第57話★
選挙期間が始まって三日後、今日は生徒会長選挙の中間支持率が発表される。新聞部が発行した学内新聞に各候補者の支持率が表示されることになっていた。
細谷先輩や候補者である櫻木さん、そして彼女の補佐である俺は、日曜日であるにもかかわらず、生徒会室で待機していた。
しばらくして、生徒会室に牧原さんが発行されたばかりの学内新聞を持ってやってくる。
「叶耶ちゃん、学内新聞を持ってきたよ」
牧原さんは持ってきた新聞を長机の上に置く。
俺たちはその一枚の学内新聞をみんなで覗き込むようにして見た。
「……」
「……」
生徒会室に沈黙が訪れる。
少しして最初に口を開いたのは細谷先輩だった。
「あまり状況は芳しくないようですね……」
各候補者の支持率は左のようになっていた。
『二年A組 櫻木叶耶―――――二十五・八%
二年G組 佐藤大樹―――――五%
二年E組 龍泉寺翔―――――三十一・二%』
櫻木さんは龍泉寺に支持率で上回られていた。想定していたよりも龍泉寺の支持率が高い。やはり七海が言っていたように、現生徒会に不満を持っている層をうまく取り込んでいるのだろう。
心配になって櫻木さんを視線の端で捉える。
しかし、彼女は、
「そうですね。でも、これで確定なわけではありません。それに誰にも支持に回っていない人がまだ四割近くもいます。まだまだ、挽回も可能なので、私たちは今できることを地道にやっていくだけです」
そうやって笑いながら言う。
そんな彼女に、
「か、叶耶ちゃんなら大丈夫。今からでも十分に挽回できると思う。だ、だって、あんなに素敵な政策だもん」
「そうですね、私も櫻木さんなら生徒会長になれると思います。なんたって、私たちの自慢の後輩なのですから」
牧原さん、細谷先輩が励ましの言葉を送る。
俺も櫻木さんが前向きな様子であることに安心した。ここで、落ち込んでしまっては、今後の選挙活動に影響が出かねない。
「それでは、そろそろ演説の方に行ってきますね。桂くん、今日もよろしくお願いします」
「もちろん」
そうして、俺たちは今日も演説に繰り出した。
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