第14話 速報翌日

「総選挙、速報は佐藤奈美だけだったな」


「ああ」


 翌日の朝、奥山の言葉になぜか不満げに言葉を返した。自分でもよく分からないが、あの速報結果は何か納得いかなかった。


「どうするんだ?佐藤奈美に入れるのか?」


「うーん…」


 奥山の質問に俺はすぐに帰すことが出来なかった。もともとは速報の最上位メンバーに入れると奥山に言っていた。だが、実際にこの結果を見るとそれでいいのか考えてしまう。


 速報に糸島ルカが入っていれば何も悩まずに済んだのに、とふと思った。

 だが、そう考えるということは、俺は本心では糸島ルカに投票したかったということなのだろうか。


「新田君、戦略とか忘れて自分が投票したい人に入れればいいんだよ」


 吉川実香が来てそのように言う。確かにそうかもしれない。何も難しく考える必要は無いんだ。俺はようやくふっきれた。


「そうだな、分かった。じゃあ俺は糸島ルカに投票するよ」


「ほんと? ありがとう」


 吉川が俺の手を取って喜んでいる。


「そんなに喜ぶなんて、さすが自称ファン一号だな」


「ふふ、まあね」


「えー、なんかずるい。じゃあ俺もルカっちに全部入れるから。10票あるよ」


 奥山がアピールする。


「奥山君偉い!」


 吉川が奥山の手を取ると、奥山は真っ赤になって照れていた。

 そんな中、また寝ていた春島さんの机がガタっと揺れた。何か眼鏡を外して目をぬぐっているような。あくびでもしたかな。


「春島さん。おはよう」


「!!」


 春島さんは驚いたのか急に立ち上がって教室から出て行った。うーん、今日も撃沈か。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る