第4章 東部動乱編

第49話 サンハーレの現状

 港町サンハーレで起こった政変は、翌日になって領民たちの間にも噂が拡がり始めた。


 誤った情報の拡散を防ぐべく、詳細こそ省かれはしたが、行政側からもある程度の情報開示を行なった。



 その内容は、以下の通りだ。



 領主が国に謀反を企て、サンハーレを帝国、独立国へ売り渡そうとしていた事。


 小鬼騒動も領主が主犯であり、冒険者ギルドを始めとした一部勢力が共謀していた事。


 一連の事件が判明し、領兵団はエイナル・サンハーレ子爵と共謀者全ての身柄を拘束し、後日その処遇を決める事。


 現在は臨時代行官が領主の業務を引き継ぎ、現行政はイデール独立国、ゴルドア帝国と徹底抗戦する方針である事。



 以上の事が領民たちに告知されたのだ。



 これには町の人々も様々な反応を見せており、領主邸周辺には不安になった町の人々が押し寄せていた。


「売国奴を許すなー!!」

「イデールに帝国まで……勝てるわけがない!」

「降伏するんじゃなかったのか!? 領兵団はどういうつもりだ!」

「代行官のステアとは、一体何者なんですか!?」

「もう……サンハーレはお終いだぁ……!」


 まさに阿鼻叫喚といった感じだ。


 ステアの素性はまだ公表していない。ひとまずイデール軍を退けた後、タイミングを見計らって大々的に発表するつもりだ。何も成し遂げていないまま、他国の姫がいきなり統治すると宣言しても、おそらく領民たちは誰一人納得しないだろう。



 イデール軍の第一陣を軽々と退けたアマノ家部隊は、一旦町の近くまで引き上げさせた。だが、次の戦はそう簡単にいかないだろう。数もあちらが圧倒的優勢な上、こちらが交戦する姿勢を見せたことで、イデール側も油断せず、いよいよ本気でぶつかってくる筈だ。


 それに加え俺たちは、陸上部隊だけでなく、海からやってくる戦力にも警戒しなければならない。イデール独立国にも少ないながらも港町は存在し、当然軍船なども保有しているそうだ。この港町を占拠して海路での補給地点にと企てているのなら、船の数隻くらいは既に準備しているのだろう。


 よって、俺たちは海岸線の警戒にも当たらなければならなかったのだが、“不滅の勇士団アンデッド”のメンバーで海に詳しい者はいなかった。アマノ家も内陸にあるウの国出身だった為、やはり当てにできそうにない。


 そこで、港町なら専門家がいるだろうと考えて領兵団の海上隊へ訪ねようとしたのだが、そこで問題が生じた。そこのトップである海上隊領兵長並びに分隊長など、多くの者がサンハーレ卿の共犯者であったのだ。他国からの民間船や商業船を海賊と称し拿捕してきた実行犯がそいつらだったのだ。


 海上隊は地上隊ほどの規模は無かったので制圧自体は容易であった。しかし上層部が共謀罪で軒並み捕縛された為、海上隊に残されたのは僅かな人員だけとなってしまった。


 そこで、残った中で一番階級が高い海上隊班長を話し合いの場に招致したのだ。




 今、元領主が利用していた執務室の中には、多くの者が集まっていた。


 まずは領主代行のステアに護衛のエータと従者のクーだ。


 傭兵団団長である俺と副団長エドガー、Aランク冒険者という立場でフェルも参席。また、町一番の大商会となったエビス商会会長のサローネとその補佐であるルーシアに、何故か特別顧問としてネスケラも同席していた。


 アマノ家側からは当主セイシュウとシノビ集副頭目クロガモの二人だけが参席している。


 サンハーレ側からは領兵団唯一の領兵長となってしまったオスカーとアミントン分隊長などの幹部たち、執事長ヴァイセルを始めとした役人など、行政を司る者たちが大集結していた。


