第45話 速報後

 速報発表が終わり、私・糸島ルカはみんなと楽屋に戻っていく。正直、まだ実感がわかない。私がKIPでトップなんて……。みんなが頑張ってくれているのは知っていた。それでもこんなに高いとは。


「ルカっちさん、すごいですね!」


 島田美玲がニコニコと話しかけてくる。


「いやー、もう入らないかと思ったよ」


「私は絶対上にいるって思ってましたよ。ルカっちさんはすごいですもん」


 自分の意思では無いといえ、美玲は私からセンターを奪うことになったメンバーだ。でも、そういうところは全く感じさせずにいつもフレンドリーに話しかけてくれる。私は相手にグイグイ行くタイプでは無いので、こういう風に後輩から来てもらうとありがたい。後輩で一番仲がいいのは美玲だ。


「ほんと、今回はやられたね。さすがにルカだよ」


 後藤桃は、あ~あ、という顔だ。


「でも、最終結果では桃が上でしょ?」


「なら、いいけど。正直心配だな。私は総選挙の結果で推されてるんだから。低かったら終わりだよ」


 桃は泣き真似をするが、そんなことにはならないと私は知っている。握手会での人気はいつも桃が一番だ。


「今回は割とマジだよ。2期生2人より低いのはショック」


「大丈夫だって」


「なに~、勝者の余裕でしょ」


「そ、そんなことないよ……」


 今まで総選挙では敗者だった私。いつも慰められてきたから、上位にいる人の気持ちは分かってなかった。上位は上位でいろいろ言われちゃうんだな。


「はぁ、最終結果の日が恐いよ」


「それはみんなそうだよ」


「そうですか?私は楽しみです!」


 島田美玲だけはニコニコ顔でそう言った。


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