第15話 総選挙結果発表

 10月半ば、いよいよ総選挙の結果発表の日になった。

 8人ずつ4つのグループに分けて発表される。上位8位のトップ選抜がJIPシングル表題曲を歌うメンバーだ。そして9位~16位までの2nd選抜、17位~24位までの3rd選抜、25位~32位までの4th選抜はカップリング曲を歌う。


 俺は暗澹たる気持ちでTV中継での発表を家で見ていた。おそらく、速報で入っていた佐藤奈美がランクインするだろう。糸島ルカはランクインする可能性は低いとみていた。もし、運営批判票である佐藤奈美がランクインしたら、KIPの今後はどう変わっていくのだろうか。


 JIPグループ全員が入場し、ステージ前の席に着いた。KIPのメンバーもにこやかに入場していた。糸島ルカも緊張しているが笑顔だ。俺は少し安心した。


 まず、32位からの4th選抜の発表が始まった。おそらく、KIPのメンバーが入っているとすればここだろう。どんどん発表が進んでいくが、KIPのメンバーは誰一人呼ばれない。


 結局25位までの発表が終わってしまい、KIPのメンバーが呼ばれることは無かった。


「誰も入らなかったな」


 兄の落胆した声が響く。


「ああ。だが、これで良かったんだよ」


 KIPのメンバーはゼロとなったが、運営の信任も不信任も避けられたと言うことだ。糸島ルカがランクインできないならこれが次善だったのだろう。


 すっかり安心した俺は気楽な気持ちで3rd選抜の24位から17位までの発表を見ていた。すると、


「23位 KIP ──後藤桃!」


 え!と俺と兄は驚きの声を上げた。なんと、KIPから23位にメンバーが入ったのだ。

 KIPのメンバーランクインがゼロという最悪の事態は避けられた。そして、信任でも不信任でも無い。言わば中立のメンバーである後藤桃がランクインしたのだ。


 後藤桃推しの兄は大喜びしている。おれも素直に嬉しかった。

 これでよかったんだ。そのときの俺はそう思っていた。

 結局、それ以外にランクインしたKIPメンバーは居なかった。



 それから後藤桃はメディアの露出が急に増え始めた。これまでなら糸島ルカが出ていたような場面でも後藤桃が出ることが多くなってきていた。後藤桃は急速にファンを増やしつつあった。

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