第31話 異世界の美少女忍者

 無謀にも我が本陣へ向かってきた傭兵たちを、私は全て返り討ちにした。不意打ちならともかく、来ると分かっている雑兵の相手など容易かった。


 だが、この連中は敵の第一陣に過ぎない。シノビ集頭目である妹からの報告だと、傭兵部隊は三つに分かれてこちらへ進軍中のようなのだ。


 これで、あと二つ……



「セイシュウ様、次の連中は我らにお任せを……」

「このままですと、若様一人に手柄全てを持っていかれちまいそうだ」

「む、そうか?」


 コウノ殿から大任を任され、少々張り切り過ぎてしまったようだ。


(……ま、このレベルの傭兵たちなら問題ないだろう)


 家臣にも功を得る機会を与えるのが当主の務めだ。アマノ家には古くから仕えている優秀な闘気使いが数多くいる。その所為か些か血の気の多い者もいるが、先走るような愚かな真似をする連中は、全て父の代で戦死を遂げていた。


(今の家臣たちに浅慮な者はいない。そう無茶な事もすまい)


 そう考えた私は二つ返事で彼らを先に行かせ、残った者たちで砦を攻め落とす準備に取り掛かった。今回はそちらがメインであり、傭兵の始末は前哨戦に過ぎない。



 だが、しばらくすると事態は急転する。


 傭兵を蹴散らしに向かった筈の家臣たちが逃げ帰って来たのだ。しかも、戻ってきていない半数以上の兵は戦死したか相手に捕らわれたと言うのだ。


「これはどういう事か!?」


 私が問い質すと家臣は頭を下げながら謝罪の言葉を口にした。


「明らかにレベルの違う手練れが何人もおりました」

「折角お与えいただいた活躍の場で、真に不甲斐ない始末……」

「申し開きもございません!」


 アマノ家の家臣たちが、こうも後れを取るとは……


 事前情報では、相手はほとんど鉄級の傭兵で構成されていた筈である。


 私はすぐに事情を伺おうと、戻ってきたシノビたちにも問い質した。


「一体何があった!? ……いや、待て。イブキは……妹はどうした?」


 動揺していた為、生き残りの中にイブキの姿が見当たらないことに、私は遅まきながら気が付いた。


「そ、それが…………」

「此度の敗戦はシノビ集に責があるとイブキ様が……」

「イブキ様は数人のシノビを率いて連中に挑むつもりのようです」

「な、何だって!?」


 浅慮な者がいた! しかも、まさかの我が妹であった。


 妹のイブキは普段こそ冷静沈着な性格だが、偶に熱くなりすぎる傾向がある。今回はその悪癖が出てしまったのか、完全に引き際を見誤ってしまったようだ。



 私はすぐに家臣たち全員に進軍の指示を出した。








 俺たち”不滅の勇士団アンデッド”が任務を続行すると伝えると、他の傭兵団たちから待ったの声が掛かった。


「無謀だ! 我々だけで攻めるなど……戦力が足らな過ぎる!」

「もう奇襲なんて不可能だ! 今頃向こうは陣を固めているか、こちらへ向かう算段をしているぞ!」


「そんなのは百も承知だ。だが依頼主はアンタらじゃない。俺たちは勝手に行動させてもらう。そっちはどうするんだ?」


 俺はこの場で唯一銀級である傭兵団”バンガード”のリーダー、ネルジに尋ねた。


「……敵が強すぎる。我々も命が惜しい」


 ”バンガード”もここでリタイアするようだ。それも一つの手だろう。


「そうか。そこで提案なんだが……俺たちが捕らえた捕虜を、ここで見張っていてくれないか?」

「なに?」


 半数は殺してしまったが、これだけの手練れは惜しいと思ったので、何人か生きたまま捕らえておいたのだ。だが、ちょっと張り切り過ぎて捕虜の人数が多くなってしまった。いくら何でも、こいつらを引き連れたまま戦いに赴く訳にはいかない。


