並び直す。これなら一杯飲むだけなら早いだろう。
お陰でもうすぐ俺たちの番だ。
店を切り盛りしているのはたった一人のようで、人の良さそうな中年のおじさんが一生懸命スープの仕込みを行なっていた。
具材の野菜を細かく刻んでいるのを見たラルフが愚痴を零していた。
「あーあ。ハスラをあんなに細かく刻みやがって……。あれじゃあ、折角の食感が台無しだぞ!」
ハスラとはシャキシャキした歯応えのある野菜のことだ。
俺もハスラは細かく刻むより、大きい方が好みである。
その他にもラルフはおじさんの調理法に次々とダメ出しをしていた。
具材の切り方、野菜を煮込むタイミングに火加減などなど…………
(……あのスープ、本当に美味いのか?)
だが、ラルフの指摘とは正反対に、俺たちの前に並んで食している客たちは全員満足そうに……いや、寧ろ食べ足りないとばかりに惜しみながら席を離れて行った。
ようやく俺たちの番がきた。丁度四つの席全部が空いたので、俺とステア、ネスケラに五郎の四人が同時に席へ着く。
「やぁ、いらっしゃい! 君たちは初めてだね」
「ん? おっさんは全員の客の顔を覚えているのか?」
「ハハッ! 大体はね。記憶力には自信があるのだよ。それに……君たちのような個性的な子たちは忘れないさ」
確かに……俺と五郎はこの辺りだと珍しい黒髪だし、ステアにネスケラもかなりの美少女だ。というか、先ほどから他の客たちに注目されて目立っていた。
「はい、スープだよ。それと……これを使って飲んでね」
おじさんは妙にキラキラした黄金のスプーンを四つ俺たちに手渡した。裏通りの出店には不釣り合いな、豪華な装飾が施されたスプーンだ。
言われた通り、そのスプーンを使ってスープを一口飲んでみた。
「「――――まずいっ!?」」
「「――――美味しい(ですの)!!」」
「「「「…………え?」」」」
俺とネスケラはあまりにも強い苦みに眉を潜めていた。思わず本音の感想が出てしまうくらいには苦かった。
一方、ステアと五郎は真逆の反応で、相当に美味しかったのか、俺たちの感想を聞いて驚いていた。
「え? ステア、これマジで美味いの!?」
「とっても美味しいですの! ケリーたちと出会って、初めて食べたあの夜のラーメン! その次くらいには美味しく感じますの!」
それは……相当だなぁ……
あの日、久しぶりに食べたカップラーメンに俺は感涙したほどだ。
「ええ!? これ、絶対不味いって!! うぅ、苦いよぉ……!」
試しにともう一口飲んでみたネスケラだが、やはり相当苦みがあるのか、涙目になっていた。
俺もネスケラと同じ感想だ。
「? こんなに美味しいですのに……妙ですの……」
ステアは首を傾げながらも、スープの残りを美味しそうに食していた。
五郎も「これ、かなり美味いですよ!?」と問題なくスープを飲み続けていた。
二人はあっという間に完食してしまった。
「君たち二人とも……このスープは苦かったのかな?」
心配してくれているのか、店主のおじさんが俺とネスケラに尋ねてきた。
「うーん……おっさんには悪いけれど……」
「ボクたちの口には合わなかったみたい……」
「ふーむ……」
おじさんは興味深げに俺とネスケラの顔を交互に見ていた。
そしてその後、おじさんはとんでもない発言をしてきたのだ。
「君たち、もしかして転生者じゃないかな?」
「なぁっ!?」
「え!?」
何故、それを知っているのか……?
俺たちが転生者で地球時代の記憶を有しているという情報は、本当に一部の身内くらいにしか話していないのだ。
主にエビス邸に寝泊まりしている者やアマノ家の一部、あとはホムランくらいが知っている情報であった。
俺は目の前の男を少しだけ警戒しながら尋ねた。
「……おっさん、一体何者だ?」
「私かい? そうだねぇ……私はみんなの“お父さん”ってところかな? ほら、店名をご覧よ」
出店の看板にはこの世界の言語で”父”を意味する言葉――――英語で表現するのなら“ファーザー”と表記されていた。
「お父さん? 店主の親父って意味か?」
「そんな感じだね。みんなに笑顔になって欲しくて、こうやって出店を開いてスープを振るっているんだよ」
この出店のスープは行列ができるくらいに美味しいと評判だ。なのに値段の方は銅貨1枚とかなりの破格だ。
少なくとも金儲けの為に営業しているのではないのだろう。
「だから君たちが美味しくないと感じたのなら、それは私の落ち度だね。是非、償わせて欲しい」
おっさんはそう言うが、さっきから肝心な俺の問いには答えていない。
「何故、俺たちが転生者だと思ったんだ? おっさんの正体は?」
「うーん、今はお客さんを待たせているしね……。また今度、その時に全てを説明しよう。明日、また会えるかな?」
どうやらこの場では話したくなさそうなので、俺とおっさんは明日、別の場所で再び会う約束を取り付けた。
その後、エータにクーとラルフもスープを飲んでみた。
やはりラルフには不味く感じたようで眉を潜めていたが、俺やネスケラのように店前で「不味い!」と言わないだけ大人だろう。
エータとクーの二人はとても美味しそうにスープを飲んでいた。
この違いはなんだ?
