第5話★

 ピンポンパンポーン


 音楽室を出たところで校内放送の導入音が鳴り響いた。

「生徒会書記の櫻木叶耶さん、生徒会書記の櫻木叶耶さん、生徒会長がお呼びです。至急、生徒会室まで来てください。繰り返します……」

 どうやら櫻木さんを呼んでいるようだ。

 俺と校内放送を流していたスピーカーとを交互に見ながら櫻木さんは困惑する。

「す、すみません。今案内中なのに……」

「いや、いいよ。それよりも呼ばれているようだけど」

「はい、おそらく、生徒会の会議があるのだと思います。今日は十二時から会議が入っていましたから」


 俺は左手にしていた腕時計に視線を下ろす。

 時刻は午前十一時五十五分。準備とかのことを考えると、今から生徒会室には向かったほうがいい。

「もうあらかた教室については教えてもらったし、また徐々に校内のことを見て回るよ。それよりも今日はありがとう。櫻木さんのわかりやすい説明のおかげでこの学園のことがよくわかったよ」

 俺の言葉に櫻木さんの困惑顔が笑顔に変わる。

「そう言ってもらえると嬉しいです。それではすみません、お先に失礼しますね」

 最後にぺこりとお辞儀をすると、櫻木さんは生徒会室の方へと早足で向かっていった。


 しかし、すぐに櫻木さんの足が止まる。そして、踵を返してこちらに戻ってきた。

「櫻木さん、どうかしたの?」

「あはは、すみません。混乱させてしまいましたよね? えーっと、桂くん、今日は携帯を持って来ていますか?」

「あ、うん、持って来ているけど……」

「もしよかったら、私と連絡先を交換しませんか。なにか分からないことがあったら連絡してほしいですし」

 なるほどそういうことか。たしかに、学園に連絡先を交換している人がいるのは頼もしい。

「わかった。それじゃあ、こちらこそお願いしようかな」

 俺はズボンの左ポケットに入れていたスマホを取り出す。櫻木さんもスマホを取り出していた。

 そのとき、彼女の取り出したスマホ、正確にはスマホを覆うスマホケースに目がいった。


「そのケース、なんか櫻木さんらしいね」

 櫻木さんのスマホケースはウサギをかたどったピンク色のケースだった。女の子らしい櫻木さんにぴったりのスマホケースだ。

 俺の言葉に櫻木さんは嬉しそうに笑う。

「ありがとうございます。これ、すごくお気に入りなんです」

「うん、すごく可愛いと思う。あっ、早く交換しないと遅れるよね」

 俺はスマホのアプリを起動し、自分のQRコードを見せる。

 櫻木さんは自身のスマホでそれを読み取った。

 直後、俺のスマホがピロリンッと鳴る。櫻木さんが俺の連絡先を登録してくれたのだ。

「それでは、私は生徒会室の方に行ってきますね」

「うん、今日はありがとう」

 そうして、俺たちはお互い手を振って分かれた。


 さて、これからどうしようかな……


 時刻は先ほど見た通り正午間近。おなかもすいてきたし、そろそろお昼を食べたい頃合いだ。

「とはいっても、今日って学食やってんのかな?」

 櫻木さんの話によると、星華学園には教員や生徒が利用するための学食があるらしい。場所は学園の裏門を入ってすぐのところだと聞いた。

 しかし、今日は夏休み最終日。登校日ならいざ知らず、休日にまで学食が開いているかは疑わしいところだ。

「ま、一回行くだけ行ってみるか」

 もし閉まっていたら、学園の帰り道にどこかで食べればいい。そんなことを考えながら、下に降りるため階段へと向かおうとした。すると、


「―――――――――♪」

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