「ここでこいつらの面倒を見てくれるのなら、仮に俺たちが奇襲に成功した暁にはアンタらも協力してくれたと依頼主に報告できる。俺たちが死んだか逃げたと判断したら、その捕虜は置いて撤退してくれて構わない」

「うーむ……。湿地帯なら、馬で追われる心配も少ないか……いいだろう」

「よし、契約成立だ。ただし、捕虜への暴行は一切なしだ。後発組の傭兵たちにも、そう伝えておいてくれ」


 これで捕虜の心配はなくなった。


 改めて俺たち”アンデッド”だけで敵の本丸に攻め入る事が決定した。足手纏いが居ない分、自由に動けてかなり楽だ。


 メンバーは俺、エドガー、フェル、ソーカ、シェラミーとその手下が三人。合計8人の精鋭たちである。そのほとんどが好戦的なメンバーだ。


「ちょっと! さすがに私たちでも本陣を固められたら襲撃は厳しいわよ?」


 その中でも唯一常識人なフェルが忠告してきた。


「その場合は適当に何人か倒して注意を引き付けるだけに留めておこう。奇襲しろとは言われたが、本陣を落とせだなんて言われてないしな。どっちにしろ、出来るかどうか、一度様子を見に行こうぜ?」


 仮にこの捕虜たち以上の強者がうじゃうじゃ居るのだとしたら、俺たちも逃げ帰るしかなくなる。だが、一度も本陣を見ずに撤退しては依頼主クライアントに弁明のしようもない。


 俺たちは引き続き、湿地帯を進み始めた。








 ぬかるんでいる大地を進むこと十数分後……


「……おい」

「……ああ」


 エドガーの言葉に俺は軽く相槌を打った。


(確実に誰か潜んでいるな。視線を感じるが……位置までは特定できない)


 おそらく生き残りのシノビだろう。気配を隠すのが相当上手いようだが、完璧に潜伏するには、この面子相手では荷が重すぎたようだな。


「そこ!」


 索敵能力に長けているフェルが左前方の木の上に矢を射った。


「くっ!?」


 シノビは慌てて防ぐも、今の狙撃で武器を破損したみたいだ。


「あそこか!」

「もらった!」


 シェラミーの手下たちが急行しようとするも、それをフェルが制した。


「油断しないで! 他にも五人、潜んでいるわ!」

「「――――っ!?」」


 おっと。どうやら今の男は囮だったようだ。フェルに指摘された動揺からか、微かに一瞬、複数の気配を感じ取った。


(俺もアイツだけしか分からなかった……)


 何とも巧妙なトラップだ。見抜いたと思って潜伏者に近づいたら、更に他の五人から奇襲を受けていた訳か……



 最早これでは不意打ち不可能だと思ったのか、残りのシノビたちも姿を現して襲い掛かってきた。全部で六人。気配を殺すのは上手いようだが、数も実力もこちらの方が上だろう。


「くそ!」

「王国の犬どもが!」


 悪態をつきながらシノビたちがこちらへ何かを投げつけてくる。手裏剣やクナイだ。しかし、先ほどのような大人数での乱戦ならいざ知らず、真正面から投擲してくるだけなら余裕で対処可能だ。


「こいつらも捕虜にする! 殺すなよ!」

「舐めるな、若造が!」


 シノビが刀を抜いて襲い掛かってきた。シノビは屋内戦でも戦えるようになのか、どいつも短刀を使用していた。だが悲しいかな、間合いの短い得物は俺が最も得意とする相手であった。こちらは小剣二刀流なので、ソーカのような頭のおかしい速さの者でなければ、手数でも力でも敗北する要因は皆無だ。


(わざわざ向こうから近づいて来てくれるしね)


 予想通り、相手はわざわざこちらの間合いへと入り込んだ。シノビは先手必勝でなんとか活路を見出そうとするも、その攻撃を俺は悠々と防ぎ、空いた剣の腹で相手の胴を叩きつけた。


「ぐふっ!?」

「よし、シノビをもう一匹ゲット!」


 こいつら全員捕らえてエドガーたちのように仲間に加えられたら、超つよつよ諜報部隊を設立できそうだ。やったね!