 更に、その場に呼ばれて来ていた海上隊班長のゾッカが加わった。


 ゾッカはいかにも海の男といった風貌であり、喋り方も荒々しく、海兵隊員というより、まるで海賊のような出で立ちであった。


 その彼が、海上部隊の既存戦力について説明をしていた。



「――つうわけで……正直、今の人員じゃあ中型船を二隻運用するのがやっとですぜ」

「うーん、海戦に持ち込まれると危ないですわねぇ」


 これにはステアも苦慮していた。


 元々、彼女には軍を統率するだけの知識は無い。今は参謀としてエータや領兵長がサポートしているが、ここに居るほとんどの者が大規模な戦争で指揮した経験など無いのだ。


 この中で一番指揮能力に長けているのは、やはりアマノ家当主のセイシュウであろう。そんな彼が中心になって発言をしていた。


「地上戦ならば問題ないでしょう。馬の数と矢が少し不足しておりますが……軍団規模で攻められても、まず負けはしないと思います」

「「「おおおおっ!」」」


 セイシュウの言葉に領兵団の幹部たちから感嘆の声が上がった。軍団規模となると、この世界では大体3から5個師団並みの戦力、兵員数にして凡そ1万以上の大群となる。


 その大群相手でも防衛は可能だとセイシュウは宣言したのだ。だが、その頼もしい発言の割にはセイシュウの表情が暗かった。


「ですが、長期間は無理です。やはり数の差は侮れませんし、どのみち食料が不足しているのでしょう? ここの領地は、どれだけ自給自足できるのでしょうか?」

「はっきり申し上げますと……かなり深刻ですな」


 セイシュウが尋ねると、それに答えたのは執事長ヴァイセルである。


 ヴァイセルは領兵団から取り調べを受けた結果、領主の悪事に加担した形跡が全く確認されず、寧ろ領主側から厄介者扱いされていた事実が判明した。ここ最近はエイナルから疎ましく思われていたようだ。


 晴れて無罪となったヴァイセルをそのまま重用することにしたのだ。


 元々領主の手が届かない……というより、サボっていた雑事はヴァイセルが全て熟してきたので、今はステア付きの執事長として彼女の補佐を務めていた。


「海産物は豊富ですが、それ以外の食糧はほとんど他領からか、バネツェ王国の商会などから仕入れておりました。ただ、現状はどちらも難しいでしょう……」


 今は国内が戦時下であり、安全な販路が確保されていなかった。仮に他の領地との交易が可能だったとしても、何処の町も戦争の影響で物価が急激に高騰している。食糧なんかは大金を吹っ掛けられるに決まっているし、そもそも売ってすらくれない可能性が非常に高い。


 何処の領地も自分たちの身を守るのに手一杯な状況なのだ。


 また、海外から船で交易に訪れていた商船も数日前から全く来なくなってしまった。それを不審に思っていた執事長であったが先日、遂にその原因が判明した。間違いなく、あの馬鹿領主のやらかしだ。


 他国の商船を襲って民間人を殺害していたなどと知られれば、当然向こうも交易を止めるだろうし、下手をすればバネツェ内海の向こう側にある島国、バネツェ王国すらも敵に回しかねない行為だ。


 本当にろくでもない領主であった。今は捕らえて牢に入れているが、早く天誅を下してやりたくてうずうずしている。


「特に穀物類が深刻です。早急に対応せねば、これからは毎日、魚だけの食事になるでしょうな」

「わたくし、海の幸は好きですが、パンを食べられなくなるのは困りますの……」


 緊急時にも関わらず、どこかズレた感想を述べたステアに、長年サンハーレを支えてきた役人たちは不安そうにしていた。


 だが、次に放った彼女の言葉が彼らを驚かせた。


「分かりましたわ。不足している食料はわたくしが何とかしますの。サローネ副会長、必要な金額を算出して用意してくださいな」

「かしこまりました、ステア様」

「「「――っ!?」」」


 一体どんな手法で用意するのか文官たちは想像もできず、何人かはステアに説明を求めるも、彼女はその質問に対して、はぐらかして答えなかった。


(ステアの神業スキルは、まだ隠したままの方がいいだろうからな)


 こうなってくると、ステアのスキル【等価交換】の重要度は増すばかりだ。金さえ用意すれば不足している物資はほぼ何でも調達可能なのだ。しかも、この世界には存在しない物品だけでなく、同じパンや調味料ひとつとっても、地球産の高品質なものを取り寄せられる。


 その恩恵ある限り、こちらに兵糧攻めは無意味だ。ただし、お金は必要だ。



「海の警備はどうするんですかい? 全く無視する訳にもいかんでしょう?」


 海上隊のゾッカ班長に尋ねられたステアは、隣のお子様椅子に座っていたネスケラの方を見た。


「ネスケラ、どうでしょう?」

「んー、この町が保有している軍船のスペックは? どのくらいの大きさで、どの程度の速度が出るのかな? それと、一隻で必要な人員の数は何人?」


 10才にも満たなそうな幼女から口早に尋ねられたゾッカ班長や、それを聞いていた周りの者たちは仰天していた。何故、話し合いの場に幼女がいるのか誰も分からなかったのだが……そんな中での質問攻めである。


 それでもゾッカは根が真面目なのか、律義に答えてくれた。


「あー……中型だと全長30メートルくらいで、速さは……知らんな。そんなの、誰か計測したことあんのか? まぁ、闘気使いが泳ぐよりかは明らかにはえーが……風や波の状況次第だろうな。人員は最低80人くらい欲しいところだが、優秀な闘気使いが多ければ、その分必要な動員数も減らせるぞ。だが、闘気使いを増やせば、船の速度も比例して上がるぜ?」


 部分的には雑ではあるものの、割と丁寧な答えが返ってきた。


 だが、それを聞いたネスケラは逆に驚いていた。


「えー!? そんなに大人数が必要なの!? ……あ、そっかぁ! もしかして、ガレー船を使ってるのかぁ。オールを漕ぐ人数が要るんだよね? 班長さん、ちなみに敵の船はどうやって沈めるの?」


 またしても幼女からの質問にゾッカは困惑しながらも応じた。


「へ? まぁ、火矢を放つとか……神術士に砲撃させるとかがセオリーだなぁ。稀に敵船に乗り込んでの白兵戦なんかも起こるが、大抵はその前にどちらかの船が沈んじまうな」

「ふむふむ……そんな感じね」


 ネスケラが頷きながら考え事をしていると、周囲からは彼女を馬鹿にする声が出始めた。


「ふん。そんな事も知らない幼子に、何が分かるのか……!」

「大体、この重大な話し合いの場に、何故子供がいるのです!?」


 そんな文句も意に介さず、ネスケラは何かを思いついたのか口を開いた。


「うん、やっぱり機動力重視で行こう! ステア様、これ買ってー」


 ネスケラは何やら記入したメモ用紙をステアに見せると、それを受け取った彼女は妙な動作をし始めた。何もない虚空に目を泳がせて、時折指を動かしたりしていたのだ。


 これには事情を知らない一同、なんとも言えない表情でステアを見守っていた。


(スキルで商品を物色中か。ネスケラの奴、船を注文したのか?)


 一体幾らになるのか想像も付かない。



 しばらくするとステアは突如顔をしかめた。


「……ネスケラ。この船、一隻で金貨50枚くらいはしますの」

「でも、速度は多分ガレー船の倍以上速いよ。小回りも利くし、人員も一隻最低一人でも十分動かせるしね!」

「な!?」

「そんな船が存在するのか!?」

「たった一人の漕ぎ手だけで……倍の速度だと!?」


(うん、ネスケラが要求した船は絶対漕ぐ必要ないと思う……)


 しかしネスケラの奴、中古のボートでも頼んだのだろうか? 金貨50枚ということは、大体日本円に換算して75万円相当の代物となる筈だが……そんな金額で船を買えるものなのだろうか。


「執事長さん。金貨50枚で一隻と想定して、どの程度資金をご用意できますの?」

「軍船の購入ですか……。今は財政状況も厳しく、見たことも無い船を購入するのは……」


 執事長は渋い表情を見せていた。どうやら軍船の購入には反対の立場らしい。だが、それを見兼ねたゾッカが待ったをかけた。


「そりゃあねえぜ! 仮にそこのおチビちゃんが言ったとおりの性能なら、いくらでも用意してもらいたいですねぇ! 様子見で最低5隻は買いましょうや!」

「……3隻までです。それ以上は、性能を見てから判断し、追加購入としましょう」

「いよっしゃあ!!」


 班長が嬉しそうにガッツポーズをしていた。これでボート? の購入は決定された。


「しかし、たった3隻増えた程度で意味があるのですかな?」


 文官の一人が口を挟むと、ゾッカは自信ありげに答えた。


「イデールの連中も大した船なんか持っちゃいねえ。その高速船とやらで攪乱できれば……まぁ、何とかなんだろう!」

「何とかしてもらわねば困るがな……」


 オスカー領兵長が一言述べるも、海上戦に関しては専門家であるゾッカ班長に一任しているので、彼はそれ以上口を挟まなかった。



「そのぉ……こう言うのもなんですが……ステアさんがお連れになられたウの国の皆さんは、どの程度信用して宜しいのですかな?」


 思い切って一人の文官が尋ねてきた。


 実際それは、この場にいるほとんどの者が気にしていた事だ。ウの国の武人は勇猛さで名が知れているが、自国以外の戦争には全く介入してこなかった。それが何故、ウの国との縁も薄いティスペル王国勢力に加担するのかが理解できなかったのだ。


 アマノ家を代表してセイシュウがその質問に答えた。


「ふむ、祖国に何か意図があって我々が参戦していると思われているのでしたら、それは杞憂であると宣言しておきましょう。我がアマノ家は既にウの国とは縁を切っております。そして今は、そこにおられるステア様に忠義を捧げております。ご理解頂けたでしょうか?」

「「「…………」」」


 未だステアの素性を知らない者たちは、一体彼女は何者なのかと今度は不思議そうな顔で彼女の方を見つめていた。旧サンハーレ側で事情を知っている三人の内二人、執事長と領兵長がすかさずフォローした。


「宜しいではありませんか。どの道、我々には選択肢など有って無いようなものですからな」

「執事長のおっしゃる通りだ。まずはイデール軍を何とかせねば、サンハーレに未来など無い」


 二人の言葉に他の役人たちも一先ずは納得してくれたようだ。


「今度の防衛戦は領兵団からも当然人員を出す。全体の総指揮は……セイシュウ殿、貴殿にお任せできないだろうか?」


 実戦経験はアマノ家が上だと判断したオスカー領兵長は、意外にあっさり指揮権を委ねようとするも、それをセイシュウは断った。


「いえ、私はまだ身体が完全に癒えていない身です。それに……他に適任者がおります」

「……適任者?」


 セイシュウの言葉に、この場にいる者たちはざわつき始めた。


「オスカー領兵長殿やセイシュウ殿意外に、兵を統率できる者なんているのか?」

「“疾風”殿では? Aランク冒険者のフェル殿なら文句は無いでしょう!」

「いや……それだと傭兵が付いて来ないだろう……」

「じゃあ、一体誰が……?」


(他に適任なんているか? まさかネスケラとか言い出さないよな?)


 そう思っているとセイシュウは何故かこちらをガン見していた。


「彼です。“双鬼“ケルニクスが指揮を執るのなら、我々アマノ家も文句はありません」

「「「ええええええええっ!?」」」


 役人たちと一緒に俺も叫んでしまった。


「か、彼はまだ鉄級中位の傭兵でしょう!?」

「いや、先の小鬼討伐の任務で鉄級上位に昇級したらしい。だが……」

「それでも鉄級ですぞ!? 最低ランクの鉄級! これじゃあ冒険者だけでなく、傭兵どもも納得せんでしょうが!」

「いや、それがどうも……小鬼討伐時も、彼が傭兵たちを率いていたらしい」

「はて? 双鬼? どこかで聞いた二つ名だが……」


 案の定、俺が指揮官と聞いて異議を唱える者が多く出た。


 見兼ねた俺は小声でセイシュウを問い質した。


「おい、どういうつもりだ? しかも二つ名までバラしやがって!」

「遅かれ早かれ、ケルニクス殿の存在は世に知れ渡る。それに、私はステア様だけでなく、貴方にも忠誠を捧げているのだ。丁度良い機会だし、ここらで実戦を指揮するのも悪くないと思うのだが?」

「……俺、戦場のイロハも知らないぞ?」

「我々がサポートする」


 いくら説得してもセイシュウは折れそうになかった。


(んー、まぁ聞いた感じだと、そこまで強そうな相手ではなさそうだしなぁ……)


 イデール軍単体で見るのなら、ティスペル軍よりも弱いらしい。ただし、一領地に過ぎないサンハーレ領兵団よりかは、数も質も圧倒的に上だ。


「分かった。総指揮は俺が引き受けるが、領兵団はオスカー領兵長さんが、アマノ家はセイシュウ……は、まだ出られないか。代わりに、あの古風で強いおじいちゃん侍が束ねてくれ」


 俺が指名するとオスカーとセイシュウが同時に頷いた。


「心得た」

「ゴンゾウの事だな。伝えておこう」


 周囲はまだこの人選に納得していないようだが、戦闘のプロである領兵長とセイシュウがあっさり了承した為、これ以上この場では追及してこなかった。ただし、彼らの表情は不満そうであった。


(ま、結果を出して黙らせる他ないよなぁ……)



 その日の話し合いはここまでで、俺たちは一度エビス邸へと帰宅した。




 ステアは代行官となったので、領主の館に泊まることも許可されているが、俺たちと一緒にホームへ戻って来た。やはり安全面を考えるのならエビス邸の方が断然良いだろう。


「いちいち通うのも面倒ですわね。ここを領主館にしては駄目ですの?」

「うーん、あまり外部の人間をここに招き入れるのもなぁ……」

「だったら乗り物でも購入したら? 自動車なら町まであっという間だよ!」

「確かあのトラックのお仲間ですの? でも、お金を使いすぎてしまいましたの」


 今回は戦争に向けての新兵器や食料品、更には船までも購入する予定で、今まで溜め込んでいたエビス商会の資金もかなりの勢いで目減りし続けていた。イートンさんが見たら心臓発作で倒れないか心配だ。


 そんな俺たちのやり取りを傍で聞いていたサローネが自信満々に告げた。


「大丈夫です! 領主と共謀していた武器商人や漁業組合の利権も全てエビス商会が頂きましたので、まだまだ余裕です!」

「これでエビス商会は名実ともにサンハーレで一番の大商会だね!」


 妹のルーシアも笑顔で答えた。


 この二人、一見温厚そうに見えるが、イートン曰く、やることは結構えげつないとの評価だ。成功する商人向きの気質ではあるそうだが、一度敵対した相手には容赦がなく、叩き潰した商会の利権やら資産やらを根こそぎ搾取していくらしい。


 イートンは相手を生かさず殺さずといった長期的な商いをモットーにしているそうだが、彼女ら姉妹は、まず相手の顔面に鉛玉ぶち込んでから取れるもの全て取って再起不能にする、超攻撃的な短期決戦の商いに長けていた。


 その電光石火の行動力は、このような非常時にこそ向いているのかもしれないが……


(しかし、一体何がこの姉妹をそうさせるのやら……)


 山賊に酷いことをされた過去故の変貌か、それとも先天的なものだったのか……今ではそれも分からず終いだ。


 ちなみに、相手が悪徳貴族や違法奴隷商人だった場合、イートンさんもネジがダース単位で外れて暴走を引き起こす。その所為で俺たちは短期間滞在していたザイツ王国で酷い目に遭ったのだ。


(当分、あの地には戻れないだろうな……)


 イートンに金を毟り取られた貴族たちは数知れない。



 とにかく、今回はその姉妹の功績により、今までエビス商会でも手出しできなかった鉱石類の採掘権取得や、魚介類専門の卸業者などを傘下に納めることに成功した。


 悪徳商人が押さえていた大手武具屋を買収できたのが非常に大きい。これで我が傭兵団も武器補充には困らなくなったが、現在は戦時中の為、どこの流通網も麻痺している有様だ。


 これらの利権を生かすも殺すも、今後の戦果次第となるだろう。








◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


別作品

「80億の迷い人 ~地球がヤバいので異世界に引っ越します~」

https://kakuyomu.jp/works/16817330662969582870


こちらは不定期20:00更新で連載しております

宜しかったら読んでみてください!

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