第五章 総選挙2

第42話 2年生

 春休みも総選挙対策に俺たちは費やした。そして、4月になり、俺たちは2年生になった。

 クラス替えはあったが、俺と吉川実香と春島珠子は同じクラスのままだ。席も春島さんが窓際の一番後ろで俺がそのすぐ前。俺の隣には吉川の席。もちろん、これは偶然では無い。引き続き担任となった吉田先生が仕組んだことだ。


 ただし、奥山は別のクラスになってしまった。それでも、いつも俺たちのクラスに入り浸っているのであまり違いは感じない。ハカセも別のクラスだが情報処理部の活動にお邪魔しているので、いつも一緒みたいなものだ。


 2年になっても相変わらずだな、と思ったそのとき、なにやら教室の入り口の方が騒がしい。何かと思ってみていると、そこにはもう見慣れた美少女が居た。


「あ、実香先輩!」


 島田美玲だ。KIP2期生のセンターはこの学校の1年生として入学していた。

 島田美玲は自分の正体を隠していない。彼女の性格上、隠すのは無理と判断された。

そのため、非常に目立つ存在だ。教室中が注目しだした。


 慌てて、吉川が呼ぶ。


「ちょ、ちょっと、美玲。声が大きい」


「すみません!」


 少し声を小さくしてもやっぱり目立つ。しかし、吉川は1期生としか知り合いでは無いはずでは?


「吉川、島田とも知り合いなのか?」


「あ-、ルカと一緒に遊んだりしたんでね」


 チラっと春島さんを見たが、春島さんを机に伏せたままで美玲には反応していない。さすがだ。


「ご挨拶に来ました!」


「いいから」


「あ、噂の彼氏さんですね。桃ちゃんから聞きました」


 俺を見て美玲が言う。その発言にクラスのみんながヒソヒソ話を始めてしまった。


「違うって。桃にも釘指しといて。で、何か用あるの?」


 すると美玲は吉川の耳元で小声で言った。


(教室でのルカっちさんがどんな感じか見に来ました。すごいですね!)


 吉川が小声で返す。


(絡まないように気を付けてよ)


(分かってます!)


 美玲は突然敬礼ポーズをした。


「では、失礼しました!」


 小走りで去って行く。


「はあ。全く……」


「あいつ……先輩なのに桃ちゃん呼びか?」


「すぐ距離縮めちゃうんだよ、あの子」


さすが、コミュ力モンスターだ。


「でもね、ルカっちだけは『ルカっちさん』ってずっとさん付け。すごく尊敬してるんだと思うよ」


「ふーん。なんかいいやつだな」


「そうだよ。美玲は敵対する存在じゃないの。すごくかわいいやつ」


 春山さんが少し起き上がって、そうだそうだとばかりに頷いている。

 KIPのセンターを争う2人だが、関係は良好のようだ。

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