第39話 降臨
2日後、俺たちは情報処理部の部員に放課後パソコン室に集まってもらうように伝えた。
吉川実香が糸島ルカを迎えに行って、俺は連絡を待ちながらパソコン室に居る。情報処理部の部員は本当に来るとは信用していないようで、自分たちの部活動に取り組んでいた。時間は過ぎていき、学校に居る生徒も少なくなってきた。
「そろそろ部活の時間も終わりなんだけど」
山田部長が俺に言う。
「すみません、もう少しだけお願いできませんか」
そこに吉川実香からLINEで連絡が入る。
吉川『もうすぐ到着。周囲を確認して』
新田『了解』
俺は廊下に出て人が居ないか確認した。
新田『問題ない』
すると階段を駆け上がってくる音が聞こえて2人の姿が見えた。糸島ルカはいつものKIPの衣装を着ている。吉川と一緒に小走りでこっちに向かってくる。
「情報処理部のみなさん、お待たせしました」
俺が言うと全員が顔を上げる。そこに糸島ルカが登場した。
「すみません、遅くなりました。KIPの糸島ルカです」
ルカっちの挨拶に情報処理部の部員たちが呆然と見つめる。
「ほ、本物なの?」
「あ、はい。今日、熊本城でロケがあって……今はその帰りです」
「ル、ルカっちだー!」
「可愛い!」
部員たちが一斉に前に出て握手を求めてくるのを俺は慌てて止める。
「ちょっと待て!誰も握手していいとはいってないぞ」
「いいですよ。みなさん、協力してくださると聞きましたので」
糸島ルカ全員と握手を始めた。最後に山田部長がルカの前に立つ。
「あなた、どうして……」
「理由は聞かない約束のはずです」
吉川が言う。
それを遮って、糸島ルカが話し出した。
「いえ、それだけ私にとって今回の総選挙は大事なんです。どうしてもランクインしたくて。2人はそのためにいろいろ動いてもらってますので。私もこれぐらいは協力させてください」
「わ、わかったわ。あなたの本気は伝わった。ここに来るにはリスクもあるでしょうに。すごいわ」
「山田部長、よろしくお願いします」
糸島ルカが頭を下げる。
「私の名前まで知ってるの!? わかったから顔を上げて。じゃあ、全力で協力させてもらうわ」
「ありがとうございます!」
糸島ルカが満面の笑みだ。その輝きに部員一同が圧倒されている。そこに吉川が言った。
「すみません、時間がなくて、このあたりで」
「吉川さん、あなたってもしかして……」
山田部長が尋ねる。
「KIPのマネージャやってるんでしょ」
吉川が笑って答える。
「違います。ただのファン一号です!」
そう言って、糸島ルカをつれて出て行った。
後に残された情報処理部の部員たちは未だに信じられないような顔をしている。
「なあ、ルカっちが今この部屋に居たよな」
「可愛かった!マジ天使!」
「うん。すごかった。アイドルオーラ、すげー!」
「よし、俺全力で協力する!」
「俺も!ルカっちに喜んでもらおうぜ!」
すごい盛り上がりだ。山田部長も呆然としていたが、ようやく正気を取り戻したようだ。
「あなたたち、結構すごい人なのね」
「いえ、吉川がすごいんだと思います」
「とにかく、あなたたちの本気もルカっちの本気も伝わったわ。情報処理部としても全力でやらせてもらいます」
「ありがとうございます!」
みんなが盛り上がっている中、俺は後ろの方でハカセが神妙な顔をしているのが目にとまった。
同じクラスだし、春島さんのことを気がつかれたか? まずいかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます