第44話 速報発表
そして、速報発表の時間を迎える。俺は吉川と奥山、それに情報処理部員と吉田先生でパソコン室からネット中継を見守ることにした。
発表は東京のTIP劇場。今年はそこに各グループから3名ずつ代表が参加している。KIPからは糸島ルカ、後藤桃、そしてKIP選抜センターの2期生・島田美玲だ。ルカっちの顔を見るといつもより緊張しているように見えた。
「いよいよだな」
俺たちは予想を話し合う。
「32位以内がランクインだ。俺たちは速報に全力を入れている。最終結果では順位を落とすことは間違いない。であれば速報では20位台前半、最低でも25位くらいには入りたいところだ」
「理想的にはそうね。でも、速報にランクインできなかったら…」
「そんなことはない、と思いたいな。奥山、他のKIPメンバーはどれぐらいに入りそうだ?」
「うーん、まず一番人気の後藤桃は速報でも相当上位に来そうだね」
確かに今の人気ならそうだろう。
「あとは2期生の二人。島田美玲と浅田えりが入ってくるかどうか。この2人が入ってくるならそれより上にルカっちはいないとセンターは取り返せないぞ」
確かにそうだ。この2人は最近人気急上昇だ。この2人に総選挙でも負けることは考えたくないが、手強い相手であることは間違いない。
会場では32位から発表が始まった。そして、いきなりKIPのメンバーが読み上げられた
『30位 KIP 後藤桃!』
「え!?」
俺たちは驚きの声を上げる。後藤桃はもっと高い順位に居ると思っていた。
中継画面では後藤桃は静かにおじぎをしていた。
「後藤桃がこの順位って、ルカっち入っているのか?」
糸島ルカの名は呼ばれないまま、発表が続く。そして
『25位 KIP 浅田えり!』
2期生のもう一人の選抜メンバーである浅田えりが呼ばれた。20位台が終われば次は10位台。 糸島ルカにとっては高いハードルだ。20位台で呼ばれておかないと最悪の事態もあり得る。
「ここが勝負だな」
次々に20位台が呼ばれていくが、なかなか糸島ルカの名は出てこない。そして、
「21位 KIP 島田美玲!」
2期生センターが呼ばれた。
中継画面の島田美玲は笑顔でお辞儀をする。一期生の二人も拍手だ。
だが、20位までに糸島ルカの名は呼ばれなかった。
「おい、大丈夫か」
「いや、15位くらいの可能性はあると俺は考えていた。大丈夫だ」
しかし、15位まで発表されても糸島ルカの名は呼ばれることは無かった。画面上のルカっちの表情が次第にこわばっていくのが分かる。
「おい、まさか圏外――」
「そんなはずは………。だがもう呼ばれないとさすがに厳しい」
このまま終われば2期生の島田美玲がKIPでのトップ。そして2番目も二期生の浅田えり。この2人が一期生の一番人気・後藤桃よりも上にランクインし、糸島ルカは圏外。完全にKIPは二期生中心となるだろう。
14位、13位と呼ばれていく。メンバーはもうJIP選抜クラスも居る。この中に糸島ルカが入れるのか?
俺があきらめの気持ちになりそうになってきたとき、ついにそのときが来た。
『12位 KIP 糸島ルカ!』
よっしゃー!パソコン室が大歓声に包まれた! 俺は吉川と奥山、ハカセとハイタッチをかわす! 吉川の目には涙があった。
中継画面を見ると、糸島ルカは信じられないという顔をしている。後藤桃と島田美玲はルカの手を取って喜んでいる。糸島ルカは涙ぐみながら頭を下げた。
結局、KIP最上位は糸島ルカの12位だった。
「新田君、とりあえず成功だね」
吉川が言う。
「ああ。だが、これはあくまで速報だ。最終結果でランクインする、これが俺たちの目標だ」
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