第43話 投票開始

 ゴールデンウィークが近くなったこの日はいよいよJIP総選挙の投票開始日だ。この日までに俺たちはポスターを180枚制作し、次々にネットに投下した。その効果があったのか、投票代行依頼は次第に増えていた。そして、CDが届くのが投票開始日だ。


 とはいっても、熊本に届くのは夕方以降になる。それでも当日に届くのは恵まれていると言える。例えば、鹿児島なら速報には間に合わない。


 投票開始日の翌日公演終了後である20時半から速報の発表が始まる。どの時点までの投票が速報に反映されるのかは明らかにされていない。しかし、翌日の午前までは確実に反映されるのでは無いかとの噂だ。それまでに手持ちの票を全て投票するのが俺たちの作戦だ。


 投票代行依頼来者のCDをまずは学校に運ぶ必要がある。協力してくれる方は学校の入り口までCDを持ってきてくれた。また、奥山の親は運送業だ。今回、快く協力してくれて、依頼者の家をまわり、CDを受け取って学校内に乗り付ける。俺たちはCDを受け取って、急いでパソコン室に運んだ。


「ここからは、スピード勝負だ。俺たち3人で投票券を取り出すから情報処理部の人たちは投票を任せた」


「まかせろ。キーボードは得意だ」


 俺たちはハカセの作ったテープ付きカッターでCDのシュリンクの一部だけを切り、投票券を取り出す。それを情報処理部の6人が投票していく。9時を過ぎても俺たちはこの作業を続けていた。そこに吉田先生がやってくる。


「お前ら、お疲れ。ちょっとは休憩しないと逆に効率悪いぞ」


 そう言って缶コーヒーやらジュースやらをテーブルに置く。


「ありがとうございます!じゃあ、休憩しようか」


 俺たちは少しだけ休むことにした。

 少しSNSを見てみる。


『投票完了!全弾ルカっちにぶちこんだ』

『ぽちぽちやってるよー。今日は徹夜だ』

『もう投票券なくなったんでちょっとCD買ってくるわ』

『投票した!ルカっちに悔しい思いはさせたくない!』


 個人で投票している糸島ルカ推しの人たちの書き込みだ。速報全力に協力してくれる。俺たちも頑張らなくては。


 今日は学校で深夜までこの作業を行っているが、全員ができるわけではない、結局残ったのは俺と吉川とハカセだけだった。


「吉川はこんな遅くまで大丈夫なのか?


「私は一人暮らしだから大丈夫だよ」


「そうなのか」


「俺もそうだ」


「ハカセもか。俺は親は長期出張中だし、アニキと2人ぐらしみたいなもんだからな」


 そんな話をしながら、作業を進めていった。


「終わったー!さすがに仮眠しようぜ」


「うん、もう寝てる……」


 結局、朝5時になってようやく全ての投票を完了する。授業が始まるまで、少しだけ俺たちは眠った。


 だが、学校が始まる前にまた追加のCDが届く。

 俺たちは休み時間になるとこれを少しずつ投票していく。クラスメイトも何人か手伝ってくれたので、意外に早く終わり、13時までには全て投票を終えた。どこまで反映されるかは分からないが、これ以上は無理しなくても良いだろう。

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