第31話★

 三章


「これより、第四十三回星華学園体育祭を開催いたします!」

 会長さんの声がマイクを通して、グラウンド中に届けられる。


 秋空が広がる今日は星華学園の体育祭。

 中等部、高等部の生徒全員が普段の制服ではなく、体操服を身に纏い、グランドへと整列していた。

 星華学園の体育祭は、学年、クラスに関係なく、四つのグループに振り分けられる。そのため、同じクラスであっても違うグループになることがある。

 しかし、俺と遼、七海、牧原さん、そして、志藤さんはみんな同じ白グループだった。


「昂輝は午前、何に出んの?」

 グループのテントに戻ると、遼が話しかけてきた。

「障害物競走だな。遼は?」

「俺は二人三脚。あー、すっげー楽しみ」

 途端に遼の顔がにやける。遼の考えていることを察し、思わずため息が出る。

「はいはい、せいぜい牧原さんとイチャついてきてくれ」

「ありがとな。ま、ついでに一位も取ってくるわ」


『これより、高等部女子の百メートル走を開始いたします。出場選手は入場門付近にお集まりください』


 最初の競技の始まりを知らせるアナウンスが流れた。その直後、高等部女子~、と同級生や先輩たちが呼びかけに回る。

 俺は、一週間ほど前にもらった体育祭のパンフレットに目を通した。

「あっ、いまから志藤さんと七海が走るのか」

 パンフレットには、見知った名前があった。

 入場門の方に視線を向けると、そこには志藤さんと七海がいる。どうやら志藤さんは三レース目、七海は五レース目に走るようだ。

 志藤さんは、相変わらず誰とも話さず、むすっとしていた。周囲の女子も触らぬ神に祟りなし、と言った感じで、彼女とは距離を取るようにしている。一方、七海は対照的に同じグループだけでなく違うグループの人とも何やら楽しく話していた。


 しばらくして、選手入場というアナウンスとともに入場のBGMが流れた。音楽に合わせて、選手がトラックへと行進する。

 スタート地点付近に到着すると、旗手がその旗を降ろした。同時に、行進も止まり、選手たちはその場に腰を下ろす。


『第一走者のみなさんは、スタート位置についてください』


 放送部のテントからアナウンスが流れた。

 アナウンス後、走者たちがスタート位置に移動する。

一レースにおける走者は全員で八名。各グループから二名ずつ走ることになっている。

横一列に並んだ走者たちの顔からは緊張が見て取れた。


『位置について……、よーい……』


 走者たちが一斉に構える。

 スタート地点付近でさらに空気が張り詰める一方、各グループのテントからは割れんばかりの応援が鳴り響いていた。


『どんッ』


 同時にパンッと銃声が鳴り、一斉に走者が駆け出す。喜ばしいことに白グループの女の子が一番を走っていた。

 後方からの声援がさらに勢いを増した。

 やがて、その子はそのままゴールインする。もう一人の白グループの女の子も二着を取っていた。

 白グループのワンツーフィニッシュで、こちらのテントは歓声に沸く。


 だが、いいことばかりが続くとは限らない。次のレースは、残念ながら白グループは六着と八着という芳しくない結果だった。

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