第31話 CD

 翌日、デビューCDの発売詳細が発表された。


「この通常盤と劇場盤ってのは何だ?」


 あまりこの手のものに詳しく無い俺は奥山に聞いていた。


「通常盤は普通のCDショップで売られるやつ。劇場盤はネット通販のみだよ」


「劇場盤というかネット盤だな」


「まあね。昔は劇場だけで販売されていたので劇場盤という名前が残ってる」


「なるほど。で、何が違うんだ?」


「通常盤はMVあり、劇場盤は無しでCDだけだから安い」


「ふむふむ」


「あとは握手券の種類が違う」


「握手券?」


「そうだ。メンバーと握手して話せるんだよ」


 公演終了後のハイタッチは声を掛ける程度だが、握手してメンバーと話せるというのは魅力的だ。ルカっちが春島さんと分かった後も、俺はあまり話せていない。堂々と話しに行けるなら握手券は何としても欲しい。


「通常盤の握手券は全国握手会の握手券で、まとめて何人かと握手できるんだが、正直、公演後のハイタッチよりすこしマシなぐらいだな。でも、劇場盤の握手券は個別握手会の握手券。メンバー1人を指定して買う。といっても1枚7秒ぐらいだけどな。でも、まとめて出せば結構長く話せるぞ」


「そうか。じゃあ、俺は劇場盤を購入すればいいんだな」


「ルカっちと話したいならそうだな。ただ、場合によっては抽選になるぞ」


「え!?」


「握手の時間帯の枠があるから。人気メンバーの人気時間帯は抽選になる」


「そうか」


「どれだけ握手券の枠がすぐ無くなるかは人気の目安でもあるんだ」


「ルカっちはどうだろう」


「うーん、時間帯次第だが、ある程度は確保できると思うぞ」


「よし、早速申し込むか」


 俺は本人の後ろの席で糸島ルカの握手券を申し込む。抽選になる可能性もあるならとりあえず一次申し込みの制限枚数いっぱいを申し込んだ。


「全部ルカっちに申し込んだ。当たりますように!」


「お前、そんなにルカっちと話したいことあるのかよ」


「ああ、めっちゃ話したい!」


「そんなにか。必死だな」


 前の席の春山さんはうつむいていた。


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