第33話 味方

 午後も、当然ルカっちのところに並ぶ。


「公演の4曲目、コネクトのダンス。すごいね」


「え、そう?」


「すごく、動き速い。ほら、ダンスが得意な神代梨奈ちゃんと並ぶところあるじゃん」


「うん」


「全然負けてないどころか勝ってると思うよ」


「えー、そんなことないよー」


「そんなことあるって。毎回、見とれてるよ」


 なかなか学校では言えない公演の感想をじっくり話すことができた。


「総選挙、俺、頑張るから」


「でも、何にも策が無いんじゃないの?」


「あ、聞いちゃってたか。大丈夫、いろいろ考えてるから」


「そうなんだ」


「その準備もあるし、今日はこれが最後」


「そっか。じゃあ、またね」


「うん。また会えるって分かってるけど、なんか寂しい」


「フフ、すぐだよ」


 そうだ。明日には学校で会えたりする。春島さんモードだけど。


「ルカっち、いつだって頼って」


「うん!」


「じゃあまた!」


 そう言って手を振りブースを出た。そして、俺は握手会場を出て、熊本城アリーナに併設するバスセンターの2階テラスに向かう。そこには吉川実香が居た。


「他はまだ来てない?」


「うん」


 実はここであと2人の人物と待ち合わせをしている。総選挙に向けて何をやっていくか。それすら分からなかった俺はまずはネットで味方を探すことにした。そこで、糸島ルカを熱心に推している2人に目を付けた。今日はその2人に会うのだ。


 しばらく待つと一人の少女が現れた。糸島ルカの推しグッズで身を固めている。今日、鍵開けをしていた子だ。


「ペルさん?」


「もしかして、ジュンさんですか?」


「はい」


「よかった。私がペルです」


 ペルさんは糸島ルカを結成時から推していて投稿はほとんどルカっちのことばかりだ。ルカっちをテーマにしたイラストをときどき投稿している絵師で糸島ルカを「ルカ大天使様」とあがめている。


 自己紹介している内にもう一人が現れた。この人は、2番目に並んでいたあの社会人だ。


「どうも、ダースです」


「あ、どうも。ジュンです。今日はありがとうございます」


 ダースさんは東京在住。糸島ルカのほとんどのイベントに参加していて、そのレポートをSNSにあげている人だ。遠方でのイベントも必ずと言っていいほど行っている。相当な資金をルカっちの推し活に注ぎ込んでいる。


 合流した俺たちは早速、屋上のテラスカフェに移動することにした。

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