 他の者もほぼ一対一で戦っていたが、どこも実力的に問題なさそうだ。シェラミーの手下たちも三人一組で戦わせているので、後れを取る心配はないだろう。


 そう思っていたのだが、一組だけ激戦を繰り広げている者がいた。まさかのソーカである。


「なんじゃ、ありゃあ……」


 ソーカと戦っていたのは少女のシノビ……いや、くノ一になるのか?


 恰好は忍び装束そのもので、くノ一のような色気は皆無の装いだが、頭を覆った布の隙間から見える顔は美少女であった。しかし、驚くのはそこではない。その美少女忍者は、あのソーカ相手に一歩も引けを取らず戦っているのだ。


「おいおい……あいつ、何者だ?」


 エドガーも無事シノビを一人捕らえたのか、俺と同じく見物モードになっていた。そのエドガーも二人の戦闘に驚き、思わずぼやいていた。


 あのスピード同士の戦いだと、援護射撃もちょっと難しい。


 速力はソーカの方が僅かに勝っているようだが、美少女忍者もかなり素早い。彼女から繰り出されるトリッキーな攻撃にソーカは苦戦を強いられていた。彼女は短刀だけでなく、手裏剣にクナイ、鎖鎌などを駆使していたが、とりわけ厄介なのが神術であった。


「ハッ!」


 美少女忍者が短く声を発すると、掌から衝撃波が繰り出された。あれは恐らくステアやクーと同じ無属性の神術だろう。だたし、ステアのように破壊力重視の術ではなく、速度や手数に重きを置いた、ただ相手を吹き飛ばすだけの神術だ。


 その衝撃波がソーカの接近を阻んでいた。


「くっ!」

「このぉっ!」


 少女同士の苛烈な戦いである。ソーカは何とか近づこうと試みるも、相手の間合い管理も絶妙で、なかなか懐に飛び込めない状況だ。


(本来は【風斬かざきり】で勝負が決まっているところだが、俺が『生かして捕らえろ』って言っちまったからなぁ……)


 あの技は殺傷能力が高すぎるので、殺さず無力化するのには向いていない。



 これはもう少し長引くかと思いきや、ソーカは木の枝に捕まると、なんと足蹴りで風圧を闘気に籠めて繰り出したのだ。


「うぁっ!?」


 思いも寄らぬ攻撃に美少女忍者の鎖鎌が吹き飛ばされる。


(あれは!? 俺が前に見せた【覇掌はりて】のアレンジか!?)


 脚で風の刃を放つ【蹴撃しゅうげき】では殺傷能力が高いので、掌底で発生した風圧を飛ばす技を足技で応用してみせたのだ。威力は【風斬り】より遥かに劣るが、意表を突くのにはもってこいの技だ。


 相手に僅かな隙が生じ、それを逃すほどソーカは甘くなかった。遠距離足蹴りを放った反動で枝を一回転し、その勢いのまま相手の方に飛び込む。蹴り技を使うと足が止まってしまう弱点を見事にカバーした器用な立ち回りだ。


 ソーカは一瞬で相手との距離を詰めると、その両手を抑え込み、腹に膝蹴りをかました。


「かはっ!?」


 相手も闘気で防御したみたいだが、体格的にはソーカの方が上で、組み付かれてしまっては最早どうしようもあるまい。ソーカは見事、美少女忍者を捕獲する事に成功した。


「師匠、やりました!」

「うむ」


 弟子の成長に俺は偉そうに頷いて応えた。たいして教えている訳ではないというのに……



 他の全員も無事に相手を無力化できたようだ。総勢六名の忍者を新たに捕虜とした。




「く、殺せ!」


 頑丈な鎖で縛られた少女が開口一番にそう言い放った。


(うわぁ、初めてその台詞をリアルで聞いたわ。前世の記憶ないけど)


 しかし、縛られた少女からその台詞を吐かれると、罪悪感が半端ないな。


「別に取って食おうって訳じゃない。君たちは捕虜として丁重に扱う」

「王国の犬になんか、話す事は何もない!」


 ああ、成程。尋問されると思っているのか。


 確かに色々と聞きたい事はあるが、無理して尋ねて自害されても面倒なので、それは無しにした。


「いや、それも必要ない。大人しくしていれば危害を加えないと保証しよう」

「…………」


 当然向こうは信用していないのか、胡散臭そうにこちらを見ていた。


「おい、ケリー。どんどん捕虜増やして、どういうつもりだ?」

「うーん、仲間にできないかなーと思ってね」

「こいつらをか!? できるのか?」

「それは無理なんじゃ……」


 エドガーに続き、フェルも眉を顰めた。


「ふざけるな! 我がアマノ家は代々ウの国の重鎮であるコウノ家に仕えてきた武家だ! 私たちが大人しく軍門に下ると思うなよ!」

「あ、君たちはアマノ家という武家の者なんだな」

「…………あ」

「「イブキお嬢様!?」」


 どうやらこの美少女忍者……イブキという名前らしいが、部下も含めてあっさり情報を漏らすポンコツなようだ。


「お、おのれぇ……! 誘導尋問をするとは……!」

「え、ええ…………」


 何故か責任転嫁された。


「でも、本当にこの先どうするつもりだ? こいつら引き連れて、このまま攻め込むわけにはいかねえぞ?」

「あ、そっか……」


 そこら辺、全くの無計画であった。忍者という希少な人材に飛びついて、考え無しに行動してしまった結果だ。これではまるで、捨てられた子猫を考え無しに拾ってくる子供と同じである。


「うーん。一旦引き返して、この子らも傭兵たちに預けておくか……」

「そうするしかないわね」


 少し手間だが来た道を引き返そうと思った瞬間、大勢の者が近づいてくる気配を感じた。


「お、どうやらまた新手だぜ?」

「ええ!? これ以上、捕虜を増やすのもなぁ……」


 かといって今更ジェノサイドをするのも彼女らの手前、少しだけ気が引けてしまう。仮に同じアマノ家とやらの手勢であったのなら、生かして捕らえるか、金銭とかで捕虜交換できるか交渉してみよう。



 しばらく待っていると、これまで以上に多くの兵士たちが現れた。中には先程交戦して逃げた兵士たちの姿もあった。恐らくこれが襲撃してきた敵の本隊全員なのだろう。


「兄さま!」

「え!? お兄さんがいるの?」


 捕虜である女忍者イブキがまたしても情報をくれた。


「イブキ!? それに他の者も……! おのれ、傭兵め……!」


 彼女の兄だと思われる青年は、他のウの国の兵士よりも煌びやかな武装をしていた。立ち位置から察するに、どうやら彼がこの隊のリーダーのようだ。


「我が名はアマノ・セイシュウ! コウノ家にお仕えする武の一門だ! 王国の傭兵どもよ! 命が惜しければ、捕虜を置いてここを去れ! 今なら見逃してやらんでもないぞ!」


 堂々とした口上に俺はつい聞き入ってしまったが、自分の立場を思い出して我に返った。俺はこの傭兵団のリーダーなのだ。つまり返答するのも俺の役目となる。


「えっとぉ……『見逃してやらんでも』って随分曖昧な表現だけど、逃げている間に後ろからブスリって……しない?」

「するか!? そんな卑怯な真似!!」


 アマノ・セイシュウと名乗った青年が咄嗟に反論した。


「だったら、ハッキリ『見逃す!』って言ってくれればいいのに……」

「ぐぬっ!? ええい! 揚げ足を取るな! それで、返答はどうなのだ!」


 ここで俺たちが撤退したとなると、どうなるだろうか?


