第40話 ハカセ

 翌日の昼休み、俺はハカセに話があると呼び出されていた。

 まさか、春島さんの正体についてだろうか。


「KIPのことだが、お前ら隠していることがあるな……」


 これはやばい!


「吉川さんはKIPの隠れメンバーだろ?」


「はぁ!?」


 思わぬ方向に唖然とする。


「糸島ルカを連れてこれるなんてそれしか考えられない。あの可愛さだし、補欠メンバーか何かか?」


「いや、補欠とか無いから」


「そうなのか。で、お前と付き合ってるのか?」


「付き合ってるわけないだろ」


 話が飛んで訳が分からない。


「そうか。じゃあ、やっぱりお前は春島さん狙いか? いつも話しかけてるよな」


「見てたのか!? まあ、春島さんとは話したいけどさ。ほとんど会話成立してないから」


「そうなのか?」


「あぁ。いつも無言か『うん』とか『そう』とかばっかりだよ」


 言ってて、悲しくなってきた。


「吉川だって同じルカっち推しだからいろいろ協力して動いているだけだ。それ以上の関係は無い」


「そうだったか」


「わかってくれたか」


「ああ。つまり、春島さんが無理だったので吉川さんに乗り換えたと」


「話聞いてたか?」


 ハカセに俺の話は伝わっていないようだが、春島さんの正体はばれていないようなのでひと安心だ。


「無駄話はこれくらいにして、本題に入ろう」


 今までのは前置きかよ!


「去年の総選挙CDの未開封のものは無いか?」


「去年の?どうするんだ?」


「素早くCDから投票券を取り出せないかと思ってな。例えばカッターに両面テープみたいなものを付けて、シュリンクを完全に破らなくても取り出せるようなものを作れないかと思っている」


「それができれば相当楽になるな。だが、去年の投票券入りのCDか…。それは無いかもしれないが、似たようなもので握手券付きのものは用意できそうだぞ」


「じゃあそれでもいい。俺は発明も趣味なので、何かそういう工夫をどうしてもしたくなってな」


「俺としてはすごくありがたい。是非頼む!」


 ハカセの協力で速報での投票は高速化出来そうな見通しが立った。

 これが完成すれば大きな武器になる。

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