第2話★

 一章


 きっつッッ!!


 九月になったとはいえ、まだまだ勢いを弱めてくれない日差しに当てられる中、俺は自転車をこいでいた。それも、立ちこぎ前傾姿勢の超全力で。

 目の前には急勾配の上り坂。


「この道が登校ルートになるってまじか……」

 ついそんな不満が口から漏れる。

 この坂は、明日から登校する私立星華学園へ続く道だ。つまり、俺は明日からこの坂を毎日、自転車で上ることになる。まだ学園の施設を見たこともなく、どんな生徒がいるのかもわからないが、これだけで学校に通うのが嫌になりそうなレベルだ。


「ハア、ハア、ハァ、ハァ……」

 途中で自転車を降りることなく何とか坂を上りきる。

 坂を上り切った先にあるのは、私立星華学園と書かれた校門。

 今日は、夏休み最終日。そのため、多くの生徒が部活動で学園に来ているのだろうか、校門の向こうからは威勢のいい掛け声がこれでもかと響いてきた。


 俺は、校門を過ぎてすぐの場所に立ててある「駐輪場はこちら」という看板に従って、体育館裏にある駐輪場へと向かった。

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