魔力0の俺と魔女の「  」 ~俺は彼女と再び歩き出す~

小熊ネコ

第1話★

 序章



 ――――――思わず、言葉を失った。


 時間はお昼を過ぎたあたり。場所は学園の屋上。

 この場所は本来、立入禁止となっているが、扉には鍵がかかっていなかった。

 それでも、普通の生徒ならば特に気に留めず、ましてわざわざ入ろうとはしないだろう。


 ただ、その屋上から歌が聞こえたのだ。

 それは透き通るような歌声だった。

 実際は分厚い天井が俺とその声の主とを隔てているはずなのに、直接脳に響いてくるようなそんな声だ。

 本当に歌が上手いというのはこの声の主のような人のことをいうのだろう。


 もっと近くで聞いてみたい。


 自然とそんな感情が出てきた。

 そのため、その声に引き込まれるようにして俺は屋上への扉を開けた。


 すると……、


 思わず言葉を失った。


 目の前には、同じ制服を着た一人の少女がいた。

 腰あたりまで伸びた黒髪が夏の熱風に吹かれてたなびいていた。しゅっとした顔立ちは可愛いというより綺麗という言葉が彼女を表現するのに適しているだろうか。街中で十人の人が通りすがりに彼女を見れば、まず間違いなくそのうちの九人は振り返る。そんなまぎれもない美少女だった。

 俺は彼女に目を奪われていた。


 これは、少し不思議で甘酸っぱい俺と「  」との物語。

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