(まさか……転生者だけが不味く感じるのか!? ……いや、それは変だ。五郎は「美味しい」って言っていたし……)
色々と謎は残るが、それも明日、彼から直接聞き出せば、何かが判明するかもしれない。
翌日、ステアたちは政務が忙しくて来られなかったが、俺とネスケラ、五郎にラルフの地球人組と、話を聞いて興味を抱いたソーカとイブキが一緒に付いて来た。
待ち合わせの指定場所は“懐旧の台所”だ。
今日までは店も休みらしく、ラルフが提案してきたのだ。
人によって味に落差のあるスープの正体がラルフはかなり気になる様子だ。
時間になると昨日の男がやって来た。
「やぁ、こんにちは。あれ? 昨日とは違う女の子たちがいるね」
「昨日の三人はちょっと仕事が忙しくてね。この二人は野次馬で付いて来ただけなんだが……問題ないか?」
「うん、私は平気だよ。そうか、女王様ともなると、やはりお忙しいのだろうねぇ」
こいつ……ステアの正体を知っているのか!?
俺たちの緊張度が少しだけ増したが、それを感じ取った男は慌てて弁明した。
「ああ、要らぬ警戒をさせてしまったね。彼女らの事は、昨日君たちが去ったあと、他のお客さんが教えてくれたんだよ。“双鬼”ケルニクス君。君の事もね」
「……成程。それで? 結局アンタ、何者なんだい?」
見たところ、この男はあまり強そうに見えない。
だが、俺たちを転生者だと見抜いたり、怪しいスープを赤字覚悟で振る舞ったりと、色々行動がおかしい怪しい人物なのだ。
夕べ、エビス邸の皆と話し合って出た予想で一番多かったのが、この男の正体が他国のスパイではないかという意見であった。
それを見極める為にも、イブキが同行を申し出てきたのだ。
「だから、私は皆の“お父さん”さ!」
「……ほぉ? ここまで勿体ぶって、今更そのふざけた回答か?」
俺が睨みつけると男は慌てだした。
「ま、待ってくれ! “お父さん”が気に喰わないのなら、せめて“おじさん”で……! うん、そっちの呼び方の方が、私と君たちにはピッタリかもね!」
「……
俺がそう告げると、密かに同行していたクロガモとハガネの二人が音もなく姿を現した。
突如現れた黒装束のシノビを見て、男がギョッとした。
「わ、分かったよ! まずは君たちが一番気になっている事から説明するよ!」
そう告げると男は所持していた荷袋から真っ白な薄い箱を取り出した。
その動作にクロガモたちが少しだけ警戒するも、男は何食わぬ顔でその箱を開けた。
その中には……黄金のカトラリーセットが収まっていた。
黄金のスプーンが四本、フォークも四本、ナイフが二本だけ収納されていた。
「これは?」
「これは全て神器だよ。昨日、君たちが使用したスプーンは“五味の匙”という」
「「「神器!?」」」
おいおい……最近、神器をよく見るなぁ……
男は黄金のスプーンを一本取り出して見せた。
「この“五味の匙”の効果は、料理の味を望むままに変化させられるんだ。甘味、酸味、塩味、苦み、うま味を自由に弄られる。まぁ、それを知らずに使用すると、大抵は本人が無意識に望む最高の味へと変化するけどね」
成程……だから黄金のスプーンを使わせて客たちにスープを飲ませていた訳か。
評判の美味しいスープの正体が、まさか神器のスプーンによる効果だったとは……
「でも、それっておかしいよね? ボクたち三人は美味しく変化するどころか、とっても不味かったよ!」
ネスケラが指摘すると男は申し訳なさそうな表情をした。
「それに関しては私の料理の腕が下手だったからだね。本当に済まなかったね。あれがあのスープ本来の味だったんだよ。苦かっただろうけれど、栄養は豊富の筈さ」
美味しいスープを振る舞いたいという気持ちはあるようだが、結果嫌な思いをした俺たちに男は謝罪した。
だが、俺たちが一番聞きたいのはその事じゃない。
「……なんで、ボクたちだと味が変化しなかったの?」
「それは……恐らく君たちが転生者だからだよ」
男の返答にネスケラは首を傾げた。
「……仮に転生者だとしたら、なんで味が変わらないの?」
「そうか。神器に触れる機会がないと君たちにも知らない情報だったかもしれないね。君たち転生者には、基本的に神器が効かないんだよ。だからスープを飲んだ反応で私も気付けた」
「「「――――っ!?」」」
それは衝撃の新情報であった。
(俺たち転生者には……神器が通用しない?)
思い返してみると、心当たりがあった。
ステアが身に付けている“
その神器の指輪を入手した当時、面白がった団員メンバーたちが自身の年齢を変化させて楽しんでいたが、何故か俺一人だけ全く反応しなかったのだ。
(あん時は魔力が全く無いからだと勘違いしていたなぁ……)
あと、最近ではハインベアー戦も事例に上げられる。
俺は破壊不能とまで謳われた神器の籠手をぶっ壊した。
これは俺のパワーと剣の頑丈さが勝ったからだと思っていたが、もしかしたら俺が転生者であるが故、神器の破壊不可という特性も弱まっていたのではないだろうか?
(クラッド鋼……関係なかったじゃん!?)
いや、あの剣も十分素晴らしい性能なのだ。ただ、その担い手が、神器の特性が通用しない俺であったが為の大金星だったのだろう。
「そっか! じゃあ、おじさんがあの黄金のスプーンでスープを振る舞っていたのは……!」
何かに気付いたネスケラが声を上げた。
「うん。お察しの通り、私はスープを振る舞いながらも、君たち転生者を探していたんだよ」
「「「――――っ!?」」」
そうか!
その味が変化する神器“五味の匙”を使って苦いスープを振る舞い、それを飲んだ者の反応を見て転生者をあぶり出していた訳か。
「だから不味かったのかよ、あのスープ……」
ラルフが悪態を付くと男は首を傾げた。
「おや? もしかして君も転生者だったのかな? まさか三人も見つかるとは……!」
表立って苦いと口にしなかったラルフには気付かなかったようだ。
だが……三人だけではない。
「ちょっと待って下さい! それじゃあ、僕は!? 僕もスープが美味しいと感じたんですよ!」
大声で尋ねたのは五郎であった。
そう、彼もステアたち同様、スープが美味しいと言っていた一人であった。
「ほぉ? 君も転生者なのかい?」
「そ、そうで……っ! いえ……正確には違います。僕は…………」
五郎は俺たちの方を見て一瞬迷った後、言葉の続きを口にした。
「……僕は恐らく転移者……召喚者です」
「――っ!? そうか……君は召喚された勇者なんだね?」
「…………はい」
俺たちが転生者であるのと同様、五郎が勇者である事はごく一部の者にしか知らされていない機密情報だ。五郎の存在が公になれば、教会がどの様な行動に出てくるのか未知数であるからだ。
それをこの正体不明の男に話して良かったのだろうか?
ここまで話した以上、この男をタダで開放する訳にはいかない。クロガモとハガネは鋭い視線を男に向けていた。
だが、男はかなりの胆力を持っているようで、二人のシノビの視線に気付きながらも全く意に介さなかった。
「ふむ、だとしたら合点がいくね。勇者は正確に言うと転移ではないんだよ」
「て、転移じゃ……ない? だとしたら、やっぱり転生……?」
「それに近いが……勇者召喚では先に身体の方をこちらの世界で用意して、その中に異界の魂を召喚しているらしいんだ。外見は前世の姿を模しているけれど、より戦闘向きの身体が与えられている」
「――――っ!?」
つまり、五郎の身体は姿形こそ前世のそれだが、勇者用の強い身体という訳だ。その中に五郎の魂が召喚されたという訳か。
「勇者はその恩恵で強い肉体と魔力を得るが、同時に魂にまでも影響を与えているようでね。純粋な転生者とは違って、神器を使いこなせるし、その効果もしっかりと影響をする」
成程。
俺やネスケラ、ラルフといった天然の転生者と違って、五郎はこの世界の人たち寄りなのだ。
性能こそ凄まじく、神器までも扱えるが、逆に神器の影響も受けるという理屈のようだ。
(どっちが良いのか分からんなぁ……)
俺たちは神器を無効化する代わりに、その恩恵にも授かれないということだ。神器の種類によってはメリットもデメリットも存在する。
「自棄に詳しいな。貴様……本当に何者だ?」
これまで静観を決め込んでいたイブキが問い質した。
今まで男が提供してきた情報はシノビ衆でも知り得なかった新事実である。それを知っていた謎の男にイブキも警戒していた。
この男は、一体……
「うーん、名を名乗ってもつまらないことになるだけだし、私のことは、やはり“おじさん”でいいさ。君たちに危害を加えるつもりは毛頭無いし、それが可能だとも思わない。それに……むしろ私は君たちに協力したいんだ!」
「協力? 名も名乗らない者を信用しろと?」
「信用を得る為だよ。適当に偽名でやり過ごすことも可能だったけれど、私はそうしたくないと思っている。君たちと友好関係を築いても、最後の最後で嘘がバレて関係が壊れるのは嫌だからね」
ふーむ、そう来たか……
しかし、頑なに名を名乗らない事から察するに、目の前の男は相当な有名人なのだろうか?