 やはり任務は失敗で、報酬金額を貰うどころか、その勢いで砦すらも落とされかねない。


 何より後ろにいるシェラミーから「逃げるなよ?」という無言のプレッシャーを感じた。この戦闘狂はまだまだ戦い足りないみたいだ。彼女は先ほど、イブキと戦いたそうに二人の戦闘をガン見していたくらいなのだ。


「断る。むしろ人質を解放して欲しければ、そっちが本陣まで引け!」


 俺はそう告げると、剣先を女忍者イブキの喉元に突きつけた。


「んなっ!?」

「貴様っ!」


 ここで戦っても捕虜が増えると面倒だし、かといって彼女の前で兄貴たちを殺しても目覚めが悪い。ならば人質として有効そうな彼女を利用して一旦仕切り直しにしたかった。


「な、何という卑怯者だ……!」

「恥知らずにも程があろう……!」

「武人の誇りすらも持たぬのか……傭兵め!」


 案の定、侍擬きたちからは総スカンだ。いや、俺の仲間たちの何人かも少し引いていた。


 だが、連中の発言には少々納得がいかない。


「卑怯者って……多勢に無勢で攻めてくるそっちは卑怯じゃないのか?」

「な、何を言う!? 数で攻めるのは戦の基本ではないか!」

「そうだ! 人質を取る貴様らと一緒にするな!」


 俺もそう思う。


 でも、だからって人質は駄目なのは理解できない。これが何の罪もない一般人を盾にするなら卑怯者の屑野郎だが、こいつらは俺たちに襲い掛かってきた敵兵という立場なのだ。


「数が少ない方が策を練るのは基本なのでは? それとも、そっちは数が多いから『正面から正々堂々勝負しようぜ』って意味なの? だったら最初からそう言えばいいじゃないか。いちいち騎士道精神を掲げず、『自分たちの土俵で戦ってください』って懇願でもすれば?」

「んなぁ!?」

「貴様ぁ!! 我々を侮辱する気か!!」

「小僧……! 最早命が要らぬと見える……!」


 うーん、売り言葉に買い言葉で、つい火に油を注いでしまった。これは誘導失敗かな?


「……どうあっても、捕虜を解放する気はないのか?」


 静かに怒気をみなぎらせながらセイシュウが尋ねてきた。これが最後通牒だろうか。


「……仕方ない、折衷案だ。俺たちと勝負しろ! 俺たちと一対一で戦って勝てたら、一勝につき10人ずつ捕虜を解放する」

「……何? 10人ずつ、だと?」


 この場には六人の捕虜しか見当たらず、セイシュウが怪訝そうな顔をした。


「兄さま。我々以外にも多くの家臣が既に捕らえられているのです!」

「んー、合計で約30人以上かな? つまり、そっちはたった4勝すれば、捕虜を全員解放する。勿論、この妹君は最後の景品だがな」

「くっ!?」


 景品扱いされたイブキがこちらを鬼の形相で睨んできた。美少女に睨まれ、俺の繊細な心が壊れそうだが、ここは我慢だ。決して変な性癖に目覚めた訳ではない。


「……そんな勝負、こちらが受けるとでも?」

「左様! こんな奴らの妄言に誑かされてはなりません!」

「しかし、イブキお嬢様に万が一の事があれば……」

「あんな傭兵たちを信用しろとでも?」

「勝負なら断然こちらが有利! 全員討ち倒して、イブキお嬢様も仲間もお救いしましょうぞ!」


 あっちの方はだいぶ意見が割れていた。


 このまま数で押し切ろうと主張する者と、俺たちとの勝負を受けて、堂々と捕虜を取り戻そうと提案する者たちで分かれているのだ。


「あ、ちなみにそっちが負けたら一人ずつ捕虜になって貰うからね? 全員捕虜にしちゃえば、そっちも砦に攻めることができないでしょ?」

「な、なんだと!?」

「断れば……この妹ちゃんがどうなっても知らないぞぉ?」


 俺は煽る様に少女の頭をポンポンと軽く叩いた。


「貴様! どこまでも……!」


 どうやら彼女は人質としての価値が高いようなので、俺は悪党さながらの下種な笑みを浮かべてみた。そしたら思った以上の効果があった。


 追加ルールをしたにも関わらず、アマノ家さんたちは全員やる気を漲らせていた。


 しかし、こちらの言い方も悪かったのだろうが、人質のイブキは俺の事をゴミ虫でも見るかのような目で睨んでいた。



 アマノ家たちは少しの間議論し、俺たちとの勝負を受諾した。

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