「スープ屋の店主は副業で、本来の私の職業は神器の研究者なんだ。こと神器に関しては私以上に知っている者はこの世に居ないだろうね。そっちの方面ではかなりの協力が出来るけれど、どうかな?」
「……見返りは? 俺たちに協力して、おじさんは一体何を得るんだ?」
俺が尋ねるとおじさんはニッコリとほほ笑んだ。
「世界平和だよ。その為に、君たちに是非協力して欲しい事がある。だが……今はいい。時期を見計らって私から改めてお願いをする。その時になって、君たちが協力しても良いと思ったら手を貸して欲しい」
なんとも曖昧で妙な協力要請だ。それ、最悪こっちが一方的に破棄出来るんじゃね?
探るように俺は尋ねてみた。
「内容次第では今すぐ手を貸すけど?」
俺が尋ねるとおじさんは珍しく表情を曇らせた。
「……済まないね。今は言いたくないんだ。君たちが私を信用できないのと同様、私の方もまだ君たちを信用しきれていない。だが、その辺りはきっと時間が解決してくれるだろう。そう……まだ、猶予はある筈だ」
「…………?」
それはとても思いつめた表情であった。
「師匠。この人、仲間に加えるんですか?」
「明らかに怪しいぞ! 危険だ!」
ソーカはどちらでも良さそうだが、イブキは反対意見なようだ。
「でも、色々と神器関係に詳しそうだし、お得じゃない?」
「どんな要求をされるか分からんがな。世界平和などと……胡散臭いにも程がある!」
確かに怪しい。
勇者召喚にも詳しそうだったし、教会関係の人だろうか?
だが、そっち方面で怪しい人材なら既にもう抱えてしまっている。元聖女であるヤスミンだ。
最近シノビ衆から得た情報なのだが、彼女は“狂聖女”という二つ名持ちの元聖女だったらしい。
随分前に行方不明となっていたらしいが、“狂聖女”の
「もう今更だろう。胡散臭い奴、一杯いるし」
賞金首に元怪盗、亡国の姫に落ち延びた武家一派、それに勇者と聖女と……バラエティに富んだお仲間たちだ。
「お前を筆頭にな!」
「お前もその愉快な仲間の一人だぞ」
「私をカウントするな!」
「二人とも、変わってますからねぇ」
「「ソーカ(姉さま)が言うな!」」
もう、考えるのも面倒だ。
「おじさん。アンタを一旦信じる事にする。ただし! 裏切った場合は容赦しないぞ!」
「うん、勿論だとも!」
謎のおじさんが仲間に加わった。
「さっそくだけど、一つ協力出来る事がある。君は剣を使うんだろう? それなら、良い武器がある場所を教えようか?」
「……なに?」
丁度、今の俺は剣の片方を失っていたところだ。
(まさか、そんな事も知って……いや、偶然か?)
俺が視線を鋭くしているとおじさんは困惑していた。
「もしかして不要だったかな?」
「……いや、何でもない。それで、良い武器って……まさか神器か?」
気を取り直して俺が尋ねるとおじさんは頷いた。
「ご名答。レイシス王国方面で最近活発になっている山賊団が、とある神器の剣を持っているらしいんだ」
「とある山賊団?」
そんな連中が随分御大層な物を持っているのだな。
「ああ、そうだよ。その名も“魂魄剣”……天下の三神剣とも呼ばれた聖剣の一つさ。現在所持しているのはヤマネコ山賊団頭目のドルニャン!」
おじさんの告げた名に一同は驚くのであった